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第1章ー4

 1939年8月23日に行われた日本政府の、独軍がポーランド侵攻の準備を整えている、との声明の発表は、世界中に衝撃を与えた。

 日本政府のこの発表に対して、ヒトラー率いる独政府は、事実無根であり、我が独政府は、世界平和を希求している、と反論した。


 だが、ポーランド政府も、我が国の数々の情報収集により、独は我が国への侵攻計画を実動させる準備を整えつつある、と判断せざるを得ない、と日本の声明に続いて、声明を出し、更に、独軍の侵攻に対処するために、ポーランド全軍の総動員令を発動する旨を発表した。

 ポーランド政府のこの発表に対し、独政府は、ポーランドは独を不当に侵略する準備を始めた、我が国はソ連等、平和を希求する世界各国と協調して、ポーランドの侵略に対処する、と反論した。


「物は言いようだな」

 事実上、ポーランド全軍の総司令官を務めているリッツ=シミグウィ陸軍元帥は、部下であるフォン=ボック陸軍大将に、ワルシャワの参謀本部内で、8月24日に話しかけていた。

「全くですな。我がポーランド軍が総動員を完結しても、ドイツ軍の方が、質量共に上回っているのに。更にソ連軍まで我が国を攻めようとしていているとあっては」

 フォン=ボック大将は、そこで言葉を切って、笑みを浮かべながら、言葉をつないだ。

「私としては、ポーランド陸軍軍人として、できる最後の義務を果たすつもりです。いや、全ての軍人ができる最後の義務と言うべきですかな」


「そこまでのことをする必要はあるまい。君は、独軍内部に旧友がいるだろう」

「私は、帰るところの無い兵士ですよ。私を裏切った祖国、ドイツに今更、帰るつもりはありません。私の祖国は、今やポーランドです」

 リッツ=シミグウィ元帥の問いかけに答えるフォン=ボック大将の口調は、楽しげであると共に、どこか哀調を帯びていた。


 フォン=ボック大将は、ポーランド・ソビエト戦争において、独の赤化を防ごうと、ポーランドと共闘したドイツ人義勇兵の一員だった。

 だが、歴史の流れは残酷で、ラパッロ条約により独とソ連が修好した結果、ポーランドと共闘したドイツ人義勇兵は、戦争犯罪者として、独ソ両国から追われる身となり、多くの者が、ポーランドに亡命していたのである。

 その中には、ヒンデンブルク独元大統領の義理の甥にあたるレヴィンスキー中将(現在)もいる。


 自分達が、祖国独を裏切ったのではない。

 祖国独が、自分達を裏切ったのだ、とフォン=ボック大将やレヴィンスキー中将らは信じている。

 それ故に、ポーランドに殉じる覚悟を、彼らは固めていた。


「君が、そこまでの覚悟を固めているのならば、それを尊重しよう。しかし、祖国を捨てねばならないのはつらい話ではあるな」

 リッツ=シミグウィ元帥は、渋い顔をしながら、そういわざるを得なかった。

「仕方ありません。我がポーランド軍単独では、独ソ両国軍の攻撃を防ぐことはできません」

 フォン=ボック大将の口調も、つらいものだった。


 独ソ両国から、ポーランドへの侵攻作戦が展開されると予測される現在、ポーランド軍は苦渋の決断を行い、その準備を進めている。

 ポーランド軍が健在ならば、祖国の国土を速やかに回復できるはずだ、という考えから、ルーマニア等に対して、ポーランド軍の越境退却を求めている。

 越境退却を行った場合、武装解除等せねばならない、だが、軍人が生きていれば、英仏米日から兵器を再提供され、速やかに軍を再建できる。


 ルーマニア等へ退却したポーランド軍兵士は、人道的観点もあり、フランスへと送られるように手配が進んでいる。

 そして、フランスで再編成を完結したポーランド軍は、英仏等と共闘する予定になっていた。

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