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第4章ー8

 そういった会話を京城で、板垣征四郎中将が部下達としている頃、旅順への司令部移転を完了した関東軍内部では、司令官である小畑敏四郎大将(1940年1月に、陸軍大将に昇進)が、参謀長である樋口季一郎中将らと共に、来春の満州における反攻計画を立案していた。


「取りあえず、米軍については、遼河以西からの反攻に投入されるという前提で考えます。尚、その兵力ですが、米軍10個師団を投入するという前提でよろしいでしょうか」

 関東軍司令部の幕僚の一人が確認した。

「不確定な数字で、実際は、もっと増えそうだが、それで考えよう」

 樋口中将が了解の声を挙げ、その横では、小畑大将が頷いた。


「そして、我が関東軍に与えられている兵力ですが、来春の時点で、機甲師団5個、歩兵師団17個という前提でよろしいでしょうか」

「それでいい。梅津美治郎陸相が、その点については、確約している。共産中国軍が大規模な反攻を試みた場合、兵力不足になる中国派遣軍司令官である岡村寧次大将には、退却の許可も出ている」

 続けての幕僚の確認には、小畑大将が、直接、声を掛けた。


 小畑大将は、想いを巡らさざるを得なかった。

 陸軍士官学校同期でもある岡村大将は、海兵隊を全て引き抜かれ、更に、中国内戦介入によって、緊急動員された師団(日本陸軍内の通称、丙師団)12個にまで、指揮下の部隊を減少させている。

 こんな質量共に低下した部隊では、中国本土の戦線維持に苦労して当たり前だ。

 自分でさえ、退却許可を求めるだろう。


(なお、丙師団というのは、中国の占領地帯の治安維持のために臨時編成された歩兵師団に対する、日本陸軍内の半ば隠語である。

 基本的に独立歩兵大隊9個、独立野砲兵3個等を基幹とする師団で、独立旅団司令部3個が隷下にある。

 治安情勢等に応じ、独立旅団の指揮下にある大隊が変わる等の特徴があり、治安維持任務等には有用性が高かったが、その代り、攻勢等の任務には有用性が低かったため、基本的に後方任務に充てられた。)


「そして、いわゆる満州国軍20個師団があります。ただ、どの部隊が、中国本土に展開して、中国派遣軍と協力するのか、それとも、満州奪還に向かうのか、は蒋介石の胸先三寸で、不確定要素が高すぎます」

 幕僚は、口調の中に不安を忍ばせた。

 小畑大将や樋口中将も、(内心では、その幕僚に全く同感の想いがするだけに)その点については、黙って肯かざるを得なかった。


 満州国軍は、ソ連軍の満州侵攻により、大打撃を被っていた。

 小畑大将らは、強硬に反対したが、少しでもソ連軍の侵攻を遅らせたい蒋介石ら満州国政府首脳は、中国本土の領土確保の任務に当たっていた部隊まで満州に向けてしまい、各個撃破の好餌にしてしまったのだ。

(山下奉文中将らの機甲軍団を、日本軍も白城市に向けているではないか、という指摘(実際、当時の蒋介石らもそう主張して、自分達の行動を正当化している。)があるが、機甲軍団は、補給部隊に至るまで自動車化されており、機動力が高く、退却時にソ連軍の追撃を振り切ることができたのに対し、満州国軍は、ほぼ完全な徒歩歩兵部隊と言える存在で、機動力が低く、退却時にソ連軍の追撃を振り切れなかった。)

 そして、満州にいた満州国軍の生き残りの多くは、遼河以西へと退却していき、残りは朝鮮半島へと退却していった。

 朝鮮半島へ退却した満州国軍は、日本等の支援により、中国本土へと移動することになり、それにより一体となった満州国軍は、現在、補充再編成に努めていた。

 多くの兵器を失った満州国軍は、その補充を日米等に求めたが、今の日米等にも余裕があるとはいえず、満州国軍は余り動けないと判断されていた。

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