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第3章ー5

 こういった在満州の日本陸軍の奮闘を助けようと、日本海空軍は、懸命に戦っていた。


「何とか、イマンの鉄橋を、当分、使用不能にしたか」

 9月10日の夕方、草鹿龍之介大佐は、溜息を吐きながら、部下の報告を聞いていた。

 草鹿大佐は、第一次世界大戦における日本が誇る撃墜王であり、当初は日本海軍に所属していたが、紆余曲折を経た末に、今では、日本空軍に所属し、北満州、ハルピン方面に展開する日本空軍の第11爆撃戦隊の戦隊長を務めている。


 開戦以来、執拗なシベリア鉄道に対する攻撃を、第11爆撃戦隊は行っており、特に重点目標と考えられていたイマン鉄橋に対しては、重点攻撃を加えていた。

 その成果として、イマン鉄橋に関しては、橋脚部分にまで破壊が及んだという報告を、先程、草鹿大佐は受けたのである。

 これによって、イマン以南におけるソ連軍の補給は困難になる筈だった。

 とはいえ、それによって、ソ連軍の攻勢を阻止し得る訳ではない。


「シベリア鉄道を完全に寸断するとなると、イルクーツク近辺で、シベリア鉄道を寸断する必要があるが、そこまで手を伸ばすのは、錬成を積み重ねた日本空軍とはいえ、手に余るからな」

 草鹿大佐は、嘆かざるを得なかった。

 1939年9月現在、満州の空は、ソ連空軍優勢で、基本的に推移している。

 どうのこうの言っても、数は数である。

 この当時、満州、韓国の空において、ソ連空軍は、(満州国空軍や韓国空軍を加えても)日本空軍に対し、2倍以上の数的優位を確保しており、その航空優勢を生かした直接の地上部隊支援に血道をあげていた。


(なお、それもあって、日本空軍の爆撃機部隊は、ソ連軍後方の補給路に対する攻撃を反復していた。

 正面からの攻撃で、ソ連空軍と殴り合っては、数の暴力の前に、日本空軍が劣勢になると判断されたからである。)


「今後、日本海軍等の奮闘で、日本等に対する諸外国の航路の通商保護が成功し、更に、日本等から満州への補給路も完全に確保する必要もある」 

 草鹿大佐は、更に想いを巡らせた。

 正に総力戦だ。


 実際、日ソ戦争において、陸軍は明らかに日本側が劣勢だった。

 そして、空軍は、数的劣勢を、懸命に戦術で、日本空軍はカバーしようとしていた。

 では、海軍はどうだったのか。


「舞鶴港沖合で、漁船が触雷して、轟沈した、との報告が入りました」

 同日、連合艦隊司令部では、通信士官が、半ば駆け込んで、嶋田繁太郎司令長官に、直接報告していた。

「やはり、ソ連海軍は、正面から戦ってはくれないか」

 嶋田長官は、内心で舌打ちしていた。


 予め、かなりの予測が、日本海軍内では、なされていたことではあった。

 ソ連海軍(それに加え、ソ連海軍航空隊も支援していると推測されていた)は、日露戦争等の経験から言っても、大量の機雷を用いた機雷戦を展開するという事は。

 かといって、外れるかもしれない、それに掃海艇は、急造すればよい。

 という甘い判断で、掃海艇の大量建造を、日本海軍は行ってはいなかった。

 そのツケが、日ソ開戦以来、露わになっている。


 太平洋に面した横須賀や、瀬戸内海にある呉は、ともかくとして、佐世保や舞鶴、大湊といった軍港に対しては、ソ連海軍は、航空隊を使った機雷投下、潜水艦を使った機雷敷設等の手段を用いて、封鎖を図ろうとしていた。

 それに対して、日本海軍の対策は、後手に完全に回っている。

 封鎖ができることは無いだろうが、多大な損害が商船等に出るだろう、と連合艦隊司令部等が、予測せざるを得ないレベルの損害で出つつある。


「機雷対策を講じる一方、ソ連に対して報復するしかないな」

 嶋田長官は、様々な方法によるウラジオストク等に対する攻撃を、決断せざるを得なかった。

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