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第4章ー16

 このような紆余曲折はあったものの、1940年3月1日を期して、日米両軍を主力とする反攻作戦は発動された。


「鴨緑江を渡河し、奉天を目指せか」

 命からがら後退戦闘を行い、やっとの思いで、鴨緑江を渡り、生き延びていた島田豊作大尉は、第5師団所属の戦車大隊の戦車中隊長の1人として、反攻作戦に参加することになっていた。

 そして、この作戦に参加する自らの乗る戦車に、島田大尉は複雑な思いを抱いていた。


「100式重戦車。我が陸軍が開発した戦車でないのが、何とも皮肉なものだ。そして、この戦車が、半年前にあればなあ。部下の多くが生きてこの場にいただろうに」

 島田大尉は、戦闘開始前に不吉なことだ、と思いつつも、涙を浮かべざるを得なかった。

 日ソ開戦以来奮闘してきたものの、最終的には命からがら後退して、鴨緑江方面に展開している第5師団以下の6個師団の将兵を、心理的に支えるために、日本海兵隊から陸軍に提供された100式重戦車は、全部で120両程しかなく、中隊編制で、各師団に分属された。

 第5師団には、1個中隊分、18両の100式重戦車が与えられ、歴戦の島田大尉が、その中隊長に任命されたという次第だった。


 第5師団は、この重戦車中隊を、文字通り、戦場の切り札として使うつもりだった。

 鴨緑江から奉天へ向かう経路は、山岳地帯が大半を占めている。

 歩兵部隊を先頭に立て、敵が強力な陣地を構えていたら、戦車を前に繰り出して、蹂躙していく。

 100式重戦車を破壊するのには、75ミリ以上の野砲、乃至は高射砲を使うしかないだろう。

 そして、そんなものを前線部隊に配備する程、ソ連軍に余裕があるとは思えない。

 100式重戦車を提供された他の5個師団も、大同小異の運用法を行う予定だった。


 実際、日本軍の思惑通りに、いやそれ以上の快進撃が、鴨緑江方面では行われることになった。

 100式重戦車は、ソ連兵からしてみれば、「街道上の怪物」だった。

 対戦車ライフルどころか、45ミリ対戦車砲によっても、100式重戦車は、完全破壊できないのだ。

 履帯や動輪に、45ミリ対戦車砲の射撃を側面から直撃させ、足止めするのが基本的に精一杯だった。

 その報復として、ほぼ即座に履帯等を破壊することに成功した45ミリ対戦車砲は、100式重戦車の主砲射撃で破壊される。

 自分の武器が、基本的に全くの役立たず、とあっては、兵の士気は急降下する。

 島田大尉は、開戦以来の鬱憤を存分に晴らすことが結果的にできた。

 そして、鴨緑江方面の日本軍は、日露戦争時の黒木将軍率いる第一軍を彷彿させる快進撃を行った。


 金州方面からの日本軍の攻撃も快調に行われた。

「据え物斬りは面白くないですな」

「仕方ない。これが我々の仕事だ」

 連合艦隊旗艦、戦艦「高雄」の艦橋では、砲術長、黛治夫中佐のボヤキを、艦長の大西新蔵大佐が宥め、その後ろでは、連合艦隊長官の嶋田繁太郎中将が、苦笑いしながら、それを聞いた。

「それでは、号砲を放ちます」

 黛中佐が号令をかけた。


「高雄」、「扶桑」、「山城」、「金剛」、「榛名」の5隻の戦艦は、ソ連軍陣地に対して、艦砲射撃を浴びせた。

 16インチ砲9門、14インチ砲40門の一斉射撃である。

 射程内にあるソ連軍陣地は、壊滅的打撃を受けた。


 ソ連軍としては、艦砲射撃の射程内に陣地を築きたくなかったが、築かないと、旅順、大連方面への進撃が困難になるし、スターリン等から、敗北主義者として睨まれる危険があったために築くしかなかった。

「一刻も早く奉天へたどり着くぞ。米軍より先に我々が奉天を占領するのだ」

 西住小次郎大尉は、号令をかけ、99式戦車を指揮して、機甲部隊の先陣を切って、進撃を開始した。

 この世界では、1940年に制式採用になった兵器等について、史実と似たように感じで、日本陸空軍では100式、海軍海兵隊では零式と呼称しています。

(どちらかに統一しても良かったのですが、この方がそれっぽいと考えました。)


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