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第2章ー5

 実際問題として、当時、仏に加え、英でも反戦デモが蔓延しており、英政府は、仏と共闘するために、英陸軍の仏本土への派遣は、何とか決めたものの、それ以上の積極的な独ソへの行動は、英も抑制的にならざるを得ない状況にあった。

 独ソ両軍のポーランド侵攻に、最も積極的な行動を展開しているのは、皮肉なことに遠く離れた日本というのが、1939年9月初めの状況だったのである。

 では、大国の一つの米国はどうだったのか。


「確かにポーランドの独立を、我が国は保障しています。しかし、だからと言って、我が米国の若者の血を大量に流す必要が、今、あるのでしょうか?この度の独のポーランドへの宣戦布告は、独が自衛のために止む無く行ったものであり、ポーランドが総動員を行わねば、避けられた戦争なのです」

 1939年9月3日、共和党所属のジャネット・ランキン下院議員は、自らの信奉する平和主義の観点から、米国の対独ソ宣戦布告に反対する大演説を、米下院の議場で行っていた。

 そのランキン議員の言葉は、議場内で、ランキン議員の所属する共和党の議員のみならず、対立する民主党の議員からも、米下院の議場内で万雷の拍手で称えられる有様だった。

 そして、ランキン議員らを支持する米国民のデモが、ホワイトハウスや米合衆国議会議事堂を取り囲み、作家のヘミングウェイらが、そのデモの先頭に立っていた。


 1939年9月初め当時、米国内の世論では、孤立主義が完全に蔓延していた。

 第一次世界大戦の惨禍は、伝統的な米国内のモンロー主義者達の主張も加わり、南北アメリカ大陸以外の戦争に際し、米国が介入することを拒否する大規模な世論を呼び起こしていたのである。

 米国の指導者のルーズベルト大統領等は、これ以上、ユーラシア大陸での独ソの勢力の伸長は、米国の国益上、看過できない、米国は対独ソ戦争に突入するしかない、と覚悟を固めてはいたのだが、肝心の米国世論が、それに拒否反応を示していた。


 だが、事態は急転する。

 皮肉にも、第二次世界大戦への突入に(独よりも)及び腰だったソ連の軍事行動により、米国世論が激昂する事態が起こるのである。

 そして、それによって、米国は対ソ宣戦を布告、必然的に独も対米宣戦する事態が起こるのだった。


 このように英仏米が、中々、対独ソ戦争において、積極的な行動を展開できなかった中で、一国だけ、気を吐いていたのが、日本だった。

 既に中国内戦に介入したことから、国家総動員法を制定、施行する等、国家総力戦体制を、着々と整えていた日本政府にしてみれば、敵対国が増えたただけに過ぎない(最も、その敵対国は、余りにも日本単独で立ち向かうには強大すぎ、英仏米との連携が必要不可欠ではあったが。)という見方ができた。


 独のポーランド侵攻を理由に、対独宣戦した日本は、これを理由に対日宣戦したソ連に対しても、宣戦を布告した。

 事前計画に基づき、ウラジオストック等のソ連の軍港に対する機雷敷設等による封鎖作戦を展開すると共に、自らの通商路を保護するために船団護衛戦術を駆使し、飛行船や飛行艇まで動員したソ連潜水艦への対処を、日本海軍は行った。

 また、日本陸軍は、後図を策して、朝鮮半島から南満州へと部隊を急いで動員して、展開させる準備を整えようとした。

 日本空軍も、その能力を駆使して、ソ連空軍との死闘を始めようとしていた。


 とはいえ、日本では、ポーランドを救うには、余りにも遠すぎた。

 1939年9月時点での日本には、独を攻撃し、ポーランドを直接、救う力はとても無かった。

 このような状況の為、ポーランドは、事実上は孤立無援のまま、ほぼ単独で独ソ両軍の侵攻に対処することになるのである。 

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