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第3章ー22

 第二次世界大戦におけるソ連軍の満州等への侵攻に対する日本(及び同盟国の米満韓)の大戦略としては、反攻に転じることにより、ソ連の極東領を制圧、また、外蒙古、共産中国を崩壊させ、蒋介石を首班とする中華連邦を建国させるというものだった。

(日米の本音としては、モンゴル、ウイグル、チベットは、中国から完全に独立した国家にしたかったが、蒋介石と妥協して、共闘するには、五族共和による中華連邦を公言せざるを得なかった。)


 その大戦略を実現するには、どのような作戦を立案すべきか。

 梅津美治郎陸相の示唆を受けた山下奉文中将は、関東軍司令官の小畑敏四郎中将等と協力して、作戦の立案に勤しむことになった。

 また、途中からは、マッカーサー将軍率いる米軍等も、これに協力することになる。

 だが、当座の作戦として、まずは、外蒙古方面からアルシャン、ウランホト、白城市へと、ひたひたと進撃しているソ連軍の4個自動車化狙撃師団の侵攻を阻止する作戦を、山下中将らは立てざるを得なかった。


「取りあえず、白城市近辺まで、ソ連軍を引き込まざるを得ません」

 10月末、第1機甲軍参謀長の栗林忠道少将は、第1機甲軍司令官の山下中将の名代として、関東軍司令部に乗り込んで、力説していた。

「ソ連軍の侵攻が、猛威を振るっているのは、航空支援によるものが大です。ソ連軍を引き込むことで、地上軍に対する航空支援を困難にさせます。また、アルシャン方面からの侵攻は、自動車補給に完全に依存しており、そういった観点からも、ソ連軍を引き込むことは有利に働きます。自動車補給の距離を延ばせば伸ばすほど、補給が困難になるのは、自明の事柄です」


 実際問題として、アルシャン方面からのソ連軍の進撃は、完全自動車化された部隊が行うにしては、ゆっくりとしたものになっていた。

 これは、アルシャン方面からのソ連軍の侵攻作戦は、完全に助攻任務になっていたことから、補給がそれ以外(満洲里、黒河、綏芬河等)からの侵攻作戦に優先して回されたのも、一因だった。

 また、アルシャンから白城市へと直通する大規模な鉄道が無かったため、ソ連軍の補給が事実上完全に自動車補給に依存したのも原因だった。


「航空偵察によれば、4個自動車化狙撃師団に随伴している戦車部隊は、本来は800両程はあったようですが、進撃による損耗が多発しており、白城市への攻撃に使えるのは、600両程になると考えています。これならば、第1機甲軍が保有する戦車、約480両であっても勝算は立ちます」

 栗林少将は、力説しつつ、想いを巡らせた。

 かつて、北フランスの地で自ら戦車を操って20年、ソ連軍の戦車部隊と併せるならば、約1000両余りの戦車戦を戦うことになろうとは。

 こんな時代になるとは、思いもよらなかった。


 栗林少将の力説に説得された関東軍司令部は、第1機甲軍の作戦を承認することにした。

 どちらにしても、アルシャン方面からのソ連軍によって、側面を脅威にさらされたまま、ハルピンから奉天、金州方面への退却行を続ける訳には行かない、というのもあった。


 10月末に、山下中将率いる第1機甲軍は、白城市周辺へと展開し、アルシャン方面からのソ連軍を迎え撃つ準備を整えることに専念するようになった。

 11月初め、アルシャン方面からのソ連軍は、白城市へと接近して、白城市の攻略準備に掛ろうとした。

 ここに、いわゆる白城市戦車戦、1939年時点における世界史上最大の戦車戦の火ぶたは切られることになった。

(最も、翌1940年には、これを遥かに上回る戦車戦が行われるのだが。)


 それに参加する将兵の一人として、戦車中隊長に昇進した西住小次郎大尉の姿もあった。

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