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第6章ー4

 この通説は、それなりに正しいことを述べている。

 だが、それは一面の真理を語っているに過ぎない。

 ファルケンホルスト大将が、ノルウェー侵攻作戦の概要を作る羽目になったのは、独陸海空三軍の対立の結果という側面があるのを、語っていないからだ。


 言うまでもないことだが、第二次世界大戦において、独の陸海空三軍内は、円滑に行っていたとは、とても言えず、お互いに対立していた、というのが現実である。

(もっとも、この辺りは、日英米等も陸海軍等の間柄は円滑に行っていたとは、とても言えず、独と五十歩百歩と言われても仕方ない、のは否定できない話ではある。)


 そういったことから、独は、ヒトラー総統が音頭を取って,OKW(国防軍最高司令部)を、第二次世界大戦突入前に創設し、ヒトラー総統自身が、国防軍最高司令官に就いていた。

 これは、ヒトラー総統自身が、国防三軍を直接指揮するために設置された、というのが主な目的なのは間違いないが、独の陸海空三軍の対立を、ヒトラー総統によって調整するため、というのも否定できない目的ではあった。

 とはいえ、OKWに対して、OKH(独陸軍総司令部)等は、微妙な態度を示し続け、第二次世界大戦終結まで完全に従順とは言えない態度を示し続けた。


 さて、ノルウェー侵攻作戦だが、言うまでもなく、独本土から行うには、渡洋作戦である以上、陸海空三軍が、密接に協力することが必要不可欠だった。

 従って、当然のことながら、OKWがノルウェー侵攻作戦の音頭を取ることになった。

 しかし、それはOKHにしてみれば、ノルウェー侵攻作戦については、OKWの完全指揮下に入らねばならない、ということで面白くない事態だったのである。


 そういったことから,OKWが、OKHに対して、ノルウェー侵攻作戦の概要を作るための司令部を、独陸軍から適宜、選ぶように依頼が事前にあったので、半ば意趣返しとして、OKHが、第21軍団司令部を差し出したというのが、隠れた真実であった。


 いうまでもないことだが、軍団司令部では、幕僚等の数も少なく、作戦計画の詳細を詰めるのは困難になってくる。

 そして、ファルケンホルスト大将は、1939年10月に大将に昇進したばかりであり、軍司令官になるのには、経験が不足していた。

 つまり、ノルウェー侵攻作戦は、陸軍としては、軍団規模でやってくれ、と暗黙の意思表示が、最初からあったのである。


 確かに、ノルウェーの当時の人口は、約290万人といったところであり、いわゆる根こそぎ動員まで行ったとしても、10万人の兵力を整えることさえ、困難だった。

 実際、一般的な日本語の軍事歴史書等では、師団と翻訳されていることが多い、ノルウェーの部隊であるが、より細かく見るならば、軍管区隊と呼ぶべきであり、それが、ノルウェー全土に6個配置されていた。

 その内容は、歩兵2個連隊に支援部隊を付けたもので、他の国なら、よくて軽師団、下手をすると旅団と呼ばれる規模だった。

 各軍管区において、最大規模の動員が行われたら、士官学校生まで動員され、3番目の歩兵連隊が編制されることになっていたが、それは、とても無理だ、とノルウェー軍自身が判断する有様だったのである。

 しかも、中立政策のために、完全な平時編制に各軍管区隊はあり、軍服を着た陸軍の軍人は、2万人に満たない規模というのが、1940年春のノルウェー陸軍のお寒い現状だった。


 だから、我が精鋭なる独陸軍をもってすれば、1個軍団もあれば、ノルウェーは征服できるというのが、OKHの主張であり、そういったことから、第21軍団司令部がOKWへと差し出されたのである。

 独海空軍は、この無謀さに目をむいた。

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