暗念と雨
今回は駄文です…いつもですか?いつも以上に駄文なんですよ…
あの時、僕は何を言葉にすればよかったのだろう。何を川端に伝えればよかったのだろう。
川端が何に対して涙を流したのか、何に対してあんな表情を見せたのか、僕は分からなかった。
ただ、今もなおあの時の彼女の涙が目を閉じるたびに暗い闇の中で浮かんでくる。そして、それを今日は夢に見た。川端の声がアタマに響く。
しかし、響く割には内容は入ってきてくれず、代わりに頭の中をさらにかき乱していく。
再び何か言葉を紡ぎたくとも喉は震えず、声は通らず、口は動かない。ただ川端の言葉を遠くから見ているだけのように感じ、彼女の涙が落ちると酷く胸が痛んだ。
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雨が窓を叩く音で目を覚ました。数日続いていた晴れの日の太陽で出来上がった雲はとても大きく厚く、外は朝だというのに暗かった。
「天気と心ってたまに一致するよなぁ…」
強く降っている雨を見ながら憂鬱な気分になる。洗濯物が乾きづらいからとか、登校する際に濡れるのが嫌だとか、そんな事よりも先に今日の夢の内容が頭をよぎって嫌になる。
いつもならベッドにもう一度潜って忘れてしまいたいものだけど、二度寝なんてしても現実は変わらないしきっと同じ夢を見ることになる気がした。
僕は二度寝を諦めて、せめて朝ごはんぐらいは美味しく作ろうとキッチンへ向かった。しかし、そこには既に先客がいた。
「あ、健兄おはよ!」
「健兄ちゃんおはよー。あと少しで出来るからね〜」
家の天使二人が楽しそうにキッチンを荒らしていた。僕はこれこら片付けをしなくてはならないと思うと深くため息をついた。
だけど、二人が作ってくれたパンケーキはとても美味しかった。
学校に着く頃には僕は襟足がびしょりと濡れていた。靴下まで濡れている気がして気持ちが悪く、裸足で上履きを履く。
周りを見るとみんな同じような理由なのか靴下を脱いでいる人達もちらほらといる。
「おはよう!辛気臭い顔してるな健!」
「…おはようゴ………ミ、朝から元気だね?今日は燃えるゴミの日だからゴミ箱が空いてるのかな?」
「お前らしからぬ当たりの強さに俺驚きだよ?朝からこんなに罵倒してくるとか。後、言い直すならちゃんと言い直してくれ。俺は人間だ」
朝からうるさい将吾が悲しそうな目で僕を見てくる。今日はあまり機嫌のいい日ではないので優しく出来る自信はないのに…
「あーうん…そうだね。うん、多分きっとそうだよ」
「多分⁉︎きっとって⁉︎もっと確信を持ってくれ!」
隣でギャーギャーと騒ぐ将吾にちょっとした八つ当たりをしながら教室に向かった。
教室ではいつも通りの仲良しグループが集まって楽しそうにお喋りをしている。その中でもやはり一番華やかなのは川端のグループだ。
華やかにお喋りをする彼女達に自然と目は向いてしまう。ふと川端と目が合ってしまった。たっぷり5秒、お互いに目をそらす事なく固まってしまった。
彼女の目は真っ直ぐと僕の姿を捉えていたが、どこか寂しそうな影が見えた。川端から目を逸らすと僕も少し横に目を流す。すると次は竜胆と目が合ってしまう。こちらはすぐに逸らす。あまりにも殺気立った視線は目を合わせずともこちらに向けられているのだとわかってしまう。
それに対して僕はまた憂鬱な気持ちが湧いてきた。
「朝から熱い視線だねぇ…」
「羨ましいってなら変わるけど?」
「竜胆は可愛いけどパス。ありゃ川端さんに心酔しちゃってるから」
将吾はどこか茶化すようにそういった。僕の気を知ってか知らずか、こいつはいつだって飄々としている。そんな変わらない正午にはどこか救われる。何よりいくら殴っても新品のままでいてくれるサンドバックというのは貴重だ。
「お、おはようございます」
「おー神崎ちゃんおはよー!」
「…おはよう神崎さん」
「だ、大丈夫ですか?大城君…顔色が…」
神崎さんが僕達の方へ寄ってきて話しかけてきてくれた。彼女は転入してきた当時より明るくなっていて、クラスでも話せる友達が増えていた。それでも教室でたまに僕達にも話しかけてきてくれる。部室ではもっと話している。
「朝から将吾に絡まれたらこんな顔にもなるよ」
「酷いな〜お前が悩んでると思ったから笑顔で接してやってたのにさー」
将吾がそう言って僕にもたれてくる。男にそんなことをされても気持ち悪いだけなので少し身をよじってそのまま受け流す。
「余計なお世話だ…」
この時僕は将吾に言ったつもりだったが、きっとこれは僕自身にも告げた言葉だったのだろう。
気が重くなるのを感じながら今日の始業のベルを聞き流した。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
次はもっといいのを書けるように頑張ります。




