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第3章ー13

「取りあえず、第1中隊と第2中隊、併せて32機が上がることになった。第3、第4中隊は、予備とのことだ。速やかに発進準備を整えてくれ。整い次第、順次、離陸、迎撃態勢を採る」

 成増飛行場では、飛行第4戦隊第1中隊長の牟田弘國大尉が、整備員たちに指示を出していた。

「分かりました。すぐに準備を整えます」

 整備員の隊長が、その指示に応え、部下達に指示を下していく。

 牟田大尉は、それを見ながら、少しだけ考えた。

 どれだけの迎撃成果を上げられるだろうか。


「天皇陛下を御守りする、皇居を護る、ことだけを最後は考えろ。お前達が、最後の御楯だ」

 飛行第4戦隊長である林三郎少佐は、自分達、中隊長たちに対して、本土防空司令部からの指示を伝えた後で手短に訓示を行った。

 その最後の締めの言葉は、簡明と言えば簡明であったが、その言葉の重みは、自分達にとって重かった。

 そう、自分達が最後の御楯になるのだ。


 牟田大尉は、目の前の列機に注目した。

 自分達が操る99式戦闘機、この日本最新鋭の戦闘機が、どこまで戦えるか、がカギだ。

 99式戦闘機は、まだ、ここ成増と、後は立川にしか、配備されていない最新鋭戦闘機なのだ。

 そして、最近の訓練飛行で、勘は掴んでいる、という自信がある。

 後は、実戦で戦果を挙げるだけだ。

 それに。


 99式戦闘機には、12.7ミリ機関砲を4挺積んでいる。

 96式戦闘機が、7.7ミリ機関銃を2挺しか積んでいなかったのとは、比較にならない重武装だ。

 米国製のB-17重爆撃機をライセンス生産した99式重爆撃機を標的として、繰り返した射撃訓練を繰り返すことによって、四発重爆撃機に対する感覚を自分も部下達も掴めている筈なのだ。

 牟田大尉は、走馬灯のように、最初の頃の失敗を思い起こした。


「あれで、接近して撃ったといえるのかね。これが証拠写真だ」

 最初の射撃訓練の際に、講評を行う判定官が、何枚もの写真を取り出した。

 99式重爆撃機を標的として、自分が模擬弾を射撃するシーンが写っている。

 他に、部下達が模擬弾を射撃するシーンが写っている写真が何枚もある。

 機関砲を射撃している自分達の機体は、どれも小さくしか写っていない。


「充分に接近して撃ちました、こう胸を張って言うのなら、この程度に写る筈だ」

 別の際に、単発の99式襲撃機を標的として、自分達が、模擬弾を射撃するシーンの写真が示される。

 明らかに、先程よりも、自分達の機体が大きく写っている。

 自分も含めて、部下全員が下を向いてしまった。


「確かに、99式重爆撃機の機体は大きい。だから、といって、機体の大きさに、騙されるな。本当に接近して撃たないと、当たるものも当たらないぞ」

 判定官の叱責は、悔しいが、ごもっとも、としか、自分や部下達は、言いようがなかった。

 その際の反省を糧にして、自分や部下達は、99式重爆撃機を標的とする射撃訓練を繰り返した。

 今日の出撃に際しては、その成果を示さねばならない。

 牟田大尉は、あらためて堅く決意した。


「第1中隊、全機の準備が整いました」

 整備員の隊長報告を受けて、牟田大尉は、自分の機体について、出撃準備が整っているか、を確認した。

 取り合えず、問題はないようで、部下達も、同様の報告を相次いでしてくる。

「よし、ご苦労。直ちに出撃する」

 整備員に声を掛け、牟田大尉は、部下達と共に急いで出撃した。


「取りあえずは、高度6000を採る」

 牟田大尉は、第1中隊全16機に、無線で、そう指示を出した。

 この時代の電探には、欠点があった。

 高度を精確に測定できないのだ。

 本土防空司令部からの続報によると、目視報告では高度3000とのことだが、どこまで信用できるか、牟田大尉は緊張した。

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