病の名前
「おいっ! 貴様、何処に行ってたんだ!?」
六城が防衛網に戻ると護衛部隊がそう尋ねた。
その直後、彼らは六城が捕縛した少年騎士達を見て目を丸くする。
「何だこいつらは?」
「これが派遣された王国軍らしいぞ?」
その言葉を聞いて彼らは再度驚いた。
訝しむように六城を睨むが、真実なのだから仕方がないと六城は肩をすくめた。
「……どうする? 」
「とにかく一度屋敷に戻るべきだろう。どちらにせよこの子供達に尋ねる必要がある」
彼らは少しの間そのように話し合っていたが、伏兵の可能性もあると考え六城を含めた数人だけが屋敷へ戻り、残りは防衛網を維持することになった。
「子供達はそれでいいのか?」
少年騎士をずるずると引きずって歩き出すと護衛部隊の1人がそう話しかける。
「一応貧民街を襲おうとしてたしなぁ。魔法でも使われたら厄介だしとりあえず縛ったままでいいだろう」
「そうか」
そのまま無言で歩き、屋敷の前に辿り着く。
「戻ったぞ」
門の前にいる団員にそう話しかけ中に入ろうとすると、彼らは顔を青くして引き止める。
「どうした?何かあったのか?」
「い、今はまずいです。シルヴァ様のお知り合いが」
その一言を聞いて六城はするりと門をくぐり、あっと言う間に屋敷の扉を開いた。
「鳴瀬! 大丈夫か!?」
「先輩!? 避けて下さい!」
ドガァァァン!!
目の前で彼女のメイスが炸裂した。
六城がもう数センチ前に出ていたらその頭はミンチになっていただろう。
「お、お帰りなさい……」
「ああ、ただいま……」
周りの男達が鳴瀬の攻撃にドン引きしている中、苦笑いで六城はそう言った。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
「で?何があったんだ?」
屋敷の中に入って六城は尋ねる。
辺りは鳴瀬がメイスで破壊した跡が残っていた。
「あ〜……えっと、幽霊?が出たので私が祓ってました」
「幽霊?どこからだ?」
「向こうの部屋にいる患者さんからですね」
鳴瀬は反対側のドアを見た。
それを聞いて六城は手を合わせながら半歩下がる。
「南無阿弥陀、南無阿弥陀……」
「いや、まだ生きてますって。シルヴァさんがこれを摘出したら出てきたんですよ」
鳴瀬は粉々になった虹色の破片を見せた。
「何だ?」
「今回の病気の核だそうです。これを体内から取り出し時に幽霊みたいなものが」
その時、バンッと扉を開く音が聞こえた。
中から出てきたのはシルヴァとジュリエッタ。
手に虹色の石を持っており、それを床に置いた。
「3人目だ!頼む!」
「あっ、はい!」
床にめり込んでいたメイスを引き抜くのと同時に、先程の骸骨が現れた。
「UUUウウォォォォォ!!!」
真っ先に反応したのは幽霊嫌いな六城だった。
「ぎゃあああああ!!」
懐から拳銃を取り出すとそれを乱射する。
弾丸は全て命中したがそのまま通り過ぎてしまった。
「やっぱり物理攻撃が通じねぇぇぇ!!」
「落ち着いて下さい!銃をしまって!」
鳴瀬が抱きついてそれを止めようとするが半ばパニック状態の六城の耳には言葉が入らない。
しかし、乱射されたうちの1発が石に命中する。
「グオオオオoooooo!!!??」
半透明の骸骨はその腕を振るって暴れ出す。
「効いてる!?先輩!あの石に当てて下さい!」
六城はそこでようやく落ち着きを取り戻し、銃弾を石に向け放った。
「くそッ硬い!」
石は思った以上の硬さで、弾丸を弾いた。
六城は持っている銃を手から離し、アイテムボックス(偽)からもう一丁の拳銃を取り出した。
六城な片手で撃てる先ほどの拳銃と違い、両手で握りバラバラの方向へ撃ち出した。
「どこに向けて撃ってるんです!?」
「いや、これでいい」
六城は石から視線を離さない。
次の瞬間、放った弾丸の軌道が曲がった。
そのまま弾は全て石に命中しそして砕け散る。
「びっくりした……今のどうやったんですか?」
「視線誘導弾だ。本来はミサイルなんかに使うものだが訓練すれば銃弾でも操れるぞ」
六城は拳銃をしまう。
そこへ隠れていたシルヴァがやって来た。
「戻って来たのか」
「ああ、ところでこの病と石は何なんだ?」
「この病気は……」
「シルヴァ様!大変です!空に怪物が!」
入り口の扉が開き男が飛び込んでくる。
それと共に別の爆音が耳に届いた。
3人は顔を見合わせる。
ババババババババババババ
「この音は……!」
「ヘリの音だな。見に行くぞ」
そのまま扉へ向かい外へ出た3人をヘリのサーチライトが出迎えた。
風が彼らを撫で付け髪を乱れさせる。
『帰ってきたぞ六城!』
「医療庁の大型ヘリ4台に特殊艦だと!?何でそんなものが居るんだ!?」
無論その声はヘリにいる黒河に届かない。
彼女は自慢にこう続けた。
『そのーー何処ぞの馬鹿が手を加えた"魔力増結石化症"の治療にな!!』
閲覧ありがとうございました。
久々の投稿ですがスローペースでもちゃんと投稿していきたいと思います。
では次回もよろしくお願いします。




