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第6章ー15

「独の戦艦はどこだ?」

 ハルゼー提督は、旗艦「エンタープライズ」の艦橋で半ば怒鳴っていた。

 独の巡洋戦艦、「シャルンホルスト」、「グナイゼナウ」は、自分達が罠に掛かったと判断するや、北大西洋へと脱出し、大幅な迂回航路で、祖国独への帰還を目指していた(と推測されている。)。


 ハルゼー提督率いる米空母部隊は、トロンヘイム上陸部隊を全員ヴァルハラ送りにした後、「シャルンホルスト」と「グナイゼナウ」を、航空攻撃で沈めようと、偵察に努めていた。

 だが、ハルゼーは、この時、「シャルンホルスト」等の行動を読み誤った。

 トロンヘイム上陸部隊を攻撃する必要もあったため、4月9日午前における偵察を、ノルウェー北部の沿岸方面に絞らざるを得ない状況にあったこともあり、北大西洋方面からの迂回を図った「シャルンホルスト」等を、ハルゼー提督は、すぐには見つけられなかったのである。


「どうもおかしい。独の戦艦は、北大西洋方面からの迂回航路を取っているのか?」

 4月9日の午後になって、ハルゼーは、あらためて索敵計画を練り直し、全方位に渡り、索敵機を二段に分けて放った。

 だが、このために36機もの爆撃機を偵察任務に投じねばならず、ハルゼーは、攻撃力が低下するのを歯ぎしりして悔しがらざるを得なかった。

 しかし、この計画変更が吉となった。


「独の戦艦2隻を見つけました。我が艦隊の西北西方面です」

「何。いつの間に後ろに回っていやがった」

 14時過ぎになって、偵察機からの報告を受けたハルゼーは驚愕した。

 ハルゼーは、そうは言っても、偵察機が独の戦艦を見落としているという可能性が大だとして、艦隊をノルウェー沿岸方面に進ませていたのである。


「急げ、急げ。お前ら、グズグズしていたら、操縦席に括り付けるぞ」

 ハルゼー提督は、攻撃隊を督励したが、米空母部隊が、100機近い攻撃隊を発進させたのは、15時を過ぎていた。

「ガッデム、俺としたことが、偵察に失敗した」

 今からでは、独の戦艦に、一撃しかかけられない。

 しかも、偵察に力を入れたためや、午前中の独艦隊への攻撃のために、総力を挙げての航空攻撃と、とても言えるものではなかった。

「2隻とも沈めたいが、今からでは難しいか」

 ハルゼー提督は、歯ぎしりしつつ、艦隊を、独艦隊のいる方角へ向かわせた。


「独戦艦2隻に対して、1隻に魚雷4本命中、爆弾3発が命中。もう1隻には、爆弾5発が命中。2隻とも戦闘航行に全く支障無しと認められる」

 結局、4月9日の夜に、米空母部隊の攻撃が終了した後の攻撃報告は、上記のようにまとめられた。

 ハルゼー提督は、独巡洋戦艦の堅牢さと、自軍の攻撃隊の威力の低さに、罵声を挙げ、その報告書を半分引き裂いたと伝えられる。


(なお、この報告書の内容については、多くの軍事史家から、疑義が呈されている。

 幾ら何でも、独の巡洋戦艦が、航空攻撃に耐えすぎではないか、米軍の攻撃隊の実際の命中数は、この半分にも満たなかったのでは、と言う声が高い。

 特に1隻に至っては、魚雷4本が命中し、1000ポンド(約450キロ)爆弾3発が命中しても、全く戦闘航行に支障無し、とは。

 これが、本当の話なら、「シャルンホルスト」級巡洋戦艦は、「大和」級戦艦よりも、遥かに堅牢だったことになる、とまで日本のある軍事史家は、自らの著書に書いている。

 実際のところ、午前中のトロンヘイムに上陸しようとした独軍への攻撃で、米軍の攻撃隊の搭乗員の多くが疲労しきっており、戦果も誤認したようである)


「「それでは、独巡洋戦艦撃沈の栄誉は、我々が頂こう」」

 角田覚治、山口多聞両少将は、米空母部隊の攻撃の結果報告を聞いた時に、共に呟いたという。

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