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第2章ー6

 総動員を発令したことにより、9月1日時点で、ポーランド陸軍は、何とか39個師団余りの部隊を完全充足させることに成功しており、また、1000両近くの戦車を保有していた。

 また、ポーランド空軍も、戦闘に投入可能な軍用機を400機余り保有していた。

 とはいえ、所詮、独ソ両軍の前には、蟷螂の斧に等しい軍備だった。


 何しろ、ポーランドに侵攻してくる独陸軍だけで、60個師団余り、3500両余りの戦車が投入されている。

 航空戦力に至っては、圧倒的で、ポーランド方面に向けられた独空軍の戦闘用の軍用機だけで、2000機近くが投入されていた。


 それに加え、独陸軍を質量ともに上回るソ連陸空軍の存在が加わる。

 この時、ポーランド侵攻に投入されたソ連陸軍は、約80個師団、戦車約5000両と推定され、ソ連空軍も4000機が前線に投入されたとされる。


 しかも、既述のように、ポーランド軍の装備の方が、質において独ソ両軍に劣っているのだ。

 更に指揮官の質も、ラパッロ条約以来、独ソ両軍間の交流は続けられており(更に、この世界では、赤軍大粛清は起きていないため、)、ポーランド軍の指揮官と質的には、独ソ両軍共にそう差は無かった。

 このような状況とあっては、レヴィンスキー中将と言えども、どうにもならない戦力差だった。


 そのため、ポーランド軍は、基本的には、事前計画通り、今日の屈辱に耐えて、後日を期す、という戦いに徹するほかは無かったのである。

 とはいえ、個々の戦闘では、ポーランド軍は、勇敢に戦った。


 開戦劈頭において、独ソ両軍は、航空撃滅戦を早期に展開し、勝利を少しでも確実にしようと考えていた。

 そのために、9月1日、独ソ両空軍は、総力を持って、ポーランド空軍の基地を空襲した。

 そして、9月1日中に、独ソ両軍は、お互いに、自らが400機余りの軍用機を破壊した、と発表した。

 だが、9月2日以降も、ポーランド空軍の活動は止まず、独ソ両空軍は、慌てる羽目になった。


 種を明かせば、簡単な話で、開戦に備え、本来の基地から、各種の簡易基地にポーランド空軍の一線の軍用機は移動、隠蔽され、本来の基地には、ポーランド空軍のダミー機が並んでいたのである。

 そして、独ソ両空軍の空襲が終わった後、ポーランド空軍機は活動を再開した、という訳だった。


 勿論、多少の戦果誤認はあったとしても、独ソ両軍を併せれば、800機以上のポーランド軍機の地上破壊確実という戦果を挙げている以上、ポーランド空軍は、ほぼ消滅していると信じていた独ソ両陸軍は、ポーランド空軍のゲリラ空襲の前に、損害を多発させることになった。

 このことは、独ソ双方で、陸軍に、空軍に対する不信感を呼び起こす発端になった。 


 なお、この時のポーランド空軍の戦いぶりについて、独ソ両軍関係者からは、卑怯、正面から戦え、という非難を、暗にしていることが多い。

 しかし、劣勢な側が、正面から戦わないのは、戦理上当然のことである。

 ポーランド空軍の行動は、極めて合理的なものだった。


 最終的に、ポーランド空軍は、善戦空しく、「ポーランド侵攻」の際、所有するほぼすべての軍用機を失うことになった。

 そして、操縦する軍用機を失った1000人近くの操縦士を中核とするポーランド空軍の軍人は、競うようにルーマニア等へ脱出して、フランス等にたどり着き、1940年春に行われた独の対仏侵攻作戦において、日米から提供された軍用機を操縦し、再度、独軍と戦うことになるのである。


 更に、独ソ両空軍と、第二次世界大戦終結まで、ポーランド空軍の軍人は、勇敢に戦い抜き、

「我々は欧州の全ての空で、最初から最後まで戦い抜いた」

 と戦後、胸を張ることになった。 

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