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第6章ー11

 少し話を戻す。


 独がノルウェー(、デンマーク)侵攻を、3月1日に決断した後、独海軍は、少しずつ駆逐艦以下の小型艦艇を、ユトランド半島より西にある、ヴィルヘルムスハーフェン等の軍港に分散して戻した。

 表向きは、独空軍との間で防空協力体制の構築が完了し、バルト海沿岸に退避する必要が無くなったためという名分を独海軍は掲げたが、軽巡洋艦以上の大型艦艇が、ユトランド半島より東に全て残っている以上、日本海軍を恐れたためだという風評を消すまでには至らなかった。


 そして、4月初めから、バルト海沿岸のキール等の軍港にいた独海軍の軽巡洋艦以上の大型艦艇は、相次いで、ユトランド海峡を通過し、北海方面へと移動していった。

 独海軍は、この大型艦の移動については、沈黙を保った。

 そのため、英仏の新聞等のマスコミの多くが、北大西洋において、水上艦邸による大規模な通商破壊戦を展開するために、独海軍の大型艦艇は移動したのだ、という観測記事を載せた。


 だが、実際には、全く違う目的、ノルウェー侵攻のために、独海軍の大型艦艇は、移動していたのであり、更に(直接、航空偵察により確認できたのは、極少数だったが、)、独海軍の駆逐艦以下の小型艦艇も、英仏日米海軍の監視の目を掠めて、ノルウェー侵攻のために、バラバラに出航し、目的地へと舵を取っていた。


 だが、問題は、独のノルウェー侵攻作戦の全てとは、さすがに言わないが、その多くが、独軍の暗号解読や通信量解析によって、英仏日米の軍情報部には掴まれていたという事だった。


 そのために、英米日の三国の空母部隊は、完全にノルウェー侵攻作戦に赴く独軍を殲滅する準備を整えて、準備万端、手ぐすねを引いて待っている状態だった。


「三献の茶で、存分に独海軍のおもてなしをしよう」

 角田覚治少将と山口多聞少将は、英米の空母部隊司令官の面々に、手分けをして口説いた。

 英本国艦隊司令長官のフォーブス提督らは、その意味が分からずに困惑した。


「英空母部隊が、ナルヴィクに上陸する独軍の部隊を攻撃する。米空母部隊が、トロンヘイム等に上陸する部隊を攻撃する。日本空母部隊が、オスロ等に上陸する独軍の部隊を攻撃するのだ。そして、独本国に帰還しようとする独海軍の部隊に、執拗に追撃を掛けて、全滅させてしまうのだ」

 角田、山口両提督は、熱心に英米の提督を口説いた。


 英海軍は、そう上手く行くだろうか、と疑心暗鬼にかられたが、米海軍、特にハルゼー提督らは、角田提督らの提案に大乗り気になった。


「面白い提案じゃないか」

 ハルゼー提督は、角田提督の肩を叩きながら、逆に口説いた。

「米英海軍が、ナルヴィク等、北大西洋の独軍を空襲で全滅させてしまうかもしれんぞ。日本海軍が沈める船を遺すつもりはないが、それでもいいか」


「本当にやってくれるのなら、ありがたい」

 角田提督は言った後で、返した。

「こちらは、海兵隊の支援をせねばならないので」

「こいつ。言いやがって」

 ハルゼー提督は、大笑いした。


 米海兵隊の規模、準備は、日本海兵隊以下だ。

 それに、米海兵隊は、太平洋方面へ向かっている。

 米海兵隊は、大西洋方面にはいないのだ。

 更に、米陸軍も、欧州には(諸般の事情から)いないといっても過言ではない。

 つまり、海軍しか、今のところは、米軍は欧州には、いないのだ。

 一方、日本軍は、海軍と海兵隊を、欧州に送り込んでいる。

 角田提督の言葉は、見事にハルゼー提督へのお返しになった。


「良かろう。米海軍の空母部隊の力を見せつけてくれよう。日本海軍は、海兵隊支援に専念すればいい」

「獲物を横取りするかもしれませんが」

「できるものならな」

 ハルゼー提督は、角田提督とやり取りをした。

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