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華か花か

はう….ギリ間に合った?今回短めになりましたがよろしくお願いします!

ここ最近の僕はどうやら周りの目を集めすぎている気がする。


もちろんその原因は僕の容姿が良かったり、評価される事ではない。大体が僕の隣にいる者の仕業だ。そう、例えばこの女子。



「大城君は何か趣味をお持ちですか?」



そうメモ帳を持ちながら僕に聞いてくるのは、クラスの中で男子からは恐れられ、女子からは崇拝されているといっても過言ではない彼女、川端梓だ。

僕は部活動の一環で彼女と友達になることになった。僕なんかでいいのか迷ったが川端本人がそれでいいと言っていたので僕はそれ以上に何も言えなかった。



そして僕はたった今、中庭で川端とお昼を一緒に食べている。彼女が言うには「友達ならお昼の時間を共にするのは至極当然の事ですわ」とのことで、教室の窓から覗かれる男子からの哀れみの視線と、女子からの胃を貫かれるような殺意のせいで僕は食欲を完全に失っていた。



「大城君?」



僕がすこしぼやけているのに気づいた川端は僕の顔を覗きこむようにしてきた。そのせいで僕と川端の顔はすこし動けば触れてしまいそうな程近くなってしまった。



思ったよりまつ毛が長く、人形のように綺麗に済んだ薄茶色の目。みずみずしく艶やかなその唇はとても柔らかそうに見える。この距離だと彼女の息遣いまでもが聞こえる気がする。



「あ、あの…」


「?どうしました?」


「ち、近いかな?」


「あ、申し訳ございません」



あまりに近かったので僕はギクシャクとしながら注意してしまった。川端本人はそんなに気にした様子はなく、それよりも外の暑さの方が気になるのか胸ポケットに入れていた扇を仰ぎ始めた。



「それで、まだ趣味のことを聞いてません」


「ん?あ、あぁ趣味ね…強いて言うなら泳ぐ事かな」


「泳ぐ?水泳などですか?」


「うん、そんなところ」



それを聞くと川端はメモ帳に真剣に書き込んでいく。仮であっても友達のためにここまでする彼女を見ていると、普段の冷たい「氷華姫」とはイメージがかけ離れているように思えた。



「では次は大城君の番です」


「え?何が?」


「私に趣味を聞いてください?」



どうやら会話をしたいらしくその足がかりを作ろうとしているらしい。そんな様子はまるで小心者の僕に少し似ている気がした。



「じゃあ川端さん、趣味ある?」


「私は手芸ですわね」


「手芸?川端さんが?」


「はい、意外でしたか?このストラップも自作のものなんですよ?」



意外も意外だ。お金持ちの彼女が裁縫や手芸を自分でやるようになんて普通は思わない。僕は彼女が自作したというストラップを貸してもらい観察した。


細かいところまで花の刺繍が入っており、相当器用でなければ難しいものだろう。これはお店で売られてもおかしくないできだ。



「すごいや川端さん、これお店で出せるレベルだよ」


「ふふふ、そんな私なんてそこまで上手いわけではありませんの。けれど、もしよければ大城君にも一つ作って差し上げましょうか?」


「いいの?」


「はい、せっかく友達になったのですから」



彼女はそういうと、自分のストラップを持ち上げて楽しそうに笑った。その笑顔は氷の華というよりは、雪が溶けて背を出した小さな花のように優しく、そして美しかった。





面倒だと思っていた今回の作戦は、予想と違ってそんな時間が楽しいと思い始めていた。







最後まで読んでくださりありがとうございます!

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