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メザメテ

神崎初香視点の後編です!




目が覚めるとそこは見知らぬ天井だった。しかし、どこか既視感がある。よく見慣れた、そう、まるで病室の天井のようだ。

ゆっくりと体を起こす。未だに体はだるくて熱いけれど今の状況がどうなってるのか知りたかった。


体を起こすと白衣を着た綺麗な女性が立っていた。髪の色と同じで少し茶色っぽい目は優しい眼差しを私に向けていた。


「おはよう、今日から転校してきた神崎初香くんだね?初日から倒れるなんて不運だったね。ほら水飲んで」


そう言って女性は私に水の入った紙コップを渡してくれた。私はお礼を言うと状況がつかめずにいたので、ここが何処なのか聞いた。


「ここは保健室、それで私はここの先生、三河真奈という。親御さんから体のことは聞いてるからこれから君の世話をする事になるだろうね」


そう言って三河先生は白衣のポケットに入っていた缶コーヒーを開けて一口飲んだ。


「ありがとうございます…」


私がそうお礼を言うと先生は怪訝な顔をしていた。


「…何か悩みでもあるのかい?」

「え…?」


私は驚いた。なぜなら今の私の頭の中は自己紹介の機会を失い、転校初日から失意した、つまりこれからこの学校の生活がどれだけ不安か、と言うことだったからだ。


「な、なんで…」

「あー…私はある部活の顧問でね、そこでよくそういう顔をした連中が来るからね。なんとなくでわかるんだよ。大人の女性の勘みたいなものだ」


三河先生は頭をガシガシとかきながら笑いながら答えてくれた。それを聞いて私はその部活に少し興味を持った。そんな人達が来る部活とは一体…?


少しだけ間が空くと保健室の扉が開かれた。開いて入ってきたのはヒゲを生やした少し痩せた感じのおじさんだ。


「三河先生、神崎初香は起きたか?」

「おや、原柴先生。つい今しがた起きたところだよ。連れていくのかい?」


ヒゲモジャの先生、原柴先生はコクンと頷くと私の方へ向かってきた。


「君のクラスの担任、原柴一誠だ。自己紹介しにいくぞ。立てるな?」

「…っ⁉︎」


そういうと原柴先生は私をベッドから引っ張り出した。三河先生はそんな原柴先生と戸惑う私を見てニヤニヤしていた。


「やっぱり原柴先生はお人好しだねぇ」

「生徒思いと言え」


そう言って原柴先生は私を引っ張ってそのまま保健室を出て行った。保健室を出るときに私が一礼すると、三河先生はそれに答えるように笑顔で手を振ってくれた。



原柴先生が引っ張って連れてきたのは「1ーD」とかかれた教室の前だった。これからずっと練習してきた自己紹介だ。

そう思うと少し足が震えた。怖い、やはり失敗でもしたらと思うと動けなくなる。すると原柴先生が私の背中を少し強く叩いた。


「早く済ませてしまえ。じゃなきゃクラスの連中と話す時間がなくなるぞ」


私はそう言われて決心した。


(そうだ、ちゃんと話すんだ。だから頑張らないと!)


私は先生に頷き返した。すると先生は少し微笑んで教室の扉を開けた。それに続いて私は教室に入った。

これから先、私がともに過ごしていくクラスメイトの元へ…










結果からいうと、私は惨敗した。


自己紹介は緊張して練習していた言葉の半分くらいしか言えなかった。その上緊張して額に付けられていた熱冷ましシートを付けたままだったのだ。


恥ずかしさと緊張のダブルパンチで私は足に力が入らず、先生にお願いしてまた保健室へもどった。


保健室に戻ると三河先生が驚いた顔をして、理由を話すと楽しそうに笑っていた。余計に恥ずかしくなり私は先程まで私が寝ていたベッドに顔を埋めた。


そして夢を見た。今日の朝、私を保健室まで運んでくれた彼の夢だ。大きい背中は私を安心させてくれて、支えてくれたあの手はしっかりと男の子の手をしていた。

そういえば自己紹介の時、目があったな…同じクラスだったんだと思った。一礼をしたけど気づいてくれたかな?











騒がしい声で目を覚ました。男子生徒が何か叫んでいる。三河先生らしき声が可笑しそうに笑っている。


(保健室ではもっと静かにすればいいのに…)


私はそう思って閉じられたカーテンの先を見つめた。私もあんな風に楽しく友達と話せるようになれたらな…と、そんなことを思った。


すると、突然カーテンが開いた。そこにいたのは、


「あ…」

「え…?」


夢に見た私を運んでくれた彼だった。


次からまた主人公の大城建くんの視点に戻ります。


頑張っていきます!

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