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エージェント・白里によるオリエンテーション



 やぁ、ようこそ「カルネアデス」へ。

 どうか好きなところに座ってくれ。

 僕はB級エージェントの白里だ。


 そこの君、なぜ僕をジットリとした目で見ているんだい?

 報告書を読んだ?

 あぁ、うん。それじゃ仕方ない。

 確かにあの妄想小説を書いたのは僕だとも。それにしても酷くないかい?

 変にリアリティがあったらマズイからテンプレ小説を書いたのに情報漏洩の可能性があるって3ヶ月の減俸に新人教育を押しつけるなんて。


 まぁ安心してくれ。君達はしっかりと教育する。

 流石に次は減俸じゃ済まないだろうし。


 やっぱり異世界物がまずかったなぁ。


 え?面白かった?君、名前は?ケビン?

 そうか。ありがとうケビン君。


 さて、気を取り直してオリエンテーションをしよう。

 君達は国連加盟各国の特殊部隊、その中でも特に優秀だ。だから集められた。どこから来た?


 GIS、グリーンベレー、デルタフォース、SWAT、GIGN、SAS、スペツナズ、特殊作戦群……そんなところかな。


 まぁ、君達が銃で武装して襲って来たところで素手の僕にすら勝てないけどね。


 そこ。座って。

 ここでは非常識が常識だ。

 君達が束になってきたところでB級どころかC級エージェントも倒せないだろう。


 僕らの組織は薬物投与、肉体改造、サイボーグ化、特殊技術、呪術、様々な方法でエージェントを強化している。


 冗談ではないよ。


 座れといったろう。報告書を読んだ君、あれを見てどうだった?

 何を言っているかわからなかっただろう?

 いや、いい。怒ってはいない。

 あの報告書以外にも幾つかの報告書を後で全員に見せるから安心してくれ。


 僕らは「異世界」に対して設立された組織だ。

 異世界という単語は馴染み深いだろ?

 最近はどのアニメも小説も異世界モノだからね。


 我々が生きている世界とは別の、剣と魔法の世界がある。

 そうだ、魔法だよ。そして多くの異世界は中世レベルの文明しか持たない。



 我々の世界、"現行世界"で魔法が使用できるのはごく少数でね、もちろん僕も使えない。

 残念だがこの世界に魔法学校はないよ。たぶんね。


 ここからがもっとも重要だ。

 毎年何人も異世界に連れ去られている。


 世界間の拉致。

 それを連れ戻すのが僕たちの仕事でね。

 異世界案件と呼ばれるそれは日に日に増している。


 大昔、この組織は"恒久的世界維持機関ラテーロ"って名前でヨーロッパを中心に中世より前から活動していた秘密結社連合だった。


 まだ世界に魔法の残り香があった時代、世界を維持する為に化け物を殺して魔女を炙って国を動かして暗躍していた。


 まぁ冷戦で東と西に組織も分裂して、冷戦後は西側陣営が主流となってしばらく活動してたんだけど、ここ最近になって異世界からの干渉が激しくなってね。


 国連が主体となって組織を再構成したんだ。

 それがこの"対異世界機構カルネアデス"だよ。


 冷戦で分裂した西側陣営の本拠地、ここアメリカのペンタゴン地下が本部。


 でも1番異世界案件が多いのは日本でね。

 最前線として日本支部がここより遥かに大きく、地下数キロのところに巨大都市を建設して日々任務を行なっている。

 君達もいずれ日本支部勤務になるだろう。


 何故日本における異世界案件が多いのか。

 まぁ答えは簡単だよ。

 数年前から異世界を舞台にした娯楽が増えたからさ。

 これは日本だけじゃ無いけど。


 ただ、日本のサブカルチャーは異世界と強い親和性があってね。

 他の国より簡単に、そして異常なスピードで異世界のイメージが浸透してしまった。


 異世界といえば剣と魔法の世界。ドラゴンが存在し、エルフがいて、ドワーフがいる。

 文明レベルは中世くらいで多くの国は王と貴族が支配している。


 大体がそんなものだ。


 その固定化された強いイメージは現実より空想を求める人間に対しきっかけさえあれば向こう側へ行けるほどにまで成長した。





 世界は既に手遅れだった。

 機構は全世界に強力な記憶改竄を行なったが効果はなかった。

 この件は間違いなく裏で何かが糸を引いてる。

 それを見つけるのも僕らの仕事だけどね。


 最早どうしようもなく異世界のイメージは人々に伝播してしまった。


 対策として陳腐化したテンプレ小説を使って興味を失わせたり、異世界に固定化されたものではない様々なイメージを持たせる試みもやっているけどね。


 ただ、今のところ世界滅亡を避けるために連れていかれた人々を連れ戻すことしかできていないのが現状だ。


 予測では更に異世界案件は増えるだろうし、対処できる人間が少ない。


 だから君達を集めたんだ。

 世界を救うために。


 まぁ今日は概要だけだ。魔法とか機構の科学力とか危険監視団体とかについてはこれから学べばいいさ。

 ただ、今までの価値観を全て投げ捨てた方がいい。





 そうだ。これは現実だよ。

 虚構は現実となり世界を侵食している。

 僕らはそんな夢うつつの中で世界の為に自己を犠牲にするんだ。


 おや、もうこんな時間か。どうだったかな。わからないことはまだ多いだろう。

 詳しいことはまた次の時間にするよ。


 ではこれでオリエンテーションを終了する。

閲覧ありがとうございました。


追記・4/30日改稿しました。

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