案件の収束
「何が起こった!衛兵!おいっ!?」
驚きを顔に浮かべつつ玉座から立ち上がった王は問い詰める。
「貴様……何者だ?」
その質問には答えず、六城は王に向かって逆に問う。
「異世界召喚の魔法陣がある筈だ。どこにある?」
王はそれに答えず立て掛けていた杖を手に取り六城に向ける。
「貴様が誰であろうと生かして帰すわけにはいかん!炎の大神よ!我に力を!彼の者を焼」
プシュン!
六城は手にしていた拳銃の引き金を引いた。
弾は王の右足に命中した。
「ギャァァァァァァァァァ!!!」
叫ぶ王に近づいて、杖を取り上げる。
王はうずくまりながら彼を睨みつけた。
「貴様ァァァ……。覚えていろ!親族もろとも拷問にかけ殺してやる!」
激昂し何を言っても聞き入れないだろうと諦めた六城はコートから細いペンのような装置を取り出す。
スイッチを押すと、緑色の光が王に照射された。
「もう一度質問するぞ。召喚術式はどこにある?」
「ふんっ、言うわけなかろう!そうか!貴様他国の刺客だな!?ならば勇者を奴隷化した後真っ先にお前の国を」
パキッ
六城は王の右腕を折る。
「は……ぎゃあああああ!!!」
「キレてる相手に簡易催眠装置は効かないか……改良するよう言わないとな……次だ」
ペンをしまいつつ王の左腕にも手をかけた。
「ヒィッ!答える!北だ!霊脈が最も強く通っている北の塔にある!」
「じゃあ案内して貰うぞ。まだ足は動くだろう?」
そう言った六城はいつのまにか銀色のロープを手に持っていた。
腕を縛り上げられた王はもはや何もできない。
六城に言われるがまま歩き出し部屋を出る。
部屋には騎士団長の死体だけが残った。
廊下を出ると近衛兵だったものが転がっている。
それを横目で見ながら王は聞く。
「な、なんなのだ、貴様の魔術は」
「魔術? お前らから見たら魔術か。そうだな。この消音器は特別製でね」
玉座の間から少し歩くと使用人達は王の異常に気づき、叫ぼうとする。
しかし、六城は兵を呼ばれるよりも前に彼らの頭を撃ち抜く。
「ほら、発砲時に音が出ない」
「ひっーーーーむぐっ」
叫ぶ王の口を押さえる。
王と六城の通った道の後には死体が点々と転がっていく。
「ん?塔に行くには外に出るのか?」
王がコクリと頷き外に出た。
ドドドドドドドッッッ
その時、巨大な濁音が王城を埋め尽くす。
六城はヘッドセットを操作しアンジェリカに繋ぐ。
「おいアンジェリカ、何が起こったんだ?」
『回収対象の子が魔法を使ったわ。貴方が仕掛けた爆弾の火を消すためにね』
「そうか……。先に彼を回収した方がいいな」
『どうするの?』
「光学迷彩で近づいて確保する」
『了解したわ。気をつけて』
「さて、お荷物には少し黙ってもらおうか」
通信を切った六城は王の口に向かって、"封"と書かれた札を叩きつけた。
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その頃、召喚された少年は唖然としていた。
姫に「体に魔力を巡らせるのですわ」と言われ彼は血液が全身に巡るイメージをした。
そして、水を手から放出しようと力を込めたら呪文を言うことなく水が滝のように流れ出て、あっという間に炎を包み込み鎮火したのだ。
しかしお陰で全員びしょ濡れになってしまった。
「ご、ごめん。まさかこんなになるなんて……」
周囲は静かだ。
しかし、姫がハッとして叫ぶ。
「す、凄いですわ勇者様!」
その一言で周りはざわめき出す。
「まさか無詠唱を使えるとは……!」
「それよりあの威力だ!一瞬で火を消したんだぞ!」
「あ……あはは」
姫に手を掴まれて彼は真っ赤になってそっぽを向く。
彼女のドレスも水に濡れ目のやりどころがないのだ。
「うわぁっ!」
ボシュウウウウ!!
その時、白い煙が彼らを包み込んだ。
「姫っ!」
副団長は姫を守るため彼女を煙の外へ連れ出そうとした。
しかしそれは叶わず煙はその濃さを増し猛烈な睡魔が襲って来る。
「魔法か……?ぐっ……」
姫はすでに眠り込んでしまった。
いや、副団長以外全員が倒れていた。
襲撃者から姫を守らねばと彼は姫に覆い被さる。
薄れゆく彼の意識の中で何者かの影が見えた。
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「転移者回収完了っと」
六城は少年を肩に担ぎ上げた。
そのまま副団長を蹴飛ばし姫に銃口を向ける。
『利生。駄目よ』
「アンジェリカ。何故だ?王は処分するがこの娘が成長したら同じことをやるかも知れないぞ」
『人道管理課から出た新規則よ。あなた会議に出てたでしょう?』
「ああ、そういえばあったな。どんなのだったっけ?」
『"外見及び内面が明確に子供であり且つ異世界転移・転生に於いて重要情報を得ていない場合その殺傷を認めず"……非常時は適用外だけど破ると減点よ』
「異世界転移なんて起こってる時点で非常時だろ……」
『とにかく規則だからその子殺しちゃ駄目よ』
「まぁ目覚めが悪くならないで済むのはいいことだな。後でどうなっても俺は知らないが」
『そしたらあなたの不手際って事で再派遣ね』
「いつか転職してやる」
恨み言を吐きながら六城は王の元へ戻っていった。
「ーーーーっ!ーーーーっ!」
王は銀色の縄でぐるぐるに縛られて隅に放置されていた。
六城は口に貼られていた札を取る。
「これも貴様の魔術か……!?」
「まぁな。正確には魔術じゃなくて呪術だが」
「姫に何をした!」
「何も?目的は回収したし早く魔方陣まで連れてってくれ」
そのまま庭を通り過ぎると小さな塔が見えた。
塔に着くと木製のドアを蹴破り中へ入って行く。
「さて、召喚の間は?」
「地下だ……。そこの階段から下に行ける」
王に銃を突きつけ、高校生を肩に担ぎながら地下へ続く階段に降りていく。
地下には扉があり中に入ると幅5メートル、長さ10メートルほどの部屋があった。部屋に踏み入れると壁の両側面に松明が灯り、奥の祭壇からは青白い光が洩れだす。
「これが今回の魔法陣か」
青白い光は床に書かれていた幾何学模様の魔法陣によるものであった。
李世は扉を閉め、ヘッドセットについているカメラでシャッターを押し写真を撮る。
「この魔法陣はどこで手に入れた?」
「……数ヶ月前に城にやってきた奇跡を起こすという魔導師達によるものだ。小国である我が国を最強にするように頼んだのだ。彼らはみな宮廷魔術師すら理解出来ない不思議な魔術を使った。そうだ、まさしく貴様のように詠唱すらせずにな」
「その魔導師の名前は?」
「わからない……」
「何だと?」
「そうだ!わからない!き、記憶が無い!あいつらの名前は何だったんだ!?」
「……こちら六城。目的を完了した。引き上げてくれ」
彼はヘッドセットを操作し、通信を再開した。
ポケットから黒い箱を取り出す。
『了解。転移システム起動。サルベージを開始するわ』
高校生を床に下ろし、黒い箱の側面についているダイヤルの目盛りを30にする。
『全システムオールグリーン。転移開始まで5.4.3.2.1…』
王は彼らの足元に魔法陣が浮かび上がるのをみた。
王国にある魔法陣と同じような幾つかの円で構成されていたその魔法陣は次の瞬間には消え去り、2人も消えていた。
後に残ったのは王と六城の置いていった黒い箱のみ。
「た、助かったのか……!?」
王が安堵したちょうどその時、黒い箱は六城が30秒後と設定した時間通りに起爆した。
その頃「カルネアデス」本部には六城の姿は無く、
少年のみが帰還していた。
閲覧ありがとうございました。
追記・4/29日改稿しました。




