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第3章ー8

 最も角田覚治、山口多聞両提督が、へそを曲げた最大の理由は、ある意味では、我が儘な理由だった。

 第一、第二航空戦隊が欧州に派遣される最大の理由だが、それは、欧州への航空機輸送任務に使われるからである。

 つまり、第一、第二航空戦隊は、ある意味では、直接の戦闘任務には使わない、と海軍省等から言われたようなものだった。

 勿論、それには、それなりの理由があった。


 海兵隊を欧州に派遣する以上、それなりの航空隊を付けるのは、必要不可欠な話である。

 だが、空軍は、満州等におけるソ連空軍の猛威に対処するのに、手一杯という現状があった。

 航空母艦に搭載されている航空隊を、現在の対ソ戦において、航空優勢確保や地上部隊支援に使ってほしい、という要望が、非公式なラインで、空軍から海軍本体に来る有様だった。

 従って、欧州に赴く海兵隊の航空支援は、海軍本体が受け持つ、という方向に話が転がっていた。


 そして、海軍本体で、海兵隊の航空支援を、欧州で行える航空隊というと。

 言うまでもない。

 第一、第二航空戦隊の航空隊しかなかった。

 更に、ある意味では、ぜいたくな困った事情もあった。


 当時、日本海軍の母艦航空隊(言うまでもなく、第一、第二航空戦隊に搭載される航空隊である。)は、中国内戦介入に伴う軍予算の拡大等から、英米両海軍からしてみればうらやましいことに、二直制を既に導入済みだった。

(あくまでも大雑把に言うとだが、二直制とは、本来の航空隊以外に、予備の航空隊を一つ編制しておく制度のことである。)

 これは、ある意味では、当然の話で、第一次世界大戦において、大規模な航空消耗戦を経験していた日本海軍にしてみれば、それだけの予備の航空隊を準備しておくのは当然だった。


 そして、その事情を知っている海軍本体以外、陸空軍や海兵隊にしてみれば、それだけの航空隊を持っている以上、欧州に赴く海兵隊の航空支援を、第一、第二航空戦隊の航空隊を、陸上基地に転用して運用しても問題ないではないか、という主張になるのである。

 だが、これは第一、第二航空戦隊の関係者からしてみれば、聞き捨てならない主張だった。


 空母から運用できるだけの搭乗員を育成する手間暇は、陸上基地からのみ運用できる搭乗員を育成するよりも遥かに掛かるのである。

 それなのに、そう簡単に陸上基地に転用して運用する等、言わないでくれ、というのが本音だった。


 とはいえ、このままでは髀肉の嘆を、第一、第二航空戦隊の航空隊がかこつのも、また事実だった。

 末次信正提督が、軍令部長を務めていた頃、日本海軍は、様々な実戦演習を行い、また机上演習も行ってみていた。

 その結果、空母を、対潜任務を主とする通商保護に投入するのは、危険が大きすぎるという結論が、日本海軍内では確立していた。


 対潜任務を主とする通商保護に航空隊は、必要不可欠だが、それは、陸上基地等から運用する航空隊が当たるべきで、母艦航空隊は向かない、というのである。

 これは、ある意味では当然の話で、空母から航空隊を運用する場合、航空機を発着艦させる際、空母は一定の針路を維持する必要が、どうしてもある。

(なお、後に空母に装備する油圧式カタパルトが実用化され、この問題はかなり軽減される。)

 そして、その際に針路を維持している時の空母は、潜水艦からすれば絶好の目標というのが、各種の演習を経た結果の日本海軍の結論だったのである。


 そして、この結論を踏まえている以上、日ソ開戦以来、日本海軍の空母部隊、第一、第二航空戦隊は、無聊をかこっているしかなく、それなら、欧州に赴く海兵隊の航空支援に使う航空隊の輸送任務に使えばいいではないか、という話が横行したのである。

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