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銀行員な俺の異世界攻略  作者: 黒猫アイス
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エピローグ『現実の終わり』

どうも、先日近くの本屋までラノベを買いに行ったところ、帰り道に突如現れた水たまりにビニールごと落としてしまった黒猫アイスです。初投稿です。よろしくお願いします。

今日は厄日だ。

俺は電車に揺られながら、誰に聞いてもらうでもなく、また本心から嘆いている訳でもなく、ただ自然とそう思った。


 今日は帳簿の残高が1000円合わなかった。それだけで、社員総出でミスを確認し、どこかに金が落ちていないかを手の空いている社員で探し出し、貴重な時間を無為に過ごす羽目になる。そんなことはこの業界で働いていれば普通にあることだが、さっさと帰ってオンラインゲームをしたい俺にとっては筆舌に尽くしがたい苛立ちが、頭の中を占拠していた。

 特に今日は期間限定イベントがあって、こんなつまらないことで足止めを食らっていく暇など本来はない。

が、周りを見ると他の銀行員たちは何か憑き物に憑かれたんじゃないかと思うくらいに、ファイルの間やデスクの下、引き出しの中まで思い思いに探索しているため、帰るに帰れない。

 銀行で差額が出ると、過誤金報告書という非常に不本意な物を管轄部署に報告しないといけなくなる。

これが出ると、過剰金の場合はともかく、不足金が出た場合は支店長の機嫌がとても悪くなる。

 最悪金融庁からお叱りを受けることもあり、そうなると銀行内のスタッフ間の空気がとてつもないことになるので、それは避けたいと、全体から見たらごく微量の金を誰もが必死になって探している。


 するとどこからか「ありました!」と声が上がり、緩やかにその場の空気が弛緩していく。

ここで見つからなければ、支店長から「誰の責任だ!」と詰られるのはわかっているから、先ほどまではかなり空気がピリピリしていた。

胸をなで下ろしながら、もともと早く上がるはずだった俺は他の職員に頭を下げた。「お疲れ様でした」


遅い時間の電車はまるで仕事帰りの疲れが滲んでいるように見える。白とも黄色ともいえない味気ない車体を揺らしながら進んでいく様子は、仕事を終えた人々の疲れが、電車に伝染しているようにしか見えなかった。


 俺は近隣にマンションがある博多駅で降りる。ホームの新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込み、帰路に着く。

 早く帰ってイベント消化しなきゃ、そんな使命感にも似た感情を燻らせつつ、自転車に跨ると、できる限りのスピードで漕ぐ。

ぐんぐんスピードは上がっていく。

この調子で行けば、マンションはすぐだ。


 しかし俺は、自転車を漕ぐことすら忘れるような事態に直面した。

少し先の交差点に、明らかに飛ばしすぎなトラック、さらにその数十メートル先にはスマートフォンを凝視しながら横断歩道を渡る女の子の姿。

止まっていた足が、再び動き出す。

先ほどよりも早く、強くペダルを漕いでいく。

 やがてトラックより先に少女の元へ辿り着いた俺は、自転車を素早く飛び降り、その背中を突き飛ばした。

トラックの進路から外れた様子を見て、正直に言うとめちゃくちゃ安堵した。


直後、俺の体をとてつもない衝撃が襲った。

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