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怒りを覚える

今回は主人公の感情を少しわかりやすく書いて見ました。

なかなか難しいものですね…感情表現とは

いつもよりどこか優雅でありながら、胃に弁当ではなくストレスが溜まったお昼休みが終わると、教室では僕と川端の噂話が飛びかっていた。


やれ大城は川端の彼氏だの下僕だの勇者だのとクラスメイト達は楽しそうにそんな事を議論し合っている。女子は女子で川端に理由と問いただしていた。先生が教室へ入ってくるとみんな虫みたいに一斉に解散していく。川端は質問責めに疲れたのか頭を抑えているようだった。




僕が座る窓際の席は生徒達には比較的人気な席だ。

理由としては外の景色を見ていられるからとか、もたれかかるところがある、そして暖かいかららしい。


けれどそんなことはない。確かに外の景色を見ることはできるが、雨の日になると雨が窓に当たる音が少しうるさいし、風邪が流行れば率先して教室内の空気の入れ替えをしなければならない。隣の席の人にわざわざ「窓、開けてもいい?」と聞くのも神経をすり減らすし、夏は直射日光で暑くなり冬は外の寒さが一番伝わってくる。

先生達も意外と窓際には注意を払っており、真ん中の席に座る人よりも先に居眠りがバレてしまうことも多々ある。


一度なってみればわかるが窓際の席というのはそこまで魅力的な席ではないのだ。プラスな面があればそれだけマイナスの面もある。光あればそこには影があるのと同じ理屈だ。


今日も照らされる日光は、開いた数学のノートを温めていく。せめてノートだけでも冷たければ枕にして寝れると思うのだが、そう簡単に太陽は僕に居眠りを許してくれないらしい。

山の上にあるこの学校からは海が見える。キラキラと反射する海は見ているだけで自分の小ささを考えさせられてしまう。


そんな事を考える程酔狂な自分が自虐的に思えてしまう。

海から目を離して数字が書き並べられている黒板に向けると隣から器用に折られた小さなメモ用紙が流れてきた。

そのメモ用紙を開き見てみると、




"放課後、旧校舎裏に来ること。来なければあの手この手で潰す"


by竜胆夏芽根(かがね)




女の子からの回し手紙だった。

文面から察するに校舎裏での愛の告白なんていう甘い話ではなさそうだ。

初めて女子からもらった回し手紙がこんな物騒なお誘いだなんて嫌な気分だ。憂鬱な気持ちで僕は、長々と黒板で解説されていた問題をノートに書き写していった。

その時、いつも以上にペンが重く感じたのは言うまでもなかった。

















放課後になると僕は将吾に念のため遠くから見ておいてくれと頼んでそそくさと校舎裏へ向かった。その時の将吾がにやけながらドンマイと言ったことは今日最も不愉快だった事は言うまでもないだろう。

校舎裏に着いたがそこにはまだ誰もおらず、僕はポケットに手を突っ込み携帯を取り出した。


ここでも念のために将吾にメールを送っておく。繰り返すようだがあくまで念のためである。

10分程したぐらいに手紙をよこした御本人がやってきた。


竜胆夏芽根。この人はいつも川端の側にいて、川端付き添いの中でも過激な一面を持つ女子である。前に粛清された男子も、川端を恐れているというよりかはこの竜胆を怖がっているように見えた。

竜胆は過激派の取り巻きを5〜6名程共に連れてきたらしく、僕は壁に追い詰められるように囲まれた。



「ねぇ、あんた梓様とはどんな関係なの?」


「別に、ただの友達だよ」



まさか様付けされているとは。流石は「氷華姫」である。今度僕も川端様とでも呼んでみようか。



「そんなわけないじゃないあんたみたいな冴えないやつ、梓様の友達なんてふさわしくないわ。それに、梓様は男の友達なんて作らない。いえ、必要ないのよ」


「へぇ…」


「何?なんか文句あるなら言ってみなさいよ」



この時の僕はきっとどうかしていたのだろう。夏の暑さにやられていたのか、それとも眩しく光を反射する海に目が眩んだか、お昼休みにあんな笑顔を見てしまったからか…

普段なら流して謝って、それで済むはずなのに、僕は竜胆達につい反発してしまった。



「じゃあ聞くけどさ、それって川端さんがそう言ってたの?」


「聞かなくてもわかるわよ。梓様は男を嫌ってる。あんたみたいな下心のあるような奴になると尚更ね。だから私達が梓様を守るの。あんた達みたいな奴らからね」


「ふーん…それってさ、傲慢、だよね」


「は?」



止めなくてはいけないのに、僕の口からは言葉が溢れてでる。



「勝手に川端さんの気持ちを決めつけて、それを前提に守ってさ、それで川端さんを孤立させて…川端さんはなんて言ったんだい?川端の気持ちに気付いてあげられたかい?川端さんの本当の願いに気がつけたのかい?その事を彼女に聞かず、話してあげずに、君達は『守ってあげてるから私達と一緒にいて、こっちを見て?』だなんて、傲慢と言わずになんて言うんだ。必死すぎて反吐が出るよ」



僕は真っ直ぐと竜胆に目を向けてそう言った。自分でも驚くぐらい声が低くなっていたことに気づいた。竜胆達は驚いたように固まっていた。僕はその内に彼女達の間を抜けて部室へ向かおうとした。すると、竜胆がやっと動いた。



「な、なんなのよあんた…おい大城!」


「驚いた、僕の名前知ってたんだ」



僕は皮肉気味にそういった。それによりさらに怒ったようで竜胆の顔はトマトのように赤くなっていた。


「君らがなんて言おうと僕は川端さんの友達だ。それを否定したいっていうなら川端さんと一度ちゃんと話すべきだよ」


僕はそう言ってその場を後にした。後ろからは竜胆の怒号が聞こえた気がしたが、その声は全部草木が揺れる音に埋もれて聞こえなかった。










主人公激おこです。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

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