君の願望
今日の自分に任せた昨日の自分、バッカヤロウ!
そう言いたい今日この頃、今回はあまりいい出来ではありませんでした。
次は頑張りますので駄文にどうかお付き合いください(ペコリ)
「あ…」
「え…?」
僕がカーテンを開けると神崎初香は体を起こしていた。ずっと寝ていたのだろうか、神崎の髪には寝癖があり、頰にシーツによってつけられた跡がある。
「あ、その…」
「ありがとうございました!」
「…え?」
僕は真っ白になっていた頭をなんとか絞って言葉を紡ぎ出そうとしたが、それを遮るように神崎は僕にお礼を言った。
最初はそれがなんのお礼なのかわからなくて間抜けな声を出してしまったが、朝の件を言っているのだとわかると徐々に頭の中が整理されていく。
「あー…あのことならもういいよ。体調の方は大丈夫?」
「は、はい軽い脱水症状だったみたいで…今はこの通りです」
そういうと神崎は手をパタパタと振って表現した。その様子がまるで小さな子供のようで僕はつい笑ってしまった。神崎の見た目は大人びているようなのに、動作はまるで幼い子供が親に何かをねだるような、そんなあどけなさがあった。
神崎は笑った僕を見て不思議そうに首を傾げたが少しすると何かを思い出したかのように鞄を漁り始めた。
鞄から取り出したのは一冊のノートだった。神崎はそれを開くと熱心にノートの内容を読み始める。また少しすると、顔を上げて何か真剣な顔つきで僕を見始めた。
「な、何かな?」
「ア、アサキョウシツデモアイマシタヨネ?」
…なぜか神崎は固い表情のまま棒読みするかのように話し始めた。
(えーと…「朝、教室でも会いましたよね?」かな?)
神崎の発した言葉はあまりにも棒読みで、正直あっているかわからないが、とりあえず僕はそれに頷いた。すると、神崎は嬉しそうに笑う。しかし、それもすぐに変わりまた緊張したように表情が硬くなる。
「アノ…ワタシナンテイワレテマシタカ?」
「え?」
「だ、だからっ!私クラスでなんて言われてたか聞いてるんです!」
僕が聞き返すと神崎は焦ったように質問を繰り返した。そのせいで彼女は先程から読んでいたノートを落としてしまった。僕はそれを拾って渡そうとすると神崎はさらに焦り始めた。
「あ!ちょっ、ちょっと待ってくだっ!み、見ないで!」
そういうと神崎はノートを取り返そうと腕を伸ばしてきた。しかし、焦りすぎたのかそのまま倒れ込んでくる。
僕はそれを受け止める。神崎の体は朝受け止めた時と同じように軽く、受け止めた際にふわりといい香りがした。
そんな中、彼女を受け止めた時に僕は神崎が必死に読んでいたノートの中を見てしまった。
「友達計画表…?」
「……〜〜〜っ⁉︎///」
神崎は受け止められたまま暴れ始めた。あまり激しく動かれるとその…女性特有の部位が僕の体に当たってきてしまう。僕は神崎の背中を優しく叩いて落ち着かせる。
「ちょっ、ちょっとストップ落ち着いて!ほら、ノートそこにあるから」
それを聞くと神崎は素早い動きで僕から離れてノートをすくいとり、毛布を頭までかぶってベッドにうずくまった。それからプルプルと震えている。
「あ、あの…」
「見たんですか…?」
「へ?あ、うん…ごめん…」
布団の中から聞こえる神崎の声は少し震えている。
「別に…謝らなくてもいいです…悪いのは私ですから…こんなノート作ってまで…」
神崎の声はだんだんと小さくなっていく。不安がそのまま言葉に出たような感じ、それを僕はよく知っている。昔毎日両親や、妹弟達にバレないように呟いていた僕の声と一緒だ。
「…ずっと臆病で、拒絶されるのが怖くて、誰とも話せないで…そのくせ願望だけは強くて…ダメですよね…」
その声を聞くだけで心がざわつく。
無理だと、無意味だと、だから切り捨てようと、握りつぶそうと、捨てようと、今朝の夢で見た僕自身がそのように考えていたから…
「それでも…私…友達が欲しいんです…」
彼女の声はもうほとんど言葉ではなく泣き声と化していたが、それでも、その最後の願望だけははっきりと聞こえた。
だからこそ、僕はこの時、神崎初香に手を指し伸ばそうと決めたのだろう。僕自身が、一度救われた身だから。
「神崎さん」
「……」
返事はない。だから勝手に話を進める。
「このノート一日借りるよ。それと、明日4時にここにきて」
「え…?」
神崎は布団から顔を上げて驚いた様子で僕を見た。その顔は涙で少し目の下が濡れていたが僕は気にせずに彼女の目を見て言葉を繋いだ。
「明日、君に見せたいものがあるから」
そう言って僕は保健室から出て扉をピシャリと閉めた。扉の外では三河先生と将吾が二人して立っていた。
「盗み聞きですか?三河先生も趣味が悪いんですね」
「いや?私はついさっき来たばかりだよ。趣味悪いというなら先に盗み聞きをしてたそこの変態紳士に言っておくれ」
その変態紳士に僕が侮蔑の視線を送ると気にしていないようにヘラヘラとしていた。
「いつから保健室から出てたのさ」
「神崎ちゃんがお前に泣かされる前かな〜」
「なっ!言い方に悪意があるぞ!」
それでも将吾はヘラヘラと笑っている。本当に腹の立つ奴だ。しかし神崎の件はこれから嫌でもこいつと関わりを持つことになる。
「それで、これは君個人で解決するのかい?それとも…」
「いえ、僕達で解決します」
僕は三河先生の言葉を遮るようにそう言った。
すると何故か三河先生は嬉しそうに笑い、将吾はベタベタとくっついてきた。
「そうか、三ヶ月で人は変わるものだな」
「いやぁ…俺は嬉しいぜ健?お前がこんな風に頼ってくれるようになったんだからさ?」
鬱陶しい将吾を振り払って三河先生に一礼してからその場を去った。
そう、今回の神崎の件、僕一人では解決するのは難しい。なにせ…
僕は入学して始めの一ヶ月、友達なんて存在を全て否定するようなぼっちだったからだ。
「友達が欲しい…か…」
神崎が言っていたあの願望を、懐かしいなと思い、そう口から漏らした。
最後の文まで読んでくださった読者の方々ありがとうございます
次はもっといいものを書けるように頑張ります!できるなら次話もお楽しみに!




