アクアプリンス 共通① 魔術師と人魚姫
――毎朝の日課である畑の確認を終えて、家に入る。
帰ってそうそう母に「サンディちゃん庭の花に水をあげてきてくれるかしら?」と言われたので水をまきにいくことにする。
食べられる畑の野菜はまだしも
食べられない花の世話が面倒になって適当に水をばら蒔いて済ませようとしたのだが―――――
「うわ!?」
いつの間にかいた隣村の少年Aにあやまって水をぶっかけてしまうのだった。
「あっごめん」
とあやまりつつ少年Aを見るとなんということだろう、少年Aの足が魚、まるで人魚のようになってしまっていたのである。
「…なによその足?」
「昨日父さんが『お前には呪いがかけられているんだ』ってさ」
「へぇ…」
「へぇ…じゃねぇだろ!?」
――とにかく王立図書館で調べることにした。
「昔、ネプテュス人の王族は人魚になれたらしいわ」
「まさかオレの祖先が王族!?」
「ないない。人魚なんてもうこの世にいるわけないもの。やっぱあんたのお父さんが言う呪いかなんかでしょ」
彼にはそういって自宅へ戻る。
「はあ……」
私はひどい嘘をついてしまった罪悪感でこの上なく憂鬱になる。
「プリンセス…どうなされた」
たまに家にやってくるローブの男が心配そうに私の顔を覗き込む。
「久しぶりね魔術師さん。さっき幼馴染みに嘘をついてしまったから最悪な気分なのよ」
「ほう、なんと?」
「人魚なんてもうこの世にいないって」
そう言うと魔術師はクスりと笑う。
「貴女がそんな事を言うなんて皮肉なものですね」
――私はアクアルドの人魚の末裔なのだから。
◆
『憧れている人魚がいるの』
『人魚から尊ばれる側の貴女が憧れる人魚とは一体どれほど優れた人魚殿でしょうな?』
『王子の為に泡になった伝説の人魚姫様』
『ほう…それで?』
『伝説の人魚姫のように、人の王子と恋をしてみたい』
『は?』
『だから……』
『貴女が伝説の人魚姫に憧れたのはわかりましたが、貴女が嵐の中で助けた好いた王子はどこにいらっしゃるのです?』
『そもそも嵐の中を航海する王子がいなかったのよ』
『はっはっはっ嵐をおこして王子を遭難させるのは嫌ですぞ』
『そこをなんとか』
『自分の欲の為に他人を不幸にする等、人魚姫のやることではございません』
『海底の魔術師なのにまともなことを言うのね。じゃあここで魔術師さんが王子になりきって再現して』
『嵐も船もない海中で?』
『演技よ演技それなら負傷者もでないし不幸にはならないでしょ?』
『先程まで嵐をおこして王子の船を沈めたがっていた方の発言とは思えませんがわかりました』
『見た目だけなら王子よ魔術師さん』
『それは……ありがとうございます姫様』