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神と少女と






神は死んだ!神は死んだままだ!

我々が殺したのだ!


フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ

「悦ばしき知識」より


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 「カルネアデス」日本支部異世界庁。


 下鴨頼銘(しもがもらいめい)は焦っていた。


「長官! エージェント・六条が帰還していません!」


 担当官(アンジェリカ)は15分ほど前に目的を完了した六城からの連絡を受け、転移装置を起動させこちらの世界にサルベージした。


 そこまではいつも通りだ。ただし帰還したのは転移した男子高校生のみで、六城の姿はなかった。


 何が起こったのか。


 転移陣は技術者によって点検されているが今の所問題は見られないとのことだった。


 世界間の移動。そんなものに介入できる連中なんぞ限られてる。

 そう考え下鴨は急いで自室に向かい、壁に備えつけているモニターに特殊コードを打ち込む。


「異世界庁長官の下鴨です。15分前にA級エージェント・六条利生が転移陣に介入され行方不明になりました。状況は不明ですが危険監視団体、もしくは超常的な存在によるものと考えます。"(そら)の工兵大隊"及び"対神庁"の出動を許可して頂けますか」


『……んー……却下だねー』


 モニターの向こう側から何者かの声が答える。

 それを聞いた下鴨は目を見開き抗議した。


「異世界案件はほとんど日本で発生しているものです!それの対策を行うエージェントが何者かに攫われたんですぞ!」


『僕らも既に情報を得ているよ。充分に状況は理解しているからね」


「だったら……!』


『まぁ落ち着きなって。助けないとは言っていないよ。エージェント・六条の付近に神力の残痕があったらしいね』


「神が関わっていると?ならば"対神庁"の出動が必要です!」


『必要ないよ。既に適任者を送り込んでいるから』


「適任者……?あなた方が?」


『そうだ、専門家だよ。神に対してのね』



   ♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢




 ただただ白い。上も下も右も左も、どこを見ても純白の部屋に六城はいた。


 その部屋は境目すらなくどれほど広いのかすらわからない。


ーーーーここは……どこだ。


 眩い光が溢れ、目が覚めたらこの部屋にいた。


 少年と帰還していた筈だった。しかし彼の姿はない。なにより、移動時に感じる落下の感覚がなかったことに六城を見は気づく。


「やぁ。目は覚めたかい?」


 後ろを振り向くと白い椅子に10歳ほどの少年が椅子に座っていた。

 椅子には階段がついていて、身長180cmの六城より高く、翼が彫られていた。


「お前が転移に介入して俺をここに飛ばしたのか」


「うん。ふざけたことをしてくれたお礼だよ」


 少年の顔は笑っていたが目は笑っていなかった。

 それどころか非常に強い怒りを持ってこちらを冷徹な目で見ていた。

 六城はその怒りに体を殴られたような強い圧迫感を感じた。


「そうかい」


 頬に汗を流しながら、先程まで使っていた32口径銃を少年に発砲する。フルオートであるその銃は12発撃った後、弾を切らした。


 拳銃を投げ捨て45口径のサブマシンガンを取り出し撃ち込む。

 弾は全て無くなる。


 次にアサルトライフルを構え攻撃する。

 弾が切れる。


 手榴弾を取り出し投げ込む。


 50口径の対物ライフルを撃つ。

 弾は無くなった。


 対戦車ライフルを放つ。

 徹甲弾・焼夷弾共に弾切れした。


「無駄だよ。人の攻撃が効くわけないだろう?」


 爆炎から現れた彼にはおろか、床にすら傷一つついていなかった。


「お前は何者だ」


「僕かい?僕は神様さ」


 少年は尊大に言い放つ。


「お前が神?異世界人召喚もお前が関わっていたのか」


「僕がやった事は勇者に僕の名前を覚えさせたことだけだよ。異世界召喚は妙な魔術師達がやったんだ」


「誰だそいつらは」


「さぁ?でも彼らは異世界から勇者を連れてくることで勇者に力を渡した神として僕の信仰が増える作戦を考えてくれた」


「しかし俺のせいで失敗した、と」


「そうだ。そこだよ!君さえ来なければ彼は勇者として僕の名前を広めただろうに!」


 神は心臓が止まるかと思うほど強い威圧を仕掛けてくる。


「全く。作戦は失敗だ!」


「あの魔法陣は行きだけだ。帰ることはできない。1人の人生が狂うんだぞ!」


「うるさい!人がどうなろうと僕の知ったことじゃないよ。君はタダでは殺さない!もう殺してくれと泣いて叫んでも助けはこないんだ」


 白い空間から剣を取り出す。李世は後ろに下がろうとするが下がれない。


「ダメだよ。この神域は僕の思い通りになる。他の神だったらまだしも唯の人間風情がどうにかできる場所じゃない。さぁ、ひれ伏せ!」


「がはぁっ!!」


 神が叫び、六城は地面に叩きつけられた。

 顔に神の剣が突き付けられ、頬が切れる。


「まずは腕からかな」


 すると六城の右腕は神が剣を振り下ろせば両断できるような位置へと勝手に動く。


 笑顔の神が、剣で六城の腕を断ち切ろうとしたとき白い空間にヒビが入った。


 ピシッ、ミシッ


 次の瞬間、何かが激突したような音と同時に上の空間がガラスのように砕け散る。


「なっ!?この空間を破壊できる奴なんていない筈だ!一体何が」


 ズドッ!!


「グギャッ!」


 カエルのような声を出し彼の体は地面に打ち付けられる。頭が吹き飛び地面にも大きな亀裂が入った。


 赤い華が咲いた。

 それを引き起こしたのは巨大な鉄塊だった。神であった者の上半身は原型を留めず、下半身も亀裂と共に地面に埋まっている。


 六城はそれが巨大な武器だと気づいた。

 それは円柱に4枚の三角形の板が縦に組み合わされて構成されていた。


「メイス!?」


 六城は起き上がってそう叫ぶ。

 その漆黒のメイスは彼の背丈ほど大きく、表面に白のペンキで文字がこう書き込まれていた。


 "Gott ist todt!Gott bleibt todt!Und wir haben ihn getödtet!"


 そして、メイス以上に李世の目を引いたのは、そのメイスの横にいた少女であった。


 「ああ、()()()()()()()()


 何事か呟いた彼女は夜の星のように輝く銀髪を持ち、青い双眸でこちらをじっと見つめていた。


「……お前は、誰だ」


 李世の質問に対し彼女は悲しそうに、しかしどこか納得した顔で、膝まであるその髪を揺らしながら


「12人委員会により派遣されました、鳴瀬です。これからよろしくお願いしますね、六城先輩」


 そう、言い放った。


「……はい?」


 これが六城にとって初めての相棒、鳴瀬沙耶(なるせさや)との出会いだった。



   ♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎




拍手が起こる。それと、ひどく楽しげな笑い声が。

暗い部屋の中、2人が会話をする。


「楽しそうですね。マスター」


「あぁ。楽しいとも。いよいよ()もお払い箱だね」


「では、彼らを呼びますか?」


「いいや、今はまだ私達(・・)が動くときじゃあないーー」


そう呟き2人は部屋の奥へ消えた。

閲覧ありがとうございました。

「邂逅」はこれで終了となります。

ようやくヒロインを話に入れられました。

野郎だけだと流石につまらないですね。

週末は連続投稿します。

追記・4/30日改稿しました。

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