帰り道
ごめんなさい…思った以上に指が動かないです…もっと頑張らなきゃ…
レビューを書いてくださった方もいました。本当に勇気付けられました、ありがとうございます!それでは、今回もあまり期待できない出来ですが是非読んでみてください!
神崎の1度目の友達作りは半分成功したが、肝心のクラスメイトとの距離がさらに開いてしまった。
神崎が転校してきてから一週間が経つが良い変化はあまりなかった。
「ねぇ…思ったんだけどさ…私って怖がられてる?」
星宮がそういうと、水を打ったかのように静かになった。クーラーの機械的な音だけがやけに大きく聞こえる。墓月が笑いを堪え、神崎は気まずそうに目をそらす。仔猫先輩は関係ないといいたいのか季節外れのスノードームを眺めていた。
「大城、私って怖い?」
僕はそう言われて心臓が止まる気がした。まさか僕に飛び火するとは思わなかった。もしここで回答を間違えれば僕もゴミ箱送りにされてしまう気がして脳内の足りない語彙を集めてなんとか答えた。
「そ、そんな事ないと思うよ?ただ他のクラスから堂々とした態度で来ちゃうからみんな何をどうしたらいいかわかんないだけで…」
「はいか、いいえで答えなさい?」
一部の男子にとてつもない人気を誇る星宮の笑顔は、本来ならもっと輝いて見えるはずだが、今は悪魔に尋問を受けているような気がした。
気がつくと指先が冷たくなって足も震えている。我ながら情けないとも思うが今の星宮を前にして平気でいられるのはあの将吾ぐらいだ。
「は、はい…」
僕が一か八かそう正直に答えると、僕の視界は一瞬のうちに暗転して、周りから昨日仔猫先輩が飲んでいたコーヒーの香りと、原柴先生が残していったスルメの匂いがした。
ゴミ箱に突っ込まれた僕を笑う将吾の声が吐き気がするほど不快に感じた。いや、それだけでなく、ゴミ箱に突っ込まれるという経験自体、既に吐き気を催すことだ。
制服の袖がコーヒーのせいで少し暗くなっていてシミにならないか心配になる。
「ふざけんなって話よ!全く…」
「ぷふっ…いやぁ…他の人がゴミ箱に突っ込まれるところ見ると本当に笑えるな」
星宮は怒りが収まらないらしく、売店で買ってきたドーナツをやけ食いし、墓月はまるで最高に笑える喜劇を見たかのように笑っている。
仔猫先輩は先程まで見ていたスノードームをいつのまにかしまっていて、呆れた様子で頭をおさえていた。
「なあ貴様ら…今日は神崎のアフターケアについて話すはずだろう?いつまでコントをやっているんだ」
「コ、コントでいいんですか?」
神崎が心配そうにそう言う。全くもってその通りだ。これをコントにできるのは将吾だけであって、僕のような平凡な人間がやられたら最悪の場合自殺すら考えてしまう。
ゴミ箱に突っ込まれる体験などコントであろうが本気であろうが二度とごめんだ。
「それで、今回はそのアフターケア…誤解を解くことが目的ですよね?」
僕がそう切り出すと、いつまでも怒っていた星宮と、このまま笑い続ければ死ぬのではないかと思わせるほど楽しそうにしていた将吾が真剣な表情になる。
「まあ今回のは私にも責任があるしね…」
「俺も…新女王を名付けちまったからには責任を取らないとな…」
みんなやっと真剣に事を考え始めた。しかし、この日は誰も解決案を出すことが出来ずに解散となってしまった。神崎はありがとうと礼を言っていたが、正直悪化させてしまった気がして心が痛んでしまう。後日、家で考えてきた案を一人ずつ試すということで話は終わった。
下校時刻の6時になってもこの地域は夕陽に照らされてまだ明るい。前方に部活終わりの生徒たちが4〜5人で固まって歩くのが見える。
ああいうのが青春というものだのだろう。放課後に友達と呼べる同士でコンビニ寄ったり、途中まで一緒に話しながら帰ったり、そんなことが気軽に出来ることが彼らにとって普通のことで、そしてとても幸せなことなのだろう。
僕はその楽しさも、幸せも、つい最近知ったばかりで普通だなんて思えない。いつも帰るのは一人で、話す相手がいない分、足はすぐに前に出る。機嫌がいい時は鼻歌をまじえながら帰るが、それでも気づけば家に着いている。
帰り道は寂しく、他の通行者もいるはずなのに自分の足音しか聞こえてこない。アスファルトを踏む音が耳に今でも残っている。
彼女は、神崎はどうだったのだろうか?今日は星宮と一緒に帰ると言っていたが、それまでの彼女も同じように帰り道を一人で歩いていたのだろうか…
蒸し暑い夜の風は思いふける僕に帰路を急がせるように背中を押した。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
評価をつけてくださった方、レビューを書いてくださった方、ほんとうにありがとうございます。これからも頑張っていけます!