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ようこそ

結構ガタがきてやがります。

それでも書きます!毎日更新!

神崎に出会った翌日、僕は今日も鞄を持たずに登校していた。

理由は、昨日茂みに隠していた鞄の中に大量のバッタが入っていたからだ。


家に帰るまで気づかなかったが、部屋で鞄を開けるとバッタが飛び出してきて驚いた。教科書を全て取り出すと教科書の重みで潰れた遺骸や生き残ったバッタが軽く20はいた。


おかげで汚れた教科書を、鞄の代わりに持ってきた風呂敷に包んで登校する羽目になったのだ。教室につくと他のクラスメイトはびっくりした様子で僕の風呂敷に目を向ける。その中から将吾だけが近くまで寄ってくる。


「どうした健?江戸時代に心と鞄がタイムスリップでもしたのか?」

「話せば長くなるから言わないけど、なんだよその例え。全く面白くないよ」


そういうとブーブーと言い始める将吾。そんな将吾を無視して僕はある人だかりを見つけた。


その人だかりの中心にいるのは神崎だった。やはり転校生ということもあってこういう時には人が寄ってくるようだ。


『私…友達が欲しいんです…』


昨日、保健室で神崎が言っていたことを思い出す。彼女は真剣だった。それは声を聞けばしっかりと伝わっていた。しかし、真剣すぎるからこそ今の彼女は力みすぎている。クラスメイトからの質問にはまともに答えられず、ガチガチだ。またあの棒読み返事でもしてしまっているのだろう。


助けに行っても人数が増えて余計にダメになるかもしれないため、心の中で静かに応援しておく。

すると朝のチャイムがなり、人だかりは一斉に散らばっていった。神崎はふぅ、とため息をついている。あれだけの人数に囲まれたのだ。誰でも疲れるだろう。こういう時に助けられたらきっとかっこいいんだろうなと思いながら、今日も朝の連絡事項を聞き流した。










ー神崎sideー


放課後になった。私に昨日ここへ来いと言った彼は、今日なんと風呂敷を持って学校へ来ていた。正直驚いた。私に質問しにやってきていたクラスメイトのみんなも驚いた様子だった。


そして私は今日のほとんど彼を見ていた。原柴先生の話を聞き流したり、お昼休みは陽気な男子と一緒に何処かへ行ったり、授業で居眠りしていたのに当てられても平然と答えていたり…


なんというか風呂敷以外はいたって普通の男子だった。昨日あんなにお世話になったのにこんな事を言うのもダメだと思うけど、彼は普通だった。


そんな彼を私は今、保健室で待っている。三河先生はここで待ち合わせるのをいいと言ってくれたが、保健室なのだしそんなに長居するわけにもいかない。しかし、彼は約束の4時になっても来ない。そのまま10分がすぎる。


私は不安になってきた。もしかしたらからかわれたのかな?と。


私は頑張って書いた友達計画表を彼に見られている。多分アレを見て私の事を何処かでバカにしているのかもしれない…そう思うと心が凄く痛い。昨日助けてもらった時はあんなに穏やかだった心が、今は大きく揺れて胃がムカムカとする。


15分たって、もう私は帰ろうとベッドから立ち上がると扉が勢いよく開いた。


「ご、ごめん神崎さん!まだいっ痛⁉︎」

「大城!お前乙女を何分待たしてるんだ⁉︎」


勢いよく扉を開けたのは彼だった。


彼は扉を開けると同時に私に謝罪の言葉を言ってくれたが、私が15分待っていたのを見ていた三河先生が彼にヒールを、投げつけた。


「〜っ!!?ご、ごめん神崎さん…僕から呼び出しといたのに…」


ヒールが当たった頭を抑えながらそれでも謝ってくる彼は、私の事をバカにするような酷い人には見えず、私はまた少しだけこの人を疑った自分の心の臆病さが嫌になった。


「だ、大丈夫だから。それより平気?頭、血出てない?」


そう言いながら彼の頭に触れる。彼の髪はサラサラとしていて、女の子の髪みたいだった。


「…(サラサラ)」

「…」

「…(サラサラ)」

「…」

「…(サラサラ)」

「…あの…神崎さん?」

「あっ!ご、ごめんなさい…つい…」


彼の髪を撫でるのが気持ちよくてつい撫で続けてしまった。顔が熱くなっていくのがわかる。すぐに手を引っ込めるが彼は困惑とした表情を浮かべている。


「えーと…とりあえず、行く?」

「あ、はい。よろしくお願いします」


そう彼が切り出してくれて、私はそのまま保健室を出ていった。






この学校は校舎が二つに分かれている。ここ数年で建てられた新校舎、30年前に建てられた旧校舎の二つ。保健室は新校舎にあり、私達が今いるのは旧校舎だ。木の窓枠に少し薄暗い廊下。旧校舎は主に社会科や文化系の部室があるらしい。


旧校舎の二階、1番奥の教室から3番目の、小さな教室の前まできて、彼は立ち止まった。


「えーと…」


私は彼にここがなんなのか聞こうと思ったが、よくよく思い出したら私は彼の名前をまだ知らない。先に名前を聞こうとすると、彼は扉に手をかけた。


「ここでこれから起きることは…まあ神崎さんのためになると思う。だから、俺を信じてね」


彼はそう言うと扉を開けた。


「ようこそ。生願部へ」


そういった彼の顔は、どこか嬉しそうだった。















今話も最後まで読んでくださりありがとうございました。

「生願部」とは一体なんなのか?彼は一体何をしたいのか?

次話でそれを書くつもりです。

お楽しみに!

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