合流
「帰ってもらいたいんだが」
「ハッ。嫌なこった」
「あんた戦闘能力無いだろう」
「だからテメェらについてきたんだろうが」
「俺達ですら助けられない状況になったらどうする」
「見捨てろ」
「馬鹿言え。俺が殺されるぞ、そんなことしたら」
六城と黒河の応酬が続く。
「最低限の武装と戦闘訓練は受けてる。安心しろ」
黒河は腰についている銃らしきものを見せる。
「それにだ。さっき死体を見たがあれは伝染性がある。お前らの救急道具ですら対処出来なかった場合私がいれば問題無いだろ?」
顔を近づけ黒河はそう言った。
「いや、その場合は元の世界に戻って治療受ければいいだけだから必要ない」
ピーピーピーとヘッドセットから音が鳴る。
『ごめんよ? それなんだけどね、戻せなくなっちゃった!』
「富士見!? どうゆう事だ!」
『雛ちゃんを無理に転移させたせいで内部の装置が故障しちゃってね。今エンジニアを総動員させてるから直るまで数時間はかかるかな』
「なっ……」
「ハハハハハ!!それじゃあ連れてくしかねーよな。ほら、さっさと行くぞ」
黒河はそう笑って歩き出そうとする。
「待て! まだ連れて行くとは……」
「あの、先輩。雛さんを連れて行った方がいいと思います。置き去りは不味いですし、何より私達の任務はシルヴァさんの安否確認です。ここに留まる訳にはいきません」
鳴瀬の言葉が決め手になったのか六城は
「…わかった。だがなるべく自分の身は自分で守れ。
あと俺達の許可なく行動するな。装置が直ったらすぐ帰還すること。いいな?」
と最後には同行を許可した。
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「まぁ全部嘘なんだけどね」
オペレータールーム。
様々な機械群が色を放ち存在するその部屋では複数人の職員達が異世界に転移したエージェントを日々サポートしている。
「いやー、当番のオペレーター達が戦闘訓練を受けてなくて助かったね。雛ちゃんを例の異世界に送り込むことはできた訳だし、六城君には悪いけどもうしばらくお守りをしてもらおうかな」
しかし今日は1人の男しか仕事をしておらず、他のオペレーター達は床に転がっている。
「大体あの程度で機械が故障する筈ないじゃないか」
胡散臭い笑みを貼り付けながら、富士見はそう呟き機械を弄っていた。
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「おぉ! よく燃えてやがる!」
「喋るな! 舌噛むぞ!」
激しく燃える門の上を影が飛び越える。
六城と鳴瀬。そして肩に担がれた黒河だ。
「町全体は燃えてないみたいだな。ところどころ煙が立っているが」
着地した六城が肩に担いでいた黒河を降ろす。
「お姫様抱っことは言わんが背負って欲しかったんだがな」
「人の仕事に介入する奴なんざそれで充分だ。そもそもあんたがついて来なけりゃ問題なかった」
「チッ。まだ言ってるのかよ。悪かったって」
鳴瀬が近づき六城に囁く。
「あの、先輩。変装とかしないでいいんですか?」
「まぁ絶賛大混乱中みたいだから大丈夫だろ。黒河に関しては装備も無いし」
『それなんだけどね。今そっちに向かってる集団がいるよ。数は20くらい』
そう富士見が言った瞬間に路地から剣、鉈、矛、鎌などで武装した集団が現れた。
「貴様ら何者だ!! 国が雇った魔法使いか!? シルヴァ様は渡さぬぞ!」
その中でも立派な剣と盾を持つ男が叫ぶ。
「さて、どうするかね」
六城の手には既に拳銃が握られている。
「待ってくれ!!」
慌ててそう叫ぶ声が集団の更に後ろから聞こえた。
「シルヴァ様!?」
「通してくれ。彼らは私の知り合いだ」
屈強な男達の間からシルヴァが現れる。
「やぁ。3日と言っていたが20日も遅刻するとはね」
「よぉ。3日後に迎えに来ると言ったよな?何で居なくなってんだ?」
「「ん?」」
2人は同時に首を傾げた。
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『えーと、多分だけどね?時間軸が大きくズレてるんだ。しかも結構特殊な形で』
白く大きな屋敷の中でシルヴァ、ジュリエッタ、鳴瀬、そして六城が立って富士見の話を聞いていた。
ジュリエッタは知らない人の声が聞こえると驚いていた。
「どういうことだ?」
『この世界と僕らの"現行世界"は元々かなり時間にズレがあるんだ。しかし元現行世界人のシルヴァ君が入り込んだ。このタイミングで2つの世界間で繋がりが出来たんだ。時間軸は並行となり同じ時間の流れを辿った』
全員がシルヴァを見た。
『でもシルヴァ君がこの世界に魂が馴染んで繋がりは薄れていった。ここでまた時間がズレる』
「俺達が居た時は時間のズレなんてなかったぞ。向こうの1時間はこっちでも1時間だった」
『うん。君達が派遣されて再び時間の流れが並行になった。帰還でまたズレたけどね。送ったナノマシンが機能しない訳だよ。要するに今は君達が時間の流れを同期させる楔ってことだ』
「なるほどな。だから俺達の1日はこの世界だと20日に相当するのか」
「で、この状況は何だ?」
黒河が屋敷の中を見回す。
この屋敷はシルヴァが設立した医療団の本部だったらしい。
シルヴァが逮捕され、医療団は解体されたがこの騒動でメンバーが再集結して治療に当たっており先ほどの男達も貧民街から選ばれた医療団の護衛であった。
「新しい病人だ!東区にはまだまだいるぞ!」
「手が足りない!こっちに何人か回せ!」
「薬が切れる。薬剤班は早く補充を!」
「吐血だ、触れるな!除染班は浄化魔法急げ!」
何名かの頭まで布で覆われ白い服を着た人が呪文を唱える。一瞬光に包まれた床は赤色から元の白色へと戻った。
白衣を着た人間に次々と運ばれて来る病人達。
大なり小なりみんな血を流している。
「……全部同じ病気か。治療法は?」
「私が作った薬で進行が初期〜中期の人間は治せる」
そう言われて渡された紙を黒河は読んでいく。
「この人は誰だ?」
シルヴァが六城に尋ねる。
「ウチの医療部門のトップ」
六城が返事をすると同時に黒河は紙を突き返す。
「確かにこのレベルなら薬で治る。だが、末期患者は治せねぇぞ?手術を施さなければな。お前は何の医者だ?薬剤師じゃねぇよな?」
「勿論だ。手術は私が施す」
「お前に出来るか?失敗したら患者は死ぬぜ?」
「今やらなければどちらにせよ死ぬんだ」
シルヴァはそう言って屋敷の奥へツカツカと歩いていき手術の準備ができているか部下に確認する。
「おい!」
「何だ」
呼び止めた黒河に向かって振り返る。
「所詮異世界の人間だろう? 何故そうまでして助けたがる」
「医者がそれを言っては終わりだろう。それに、元の世界で私はこれほど頑丈な身体に恵まれなかった。恩返しではないが……これは私なりの意地だよ」
そう笑ってバタリと扉が閉まった。
「ふむ……いいな、欲しい。頑丈なら死ぬ事もねぇだろ。富士見!」
『はいはい』
富士見が返事をし、青白い光と魔法陣が黒河の足元に現れる。
「魔法陣!? 待て黒河! 何をするつもりだ!」
それには答えずニヤリと嫌な笑みを浮かべ、
「お前はこの屋敷を守れ」
とだけ六城に言って黒河は帰還した。
お久しぶりです。
大筋は出来てるんですが話が繋がらないので時間がかかりました。
また次回もよろしくお願いします。
追記・5月14日改稿しました。




