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第4章ー18

 何でこうなっていたのか?

 米軍の攻勢は、事前計画では、10個師団で行われることになっており、最初に6個師団をフリーデンダール将軍が指揮して、ソ連軍の前線を突破、後続の4個師団をグルナート将軍が指揮して、更なる戦果拡大を目指すことになっていた。

 ところが、その攻勢は、いきなり躓くことになった。


 素直に、日本軍が蓄積してきた戦訓等の提供を、事前に米軍が受ければ良かったのだが、マッカーサー将軍のプライドが邪魔をして、これまでの自分達がやってきた研究で充分だと拒絶してしまったのである。

 また、米軍の豊富な物資を警戒したことや、鴨緑江方面から奉天へ向かう経路は山岳地帯であり、自動車、機械化部隊を十分に活用しにくい地形だったことから、ソ連軍が、日本軍に向けた部隊よりも、相対的にだが精鋭部隊を、米軍がいる遼河方面に展開していたことも大きかった。

 そして、第一次世界大戦終結後、このような大作戦を米軍が行ったことが無かったのに対し、ソ連軍は、第二次世界大戦勃発後、半年間の実戦経験を積んでいたことも、この作戦の明暗を分けた原因だった。


 3月1日に開始された米軍の攻勢は、ソ連軍の効果的な反撃により、逆に一部では、押し込まれる始末になった。

 特に酷かったのが、フィリピン師団(名称からすると、フィリピン軍の師団のようだが、フィリピンに駐屯していたことから、そう命名されていただけであり、実際には米軍の正規師団。ただ、士官、下士官は、米国人のみで占められていたが、兵の約8割は、フィリピン人の現地志願兵から成っていたため、ソ連軍の反撃に対処できなかったのでは、とされている。)であり、ソ連軍の自動車化狙撃師団1個の逆襲により、退却どころか壊走した、と米軍の公式報告書にまで記載される有様だった。


 慌てて、日本軍に米軍は助けを求め、戦艦「高雄」以下の艦砲射撃による支援まで仰いで、何とかソ連軍の反撃を食い止めることができた。

 だが、これによって、米軍の攻勢は食い止められてしまった。

 そして、奉天を日本軍が占領したことにより、自発的に遼河方面のソ連軍が退却したことから、米軍は攻勢を再度、行うことができ、奉天近郊で日米両軍は握手をすることができたのだが。

 既述のように、米軍のプライドは、ズタズタになったという訳だった。


 当然のことながら、この敗戦の責任を誰が負うのか、ということになる。

 本来から言えば、マッカーサー将軍が取るのが筋だった。

 だが、米陸軍参謀総長まで務めた著名人に、いきなり責任を取れ、というのも話が大きくなりすぎる。

 そういったことから、最初の攻勢を実行して失敗したフリーデンダール将軍が、その標的に祭り上げられたのだった。


 そして、フリーデンダール将軍は、マッカーサー将軍に散々、罵倒された末、司令官を解任されて、日本に異動することになった。

(なお、マッカーサー将軍が怒ったのは、フィリピンで手塩にかけて育てあげたフィリピン師団が、初陣で壊走したこともあったという。)

 ちなみに、ルーズベルト大統領は、フリーデンダール将軍を江田島に送り給え、とまで言ったが、さすがに日本海軍(より正確に言えば、海軍省)が嫌がり(何で、陸軍の将軍を、海軍が受け入れねばならないのだ?)、参謀本部が、フリーデンダール将軍の新たな勤務地になって、日米両軍の連絡役になった。


 更に、ほとぼりが冷めた数年後、有力者になったアイゼンハワー将軍の根回しで、フリーデンダール将軍は米本国に戻ることができ、敗戦経験を生かして教育部隊で功績を挙げ、更に調査により、名誉を回復した上で中将として第二次世界大戦後に退役することになるのだが、それは先の話である。

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