生願部
今回はいつもより長めです
大丈夫か心配です…
「ようこそ、生願部へ」
彼はそう言って扉を開けた。その部屋には既に何名か人がいた。一人はお昼休みに彼と一緒にいた男子。後はギャルっぽい格好をした女の子と背丈の小さい縦ロールの髪型の女の子。そしてソファで眠る原柴先生…
「原柴先生⁉︎」
「うぉっ!」
私が出した声に先生も驚いたように声をあげる。すると他の三人も私達に気づいて視線を向けてくる。
「あれー?神崎ちゃんじゃん!どったのー?」
「んー?神崎さんってあの噂の転校生?」
「そうだな、原柴。お前のせいで怖がられたら折角の客が帰ってしまう。先に帰れ」
「…おい葉桜、俺一応先生なんだが?」
いきなり話し始めたその人達に私は頭の中が真っ白になる。
(挨拶はした方がいいのかな?何を言ったらいいの?というかなんで原柴先生いるの?)
私は助けを求めるように彼に目を向ける。彼はそれに気づくと呆れたようにため息をつき話し始める。
「とりあえず、ようこそ生願部へ神崎さん。ここは…まあ学校の何でも屋みたいなところ。ここにいるのはその部活のメンバーだよ」
彼はそういうと一人ずつ自己紹介を始めた。
「俺は墓月将吾、同じクラスだけど覚えてるかなー?」
お昼に彼と一緒にいた男子はぐいぐいときたので私は一歩だけ後ろに下がりながら頷いた。なんだか軽そうな人だ。すると次はギャルっぽい子が墓月君を引っ張り剥がしてくれながら自己紹介をしてくれた。
「私は星宮ヒカリ、同じ一年のCクラスだよ。よろしくね」
そう言って手を差し出してきたので私はそれを握り返す。すると星宮さんは私の手を撫で始めた。
「すごい綺麗…というか気持ちいい…すべすべ〜」
…この人も少し変だ。そして部屋の上座に置かれている机に座っている女の子が自己紹介を始めた。
「ふむ、私は名前は葉桜仔猫、言っておくが本名だぞ?ここの部長だ。よろしく頼むぞ神崎」
「…同級生…ですか?」
「プフッ」
私が気になってそう聞くと墓月君が吹いた。葉桜さんは少し不機嫌な顔はだ。私は何か言ってはいけない事を言ったのかと慌てると墓月君が笑いながら説明してくれた。
「いやぁ〜神崎ちゃん最っ高!あのねーあの人あんなロリ体質だけどごもっ!」
墓月君の腹に葉桜さんがいつのまにか私たちの元に来てボディブローをきめたせいで説明が途中で途切れてしまった。すると葉桜さんは笑顔で私に振り向き直して言った。
「私のスレンダーでキュートな体型について何か聞いたかな?まあそれは後だ…私は二年生。貴様らの先輩だ。以後気をつける事だ」
そう言って葉桜さん…いや、葉桜先輩は制服の交渉を見せた。太陽と白鳥のエンブレム。昼のデザインだ。
「ご、ごめんなさい!勘違いしてしまって…」
「ふん、まあいい。ほれ後はお前だけだぞ大城」
そう言って指さされたのは彼だった。
「あ、そっか。僕まだ名前言ってなかった…」
「……」
「……」
「……」
「……」
「流石健wwお前のそういう抜けたとこ大好きだバフッ!」
この部屋にいる中で墓月君以外はみんな呆れたように彼を見た。
墓月君だけが笑ってうずくまりながら彼を笑っていたがむっと怒ったような顔をした彼は何も言わずに腹にトーキックを食らわせていた。
「…えーと…改めて、大城健。よろしくね神崎さん」
「あ、は、はい!神崎初香です!よろしくお願いします!」
私がそう言って頭を下げるとパチパチとまばらな拍手の音が聴こえてきて、少しだけ恥ずかしくなる。
「そういえばさ、神崎さんはなんでここにきたの?入部?それとも依頼?」
「え?」
「依頼だよ」
なにを聞かれたかわからなかった私はつい惚けた返事をしてしまったが、彼…大城君は当たり前のように答えた。
「ふむ、依頼か…内容は?」
「うん、これ見てくれたらわかるよ」
葉桜先輩が聞くと大城君は一冊のノートを取り出した。それは私のノートだった。
(え…ちょっと待って…今、見てくれたらわかるって…まさか!)
「んー?これなーに?」
そう言うと星宮さんは私のノートを読み始める。それを一緒に読むように覗き込む墓月君と葉桜先輩。私はまた頭が真っ白になった。
(他の三人にもあのノートの中を見られるなんて…)
頭の中が真っ白なはずなのにグチャグチャと描き乱された絵のようになっていく。心が折れそうだ。すると、
「落ち着いて」
そう言って彼が、大城君が私の肩に手を置いてきた。綺麗で細長い指、けどしっかりと力強くて男の子なんだと感じる指だ。
「言ったでしょ、信じてって。大丈夫だから」
そう言うと大城君は私に微笑みかけた。その笑顔を見ると何故か少しだけ安心する。しかし、やはり不安だ。私は恐る恐るノートを読んでいる彼女たちを見る。そこでは…
「すごいなぁ…よくできてる」
「けど、ここちょっと違うんじゃない?こんな対応されないよ」
「全く…これが依頼か…面倒なものが来てしまったな…私には不得意な分野だぞ?」
そう言って彼らは真剣に話し合いをしていた。それを見て私はぽかんとしてしまった。からかうわけでもなく、ただ真剣にそのノートを読んでくれているから。
「ほらね。ここってそういうところだから」
大城君は嬉しそうにそう言った。すると葉桜先輩が私のところまでやってきた。
「神崎初香、アレはお前が書いたもので間違いないな?」
そう言われて私はゆっくりと頷く。すると葉桜先輩は優しく笑ってくれた。
「そうか…友達が欲しいという気持ちはわからないでもないからな…この依頼、受けさせてもらうぞ」
葉桜先輩は私を正面から見てそう言ってくれた。私は少し泣きそうになってしまった。バカにされると思っていたから、笑われると思っていたから、無駄だと思われてしまうかもしれなかったから。それてもこの人達は真剣に、私の願いを考えてくれている。それがとても嬉しかった。
「っ!ぅうぐっ」
「な、お、おい何故泣いているのだ⁉︎」
葉桜先輩が慌てたように私にいう。大城君は黙ってハンカチを私の手に握らせてくれている。
「ありがとうございます…お、お願いじまずっ…」
「あぁ任せろ、私たちはやると言ったらやるからな…」
「そういえば…生願部って…?」
私が聞くと大城君が誇らしそうにそう答えた。
「生徒達の願望を叶える部活動、略して生願部。神崎さん、俺たちは君の願望を全力を持って叶えさせてもらうよ」
彼はそう言って私の頭を撫でた。それが気持ちよくて、そして嬉しくて、私はこの時、転校してからずっと張り詰めていた感情が初めて緩いだ。
キャラ一気に増えました…覚えててください。これからこの人達は結構出てきます!




