私の本心
やばいです…どんどん書くペースが落ちて来ています…
毎日更新!間に合え!
ー神崎sideー
最近、私に友達ができた。
星宮ヒカリちゃん。
彼女は「生願部」という不思議な部活動に入っていて、私を助けてくれた彼、大城君がその部活動へ連れて行ってくれた。
はじめはとても緊張していた。足は震えて夏なのに指先が凍るのではないかと思うほどに冷たくなってしまっていた。
だけど、「生願部」の皆さんは優しく私に接してくれた。
葉桜先輩は私が泣きそうになれば慰めてくれたし、友達を作るために「女優作戦」という先輩が友達作りでやっていた事を教えてくれた。
墓月君はいつも周りを明るくするように率先して話しかけてきてくれるけど、たまに異常なまでにスキンシップを取ろうとしたり少し困ったところもある。
ヒカリちゃんは初印象はなんだかギャルのような感じで怖そうだったけど、私のために作戦を考えてくれて、結局のところ友達にもなってくれた。話し方が少し荒いけど、根はとても優しくて良い子だった。
そして大城君。私が転校初日から倒れたのを保健室まで運んでくれて、そして、私に友達を作れる機会をくれた。
部室では本を読みながら他の部員達と話したり、墓月君の最近のマイブームに色々と突っ込んだり、墓月君が安藤先輩やヒカリちゃんに怒られてるところを楽しそうに見て微笑んでいて、そしてその笑顔を見ると、私は心臓の音が自分でも聞こえてしまうほどに大きく変化する。
彼のお陰で私は友達ができた。彼のおかげで私はこの部室で楽しく笑っていられる。そんな日々が楽しくて、そして、一つだけ見落としてしまっていた事があった。
「生願部」の部室では彼らがいてくれる。けれど、教室では私は一人だ。
最近では私の事を「新女王」なんて読んでいるクラスメイトまでいる。消しゴムを拾って返すだけで怖がられたり、ぶつかってしまった時に土下座されたり、正直どうしたらいいかわからなくて困っている。
でも、それより困っている事がある。いつも休み時間に私に会いにわざわざクラスまで来てくれるヒカリちゃんまで周りから悪く言われている事だ。
それを知った時、私は彼女に対してとても申し訳ない気持ちになった。彼女だって悪く言われているのに辛いはずがない。
私はヒカリちゃんに放課後にその事を言って彼女から離れようとした。
私が離れればきっとヒカリちゃんは悪く言われることはないから、だから私が離れれば…そう思ってた。けれど
「ふーん…初香ちゃん回れ右して?」
「へ?」
「いいからいいから♪」
私が言われるがままにそうするとヒカリちゃんは思いっきり私のお尻を叩いた。
「ひぅっ⁉︎」
「そんな弱気なことばっか言ってるから友達作れないんだよ?あんな奴らのいうことを気にしちゃダメ。次あんな馬鹿な連中に流されるようなこと言ったら二回叩くからね?」
そう言って私を励ましてくれた。
そう言われて私は少し泣きそうになった。この時たしかにお尻がジンジンと痛かったが、泣くほど痛かったわけではない。ただ、これが友達なんだと思って、ぽっかりと空いた穴に何かが少しずつ埋まっていく感じがしてそれがとても暖かく感じだから。
私はヒカリちゃんと友達になれてよかった。そう思えた。
ヒカリちゃんはその後、この事を「生願部」の人達にも話し、再び私の友達作りの会議が始まってしまった。
しかし、言い出した日にはあまり良い案が浮かばず、後日案を出してくることになった。
私なんかのために申し訳なく思ってごめんなさいと言ったらヒカリちゃんは不満そうに頰を膨らませた。
それをみてすぐにありがとうと言うとすぐに明るい表情に変わって、一緒に帰ろうと言ってくれた。
次の日、「生願部」の人達が作戦を考えてきてくれた。
まず墓月君が「スキンシップ作戦」と言うのを考えてきてくれたが、葉桜先輩やヒカリちゃんがすぐに却下した。
どうやら下心のある作戦だったらしく、うっかり口を滑らせて考えてたことを言ってしまった墓月君は二人によって保健室送りにされてしまった。
次にヒカリちゃんがクラスメイトの人達一人一人をここに連れてきて話をするという作戦を立ててくれた。
とても嬉しかったけど、クラスメイトが40名もいる中で一人一人を相手にするのは難しいことだと思った。
最後に大城君が考えてきてくれたのが、私がこの部活に入るということだった。そうすればヒカリちゃんとの関係も部活仲間ということで収まるし、誰にも変な噂を立てられるずにヒカリちゃんとも話せる。
変な噂を立てられなければみんな話しかけてきてくれるかもしれない。そんな作戦だった。
私は悩んだ。二人が考えてきてくれた作戦を実行すべきなのか、と。
本当はまだ怖かった。失敗することではなく、迷惑をかけることが。
私が一人で考えられるようにと葉桜先輩が保健室を勧めてくれて、私は保健室へ向かった。途中で墓月君と原柴先生ともすれ違った。
保健室には三河先生がいた。
「どうかしたのか?神崎、辛気臭い顔をして。そんなんじゃ男子共が絶望してしまうぞ?」
缶コーヒーを手にぶら下げて笑いながら先生はそう言った。
一人で考えてみようとしたが、私一人で考えがまとまるかが不安で、少しだけ三河先生に頼ろうと事を話した。
すると、三河先生は先程の態度とは打って変わって優しい表情をしながら私に話しかけてきた。
「なあ神崎、あの部活どう思う?」
「え?」
突然聞かれたことで私はどう答えていいかわからなかったからあたふたと焦ってしまったが、ゆっくりでいいから答えてくれと三河先生が言ってくれた。
「…なんだか、不思議な部活でした。あそこにいると、葉桜先輩は優しく接してくれるしヒカリちゃんは一緒に楽しくお喋りしてくれる。墓月君は変なことを言うけど面白くて、大城君はいつも周りのことをよく見てくれています。最近はあの部活に行くのが楽しみで、ワクワクして…」
言っていてどんどん気づかされていく。私は自分でも知らない内に、あの場所が、「生願部」のことご好きになってしまっていたのだと。
あの部活での雰囲気も、彼女達との会話も、一緒にいる時間さえも。
私が心が暖かくなる場所になっていたことを。だから私はあの場所にいたいことを。たとえ心配かけることが怖くても、拒絶されてしまうかもしれないけれど、でも私は彼女達のいるあの部活に惹かれているのだということを。
私はそれに気づいてつい言葉を止めてしまっていた。それを見て三河先生は変わらず優しい声で話してくれた。
「気づいたなら行って来なさい。神崎にとってあの場所が今、どんなところなのかちゃんと、わかっているのならね」
そう言われて私は先生に一礼して保健室を後にした。
「生願部」の部室へ向かう一歩一歩を踏むたびに、私は自分の決意が固まっていくのを感じる。
少しずつ、胸に空いていた穴にさらに暖かい何かが流れ込んでいく。それがいっぱいに満たされた時、私は「生願部」の部室の前にいた。
私は一息大きく吸って、それを吐き出し扉を勢いよく開けた。そして、私が今言うべき、言いたいことをはっきりと伝えた。
「1-D神崎初香です。今日から「生願部」に入部します!」
この日、この時、私は初めて私の本心を言えた気がした。
最後まで読んでくださりありがとうございます