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第6章ー5

 何故、独海空軍は、目をむく羽目になったのか。

 それは、独陸軍が、ある意味、海空軍にノルウェー侵攻作戦の全責任を丸投げし、陸軍は一切責任がない、と主張しているという底意を敏感に感じ取ってしまったからである。


 独陸軍は、ポーランド侵攻作戦、特にワルシャワ攻防戦における思わぬ損害に、正直に言って、困っている状況に、1940年春先のこの頃はあった、といっても過言ではなかった。

 ポーランドを、独ソ両国で挟撃することで、速やかに崩壊させ、返す刀で、英仏軍の独侵攻を跳ね返すという、第二次世界大戦当初の大戦略が、ワルシャワ攻防戦の思わぬ損害の結果、崩壊していたのである。

 この当時、英仏両国が、日米軍の来援を待ってから、独本土侵攻作戦を行おう、と及び腰になっているお陰で、西部戦線が平穏になっている、と言っても間違っていない状況だったのである。


 慌てて、独陸軍が、戦時動員体制を強化し、ポーランド侵攻作戦の損害を癒している最中に、ノルウェー侵攻作戦を検討する羽目になったのである。

 独陸軍としては、一兵でも多く、対仏戦に投入したい状況下においての話だった。

 何しろ、対仏戦においては、海軍は言うまでもなく、空軍でさえ脇役であり、独陸軍が全責任を負うと言っても間違いではない。

 そういった状況からすると、対仏戦の戦力を割かざるを得ないノルウェー侵攻に、独陸軍が非協力的になるのは、組織内部の論理としては、当然のことだった。


 何しろ、ノルウェー侵攻は成功した場合、独海空軍の大成果になるのが目に見えているのだ。

 自分が積極的にノルウェー侵攻に協力したら、他人、独海空軍の成果。

 そして、自分の本来の任務、対仏戦に支障が出て、上司(ヒトラー)から下手をすると、無能の烙印が押されるのである。

 独陸軍が、非協力的になるのは、利己的と言われようと、当然なところがあった。


 だが、独海空軍からすれば、独陸軍が非協力的にも程がある話だった。

 1個軍団ということは、精々3個師団しか、独陸軍はノルウェー侵攻に投入しないということになる。

 確かにノルウェー軍だけなら、充分な戦力と言えた。

 しかし、日本海兵隊6個師団が、ノルウェー軍に加わるのが目に見えているのだ。

 更に、パットン将軍率いる米第1軍も、ノルウェーに投入される可能性が大だった。

 米第1軍の規模は、正確には不明だが、軍という以上、どう少なく見積もっても、4個師団以上なのは間違いない。

 そんな独陸軍の兵力(3個師団)で、日米軍10個師団以上が投入されるノルウェー侵攻が成功する訳がなかった。


 だが、独陸軍は、強硬に主張した。

 独海空軍が、ノルウェーの制空権、制海権を確保すれば、済む話であり、逆に言えば、幾ら独陸軍の兵力を増やしても、ノルウェーの制空権、制海権確保に、独海空軍が失敗したら、おしまいだと。

 そして、その独陸軍の主張も、間違っているとは言えなかった。

 それこそ、独陸軍が100個師団を、ノルウェー侵攻に投入しようと、ノルウェーの制空権、制海権を英仏米日に抑えられては、独陸軍が投入した大兵力は、無意味と化してしまうからである。


 最終的に、ヒトラー総統自らの調整によって、ノルウェー侵攻に投入される独陸軍の兵力は、6個師団等ということになるのだが。

 その兵力の中に、装甲師団等は絶無で、5個歩兵師団、1個山岳師団等で、ノルウェー侵攻に陸軍は編制され、投入されることになった。


 もっとも、当時の独の戦備からして、装甲師団等を渡洋侵攻させる能力は、独には、ほとんど無かったというのも間違ってはいなかった。

 だが、無謀な渡洋侵攻作戦をおこなう羽目になった将兵にしてみれば、また別の想いがする事態であった。

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