友達作り作戦会議
やばいです…最初の感じが出せません…やばいです。大事なことなんで二回言わせてもらいました。
ー大城視点ー
神崎が泣き止んで落ち着くまで数分かかり、それまで僕と仔猫先輩は彼女に付き添っていた。
「す、すいません…ご迷惑をおかけして…」
神崎は縮こまってしまっていた。それを仔猫先輩がよしよしとなだめる。何も知らないと妹が姉を慰めているように見えて不謹慎だが笑いそうになってしまう。
すると仔猫先輩が僕を睨んできた。
「おい大城、今変なことを考えなかったか?」
「い、いえそんなことは…」
まさか心を読まれるとは思わなかった。仔猫先輩には家柄やどこか大人びた雰囲気のせいでいくつかの逸話がある。
やれこの人は実はこの学校を裏から仕切る本物の校長だとか、実はFBIの捜査官で放課後はヘリで犯人を追いかけているだとか、人を操るエスパーなのでは?とか、数百年生きる魔女なのだとか…色々とあるが本人はそれをアホの豊かな妄想だと言う。
実際それはこの高校の誰かが適当な吹いた法螺だとはわかるのだが、仔猫先輩の周りとは違う異様な雰囲気は一瞬、本当にそうなのではないかと疑ってしまうほどだ。
しかし、本人はそれが原因で誰も寄り付かなかったことに初めは傷ついていたらしい。仔猫先輩はそんな普通の女子高生なのだ。
「いやーアレっすね!仔猫先輩が神崎ちゃんをあやしてるのを見ると、なんだか妹が姉を慰めてるみたいっするべっ⁉︎」
仔猫先輩の本日二発目のボディーブローが将吾にヒットする。
流石将吾だ。普通言うのを躊躇するところを馬鹿正直に言うところなど尊敬できる。真似をしようとは全く思わないけれど。
「おいお前ら、どうでもいいが静かにしろよ?お隣さんに迷惑だろうが」
するとソファで横になっていた原柴先生が注意をする。しかし、女の子が不安で泣いていたと言う時に眠りこけて、あまつさえそれを静かにしろと言うのはこの人、先生の前に人としてどうなのだろうか…?
「「「「………」」」」
「な、なんだお前ら…?」
「いや原柴先生、今のはどうかと…」
「柴っちょ、それはないわぁ〜…」
「最低」
「なんだまだいたのか原柴?焼却炉の火が消える前に早く帰れ。お前の家は地獄だろ?」
「お前ら俺が先生ってこと忘れてるよな?」
僕達はみんな原柴先生の態度に少しイラついていたらしい。僕と将吾は最後あたりは言葉を濁したが、女性陣は完全に怒り心頭だった。仔猫先輩はかなり酷い事を言っているが、原柴先生の自業自得で、それにこれぐらいならこの二人なら大体いつもこんな感じだ。
しかし、星宮は仔猫先輩のように色々と言うわけでなく、ゴミを見るような目で原柴先生を見て、ただストレートに感情を口に出しただけなので、どちらかと言えばこちらの方がダメージは大きいだろう。
すると、突然神崎が笑い出した。
「ぷっ!ふふふふ…あはははは!」
いきなり笑い出した神崎にみんなどうしたのかと思っていると、神崎がそれに気づいたようで理由を話す。
「いえ、今のやりとりが面白くて、つい」
今の何処に面白い要素があったかはわからないが、あんないつもの馬鹿みたいなやりとりを見て笑って元気になってくれているのならそれはそれで別にいいだろうと思う。
そんな中、星宮が手を挙げた。
「それで、これからどうすんの?神崎さんの友達作り、これが今回の依頼ってことでいいの?」
星宮がそういうと僕は神崎さんへ視線を向けた。彼女先程までの不安で何か心配していた顔とは違い、何か少し自信のついた笑顔で僕に頷き返した。
「よろしくお願いします!」
神崎はそう言って頭を下げた。
早速神崎の友達作り作戦の作戦会議が行われた。仔猫先輩が戸棚の後ろに収納されていた簡易ホワイトボードを取り出してペンを将吾へ投げつけて書けと命令した。
将吾は嬉しそうに元気よく返事をしていたがペンを投げつけられてなぜ喜んでいるのかよくわからない。そして仔猫先輩が意見を出すように俺たちに言った。
最初に手を挙げたのは将吾だった。
多分この中では1番友達が多く、適任者だと言えるだろう。
「とりあえず誰かと話すのが優先的だろ?なら何か話題になる事を探すべきじゃね?」
「「「……」」」
「え…?なんでみんなそんな驚いた顔して俺みてんの?」
正直将吾がこんなまともな事言うとは誰も予想していなかった。しかし、同じ部活でこのように付き合っているとわからなくなってしまうが、将吾は実際は頭がいいのだ。
高校が始まって最初のテストでは250名の生徒の中で総合7位を取っている。たまに見かける頭はいいのにアホと言う、矛盾した存在だ。
「えっと…じゃあ神崎さんはそれでいいかな?」
僕がそう聞くと神崎は頷いた。
「というか、それ自体はさっきのノートに書かれてたわよ?後、話題のことも」
星宮がノートを出してそう言った。神崎のノートには確かに色々と書かれていた。それは昨日家に帰って目を通しているから分かっていたことだった。
「まあ、それは本人でもわかっていることだろう。しかし、それが出来ないから困っているのではないか?神崎」
仔猫先輩がそう言うと神崎も小さく頷いた。話しづらそうにしてる彼女の代わりに僕がその理由を話す。
「神崎さんは…」
「どうせ、話そうと思っても緊張して口が動かなくて生返事になって会話が弾まない、とかそんなことだろう?」
僕が言おうとした事を全部仔猫先輩に言われた。流石は先輩だ。しかし、何故わかったのだろう。
「なんで仔猫先輩わかったんですかぁ?あ、もしかして仔猫先輩もそういう経験があったりんごすっ!」
仔猫先輩が無言で力強く将吾の脛を蹴る。成る程と思った。仔猫先輩も一年の頃は友達作りに苦労していたと言っていたし、そういう経験をしていたのかもしれない。
…それにしても将吾も懲りないなと思う。今日だけで仔猫先輩に三回も攻撃を食らっているというのに…それでも平気そうな顔をしているのは彼が頑丈だからだろう。
「はぁ…それで、その対策だけど、どうすんの?私はそんな経験ないから解決策なんてないわよ?」
「仔猫先輩、先輩はどうやって克服したんですか?」
星宮が、そういうと僕は経験者である仔猫先輩に聞いてみた。
「あのな…別に経験とかは…とりあえず神崎、お前はちょっとこっちへ来い。他の奴らは少しここから出て行け」
そう言われてなんでと聞こうとするとペンが飛んできた。どうやら早く行けということらしい。僕と星宮はすぐに出たが、ソファで寝ていた原柴先生と足を蹴られた時の痛みのせいで動けないと言う将吾は居残ろうと粘った結果、仔猫先輩に蹴り飛ばされていた。
数分が経ち、部室の扉が開いた。
何やら神崎はまた真剣にノートを読んでブツブツと言っている。
仔猫先輩はどこか疲れた様子で椅子に座っていた。
「…えっと….どうしたんですか仔猫先輩?」
僕がそう聞くと仔猫先輩は黙ったまま簡易ホワイトボードにペンで何か聞き込んでいく。そして書き終えるとそれをみんなに見えるように前に出す。
「明日から実行する、[女優作戦]だ。これから説明する。私が考えた作戦だ。失敗したら墓月と大城は死刑だ」
そう言って仔猫先輩は悪そうな笑顔を浮かべた。
女優作戦…どう言う作戦なのかは知らないが…失敗したら死刑だなんて理不尽な作戦だと思った。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
ちゃんと感覚取り戻さなきゃ…