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Last Game  作者: じょん
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第十一話:救出

 目の前は真っ暗闇だった。手に持ったたいまつをかざして道を照らすも、光は数歩先までしか届かず、よどんだ闇がその先を覆っている。空気は湿っぽく、とても・・・・・・

「臭いですね・・・・・・。」マリアさんが鼻声でぼそりと呟いた。マリアさんはここに来るなり、ずっと鼻をつまんでいる。

 ここは街の地下を走っている下水道。だが、今はイトペヨン達の隠れ家となっているらしい。彼らが見つからなかったのは、あの建物のようにいくつかある出入り口を使って、女性を襲っては地下に連れて行っていたのだ。

 僕らは男から下水道への入口の場所を聞き出し、床下に隠されていた入口を見つけると、地下へと続く階段を下った。階段は壁に沿ってらせん状に下っていて、目が回るようだった。いったいどこまで続くのかと焦り始めたころ、階段は唐突に終わり、今いる下水道に入った。

 湿った、いやなにおいのする地下道をしばらく歩いていくと、途中で分岐路にあたった。

「どうします?あの人は左と言ってましたけど・・・・・・。」マリアさんは左右を交互に見渡しながら言った。闇は霧のようにたちこみ、どちらの道もその先がどうなっているのか全く分からなかった。だが、僕はためらわずに左を選んだ。

「あの人の言うことを信じるのですか?嘘をついているかも……」マリアさんがあわててついてくる。

「いや、あいつはうそをつけない。」

「どうしてです?」

「あいつは僕におびえていた。恐怖にとらわれたものに、うそはつけない。」


 たいまつをかざしながら、うねうねと曲がりくねった道をしばらく歩くと、闇の中に光が見えてきた。近付いて行くうち、それがたいまつの光だとわかった。そのたいまつに照らされて、扉がぼんやりと浮かび上がっている。僕は歩みを速めた。

 扉はちょうど二股に分かれた道にあった。下水道の壁などと比べて、扉は新しく作られたもので、苦悶の表情を浮かべる人の顔が彫りこまれていた。眼球は恐怖に見開き、大きく開かれた口からは叫び声が聞こえそうだった。僕は観音開きのその扉に両手をあて、ゆっくりと押し開けた。扉は音も立てずにすんなり開いた。

 扉の先は、長い通路になっていた。通路の両側には明かりがともされている。耳を澄ますと、かすかだが人の声が、歌うような響きをもって聞こえてきた。

 僕はその声の意味を瞬時に察し、全力で走りだした。マリアさんがあわてて追いかけるが、今は彼女に合わせている場合ではない。聞こえてきた声の歌う調子は、マリアさんの癒しのそれと似ていた。つまり、何か呪文を唱えている可能性がある。ということは・・・・・・。

「頼む、間に合ってくれ・・・・・・!」声はだんだん大きくなり、今やはっきりと呪文の言葉が聞こえてくる。

 それは僕らが使っているのとは全く違う言語で、強く、怒りのこもった呪詛のように汚らしく、つばを吐くような奇妙な発音だった。時折囁くように小さくなり、突然叫び声をあげる。それはもはや、言葉と呼べるものではなかった。

 通路の先に、広場のような開けた空間で、歌の主が両腕を広げて天井を仰ぎ見ていた。通路の出口に立つローブ姿の一人が、走ってくる僕に気付き、あわてて懐から何かを取り出そうとしている。

「邪魔だ!」僕は剣を抜きざま男に切りつけた。男が倒れるのも待たずにわきをぬけ、広場へと飛び込む。

「クリス!!!」僕は叫んだ。その声と、男の悲鳴によって、その場にいたすべての者がこちらを振り向いた。

 その広場は街の噴水広場と同じくらいの広さで、丸天井を四つの柱で支えていた。かなりの人がその柱をかこむように立っている。柱の内側には巨大な魔方陣が描かれ、その中心に縛られている人たちが円になって座っていた。

「イェリシェン!!」円のところから僕を呼ぶ声が聞こえた。それはまぎれもなく彼女の声だった。ずっと聞き焦がれていた声だった。

「クリス!今助ける!」僕はまっすぐ魔方陣へと駆け寄ろうとした。が、行く手をローブをまとった者たちが立ちふさがった。

「どけ!邪魔するやつは、その男のようになるぞ!」僕はさっき切り伏して倒れたままになっているものを指差し、剣を突き付けた。信者たちはたじろいだが、その場を離れようとはしない。そのとき、魔方陣の縁に立っていた、先ほど呪文を唱えていた司祭らしき男が叫んだ。

「儀式の邪魔をさせてはならん。殺せ!」司祭の言葉を聞いて、信者たちが襲いかかってきた。

 ふり降ろされるナイフを手首をつかんで止め、棍棒を剣で受け止める。ほかの一人が短剣をつきだしてくると、手首をつかんだ相手を盾にして受け止める。棍棒をはねのけ、喉を狙って剣をなぐ。信者の喉から血がほとばしり、あおむけに倒れる。味方を殺してしまってうろたえる信者にすかさず剣を突き出して腹部をえぐる。信者の腹部から血がぼとぼとと滴り落ち、口からも血が流れ落ちた。剣を引き抜くと、男は腹を抱えるようにして前のめりに倒れた。床にすぐさま血だまりができ、男は痙攣し、息絶えた。

「邪魔するやつは容赦なく切り捨てるぞ!そこをどけ!」僕は血でべっとりとした剣を振りながら前に歩み出た。信者たちがうろたえながら後退する。

「ならん!儀式を絶対に邪魔させるな!敵は一人だ、恐れることはない!」司祭が一喝して、浮足立っていた信者たちを冷静にさせた。僕は心の中で毒づいた。

 幸い、彼らは今まで闘ってきた相手と比べると大したことはないが、この数で襲われたらひとたまりもない。だが、数人仲間が殺されたのを見て怖気づいてくれれば何とかなると思って、できるだけ敵に動揺を与える殺し方をしたのだが、それも今ので失敗だ。

 司祭は詠唱を再開し始めた。信者は冷静に包囲の輪をじりじりと狭めてくる。今度は僕が動揺し始めた。

「考えろ、考えるんだ。どこかに突破口は・・・・・・!」その時、やっと追い付いてきたマリアさんを眼の端でとらえた。

 信者はマリアさんに気付いていないようだった。彼女はまず僕を見つけ、そのあと魔方陣にいるクリスを見た。そしてもう一度僕のほうを見た。僕が眼で合図すると、マリアさんはうなづいて、そっと信者の後ろに回った。

 僕はゆっくりとマリアさんとは反対の方向にじりじりと動き出した。信者たちもつられて動きだす。信者たちは先ほどのようにむやみやたらに襲いかかろうとはせず、じっと機会をうかがっている。ちらりと目を走らせると、マリアさんは司祭に気付かれないように壁伝いにゆっくりと司祭のほうに向かっている。

 僕がよそ見をしていると思った信者がおそいかかってきた。それも四人同時にだった。僕は剣を両手に持つと、体を一回転する勢いで大きく横にないだ。信者たちはよけようとしたが、信者たちの短剣や棍棒はおれ、二人の腕を切った。

 はやる気持ちを抑えながら何とか時間稼ぎをしていると、詠唱の声がだんだんと大きくなってきた。

「まずい、儀式が終わってしまう・・・・・・!」僕が駆け出そうとすると、信者たちが攻撃に出て、二の腕を浅く切られた。僕はお返しにそいつの脳天をたたき割った。

「どけ、どくんだ!」剣をめくらめっぽう振りまわしながら進もうとするも、信者たちはじりじりと後退しただけだった。

 突然詠唱がぶっつりとやんだ。続いて、ドサッという倒れる音が聞こえた。信者たちが一斉に振り向く。マリアさんが砕けたつぼをもって、倒れた司祭のそばに立っていた。

「あ・・・・・・・。」突然信者たちの視線にさらされたマリアさんは、その場で立ち尽くした。

「司祭様!」信者たちが一斉にマリアさんのほうに走ってゆく。マリアさんはあわてて逃げ出した。だが、信者たちはマリアさんには構わず、司祭のもとに向かった。

「司祭様!大丈夫ですか?」信者たちが助け起こすと、司祭はゆっくりと頭に手をやった。その手にぬめった血が付く。

「くそ、協会がなぜこんなところに。それより、生贄はどうした?」

「それなら、とっくに助け出したよ。」全員が一斉に振り向いた。

 僕はクリスを助け起こした。そしてゆっくりと立ち上がり、司祭たちをありったけの憎しみをこめてにらんだ。

「覚悟しろ。クリスをさらったこと、そう簡単に許さないからな!」

読者のみなさん、いつも読んでくださりありがとうございます。

 更新が遅くなってしまい申し訳ありません。それもこれも、僕の怠け癖が悪いんです。しかも、ネタに詰まるという、最悪の事態になってしまい、中途半端になってしまいました。

 来週までにはきっちりとしたネタを考えて、ちゃんと締切を守ります。

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