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第6章ー17

 こういった独海軍の水上艦艇に相次いで襲い掛かった悲劇は、独本国でも順次、把握された。

 このノルウェー侵攻作戦発動前、独海軍のトップを務めていたレーダー提督は、独海軍が、敵の英米日海軍に対して圧倒的劣勢であることを把握していたため、

「本作戦中に、半分以上の水上艦艇を失うかもしれない」

 と予め周囲に漏らしていたという。


 だが、ノルウェー侵攻作戦発動後の初日で、ほぼ全ての独海軍の水上艦艇を失うというのは、さすがに想定外だった。

 そして、4月11日の朝には、ノルウェー侵攻作戦に投入された全ての水上艦艇が失われたのだ。

 こうなっては、独が海上輸送で増援部隊を送り込むのは極めて困難だった。


 それでも、独軍は、最善の手段を講じた。

 幸いなことに、独軍のデンマーク侵攻作戦は、順調に進んでおり、僅か1日で、独軍が制圧していた。

(但し、占領直後から、英仏米日の支援による反独抵抗運動が起こることになる。)

 これを生かして、デンマークから漁船等の小船舶を使った輸送作戦(英仏米日側は、この輸送作戦を、ベルリン急行と揶揄し、独側もこの作戦の参加者は、アリ輸送と自嘲した。)を独海軍は発動し、これによって懸命にノルウェーへと兵員、物資を送り込もうとしたのである。

 だが、これは、ある意味、独軍の傷を広げる作戦となった。


 何しろ、ノルウェーの港を、ノルウェーに侵攻した独軍は占領していないのである。

 入江等の浜辺に兵員や物資を、独軍は揚陸せざるを得ない。

 それに小船舶での輸送でもある。

 独軍が、ノルウェーに戦車や重砲を運ぶのは無理な話で、迫撃砲や山砲を運ぶのが精一杯だった。


 また、人員や物資を空輸するにしても、空港を抑えていない以上、落下傘で空挺兵を降下させ、また、物資を空から投下するしか基本的に手段はなかった。


 こうした状況に鑑み、早くも4月10日には、独陸軍内部には、ノルウェー侵攻作戦の中止、兵員のできる限りの引き上げを主張する声が上がる有様となった。

 とはいえ、ノルウェーの空港、港湾を制圧すれば、戦況は一変するとの声も、この時点では、独海空軍の間には強く、引き上げ論は迎えこまれたが、独軍の戦況を更に悪化させる事態が起こった。


「あれは、何だ」

「戦艦を含む大艦隊だ。おそらく日本艦隊」

 ベルゲン港を制圧しようと、軽装備ながら懸命に奮闘していた独陸軍の将兵は、沖合に現れた日本海軍の艦隊を見て、多くが驚愕の表情を浮かべ、上記のように語り合った。

 独陸軍の将兵の多くが、直接は見たことがない旭日旗を、その艦隊は掲げていたのだ。


「それでは、もし、艦砲射撃による支援が必要になりましたら、いつでもご用命を」

 小沢治三郎中将は、笑いながら臨時に編制されたノルウェー派遣軍団の軍団長の石原莞爾中将に言った。

「止めてくれ。海兵同期の仲ではないか」

 石原中将は、小沢中将に笑い返しながら言った後で続けた。

「最も、そう言ってもらえて有難い。存分にやらせてもらう。戦艦の砲撃に、どこまで独兵が耐えられるかを、この目に焼き付けよう」

 石原中将は、上陸作戦の開始を、麾下にある各部隊に命じた。


「急げ。獲物を味方と言えど、譲ることは無いぞ」

 土方勇少尉は、第1海兵師団所属の戦車大隊の一員として、先陣を承っていたが、部下達に対して、そう鼓舞の掛け声をかけていた。

 日英の駆逐艦が、上陸支援のための艦砲射撃を行っており、それでは壊せない、と見るや、戦艦「比叡」と「霧島」が支援砲撃を浴びせられる態勢にある。

 上陸部隊の航空支援は、フレッチャー提督率いる米空母部隊が受け持っている。


「日米英仏側の本格的な地上反撃の始まりだな」

 土方少尉は、周囲を見回しながら、そう確信していた。

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