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Last Game  作者: じょん
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第九話:陰にひそんで

 物陰に隠れて街中を歩く。街はしんと静まり返り、昼間のにぎやかさは鳴りをひそめ、影が濃く建物に染み付く。街は昼間とは全く違った様相を呈していて、まるで恐怖で息をひそめているようだった。月が青白い顔をして、街路を妖しく照らしている。

 そんな中を、僕も息をひそめながら街の一角に隠れひそんでいた。人通りはほとんどなく、時折乞食や酔っ払い、そして巡回の兵士がいるのみ。兵士はかなり警戒しているようで、酔っ払いさえ呼び止める。そのまま牢へ連れて行きそうな勢いだった。旅人の自分がこんな時間にうろついているのを見つかったら、確実に牢屋へ連れて行かれるだろう。そう思い、兵士が通るたびに物陰に身を隠す。

 酒場をすべて回ってみたが、情報は皆無。街中を歩き回っても、それらしき人物は見つからず、今こうして盗人のように身をひそめている意味さえわからなくなってきていた。

 いや、と自分に言い聞かせる。彼らを探すにはこうするしかない。

 イトペヨン。彼らがどんな魔術を行うのかはわからないが、黒魔法に精通している人物がかかわっているのならば、僕のことについても何か知っている可能性がある。もしかしたら、僕はその人たちの仲間かもしれない。黒魔法なんて、そうそう使える人物がいるとは考えにくい。そう思ったから、僕は協会を抜け出して、こんなところで陰にひそんでいる。

 ふと、考えがよぎる。

もし本当に彼らの仲間だったとして、どうする?彼らの仲間となるのか?罪もない人を襲うのか?

 ここまで旅をしてきて、知りたかった真実がそんなものだったとしたら?

 僕は頭を振って考えを振り払った。今はただ、自分が誰であるか知りたい。そのあとどうすればいいかは、その時考えよう。

 思索から現実に戻り、通りの暗がりに目を凝らす。そこに見慣れた人物が通った。

「クリス・・・・・・!?」人気のない街の中を、きょろきょろしながら歩いている。見ていると、クリスは角をまがって小さな通りに入って行った。僕は急いでそのあとを追った。クリスが入って行った通りはせまく、暗い通りで、月明かりさえかすかにしか入らないところだ。なぜそんなところに入って行ったのかは知らないが、とにかくクリスのところへ急いだ。

「クリス!」通りに入ると同時に叫んだ。クリスは道を半ばまで歩いているところで、声を聞きつけるとはっとして振り返った。

「イェリシェン?」

「クリス!どうしてこんなところに。ここは危ないよ、早く戻らないと・・・・・・。」クリスは石畳に足音を響かせて僕に詰め寄った。

「それはこっちのセリフよ!」クリスはすごい剣幕でどなった。

「勝手に夜中に抜け出して、どういうつもり!?」

「だって、夜は危険だって・・・・・・。」

「危険なのはあなたのほうよ、考えもなしにすぐ飛びだして。どうしてそんなに危険に飛びこもうとするの」

「でも、彼らに会うには、この方法しか思いつかなかったんだ。」

「彼らって・・・・・・。イェリシェン、彼らと会って、どうするつもり!?」

「どうするって、僕を知っているか聞きたいんだ。黒魔法つながりで、なにかわかるかもしれないだろう?」

「だからって、あんな人たちに会うの?人を誘拐するような人たちに?危険すぎるわ!」

「それでも、僕を知っている可能性があるなら、会いたい。」僕は頑として譲らなかった。

「仮に彼らがイェリシェンを知っていたとして、どうするの?彼らが仲間だったら、一緒に行くの?」

「わからない、でも、僕は自分が誰であるか知ることを、あきらめたくないんだ!」僕は語気を強くして言葉を吐き出した。

「イェリシェン・・・・・・。」口論がおさまると、静けさが通りに覆いかぶさった。

 僕は急にバツが悪くなった。

「と、とにかく、ここは危険だ。僕もそろそろ戻ろうと思ってたんだ、一緒にもどろ・・・・・・!?」突然、後頭部を殴られて石畳にたたきつけられた。倒れる寸前、腕で頭を守ったが、それでも鈍い衝撃が頭に響く。石畳に腕がこすれ、焼けつく痛みが走る。

「イェリシ・・・・・・!?」クリスの声が途中で途切れる。次いで、バタバタと何か布状のものをたたくような音がした。

 視界がぐるぐると回り、頭がくらくらして何が起きているのか点で分からなかったが、体が危機を告げていた。

「クリス・・・・・・!クリス!」クリスの名前を必死に叫ぶが、舌がもつれてまともな声にならない。それでも、視界の隅に、黒装束の者たちに取り押さえられながらも、もがいているクリスの姿をとらえた。

「くそ、クリス・・・・・・!」僕はそいつらに掴みかかろうとしたが、突然暗がりから新手が飛び出してきた。相手は手にこん棒をもって襲いかかって来た。僕はとっさに腰に下げた剣に手を伸ばし・・・・・・。

「!?」剣は腰になかった。協会においてきてしまったのだ。

「しまっ・・・・・・。」振り下ろされる棍棒。

 一瞬意識が途切れ、また地面に突っ伏していた。クリスはぐったりとして動かない。クリスが暗がりに連れていかれてゆく。

「ま・・・・て・・・・・・。」ぼやける視界の中、必死に誰かの手をつかむ。つかまれた相手は僕の手を振り払おうとした。僕は死に物狂いでその手を放さんと握る手に力を込めた。

 男の痛みに苦悶する声が聞こえた。次の瞬間、三度目の衝撃が走る。つかむ手が緩む。必死につかみなおす。

「クリス・・・・・・。」

衝撃が走る「ク・・・リ・・」

衝撃「ク・・・・・・」

しょう・・・・・・

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