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家出娘 共通①


「はあ……」


私は家の庭で、部屋に飾るのにちょうど良い花を探している。


「ため息をつくと幸せが逃げますよお嬢」


とびきりの黒が似合うだろう。しかし小さく色鮮やかな草花がいい。


「ってあれれ、どこに行くんです?」


無視しているのにまだ使用人が私に話しかけるなんて不快ではないが珍しい。

私の目付きは意図せず鋭いらしく、自主的に私に話しかけたがる者はいない。

おそらくは人付き合いが好きな新人だろう。こんな危ない屋敷にパーティーピーポーがいるなんて世も末だ。


「花を摘んでくる」


花を摘むとは化粧室へいくという意味でもあるが、実質的に近くの森へいこうと思う。


「ダメッすよ!!あの森には狼男が住んでるらしいっすから!」


さすがはパーティーピーポーというやつか、そのままのほうで捉えてくれた。


――花を摘みながら、ふと思い出す。

森に獣の噂はないが、若い女を狙った謎の男が出没しているらしい。


「というかパーティーピーポーってなに?」


近くには誰もいないので、疑問に答えてくれはしない。


「もういいかな…」



あれは、ふわりとした薄茶の髪、安物のエプロンドレス、歳は17ほどだろうか。

――なんと私好みの麗しい少女であろう。


「お嬢さん」

「はい?」

「今夜、お城でパーティーがあるんだ」


今夜会場に伴うパートナーは、この少女に決めた。



――なんだこの変な男は。噂の変質者だろうか?


『森には狼男が――』


そんなまさかね。


「貴方、奥さんはいるんですか?」


いかにも女好きそうな金髪男だから、愛人くらいはいそうだ。


「……僕は独身貴族だから。まあ貴族でもあるんだけど」

「貴族!?」


普通に生活していたら聞きなれない単語に少し取り乱した。

西洋にはいまだに貴族がいるらしいが、なんとも違和感を覚える。

まあ私は半分日本人だから仕方がないだろう。


「君は、貴族が嫌いかい?」

「見下されている感じがして、空気感が好きじゃないかもしれません」


「そうだね、貴族に良い奴なんていないと思うよ」

「断言するんですか」


「うーんとても可愛らしい衣服だが、現代らしくないね」

「はあ……」

「実はね、今夜ダンスパーティーがあって……」

「つまり同伴者がいないから探していた?」

「そうなんだ!!」



男は言うだけ言って、会場も言わずに去った。

参加するつもりはなかったからいいが。


「戻ったわね、まったくいくら家が所有する森とはいえ一人で外出するなんて」


母はソファに座り、赤ワイン片手に猫を撫でる。


「ごめんなさいママ」

「今夜は要人ばかりが集まるパーティーがあるの」


母はニヤリ、よくないことを考えているのだろう。


「襲撃するの?」

「いいえ、今回はパーティーに出席するだけよ」


――母は組織“黒龍庵”の女ボス。私はその一人娘で、父親の面は知らない。


「……キモいオッサンが寄ってくる」

「そんな顔しないの。アンタの夫になる男がいるかもしれないわよ」


母は笑い飛ばしているが、私にはたしかイテリアンマッフィーアの許嫁がいるはずだ。


「この前の相手は?」


政略的に同業者が一番妥当な相手ではないだろうかと本人がいっていた。


「あんたアタシが決めた事ばっかりしてて、人生つまんないんじゃない?」


たしかに私は母の言う通りにしてきただろうが、あまりやりたいことに口出しはされていない。


「あんたは昔から手がかからなくて、ちょっとくらい学校のガラス割ったりクラスメイト恐喝してもいいのよ?」


世間に顔向けできない仕事柄、私は目立てないが、ほとんど放任されている。


「そんなにつまらない人生じゃないと思いたい」


いかに他人を掌握するか、裏切るかくらいしか教えられなかった気がする。


『仲良くなる前に相手の家を調べて弱味を握られるより先に、相手が一番されて嫌なことを知るのよ』


「まあとにかく恋はいいものよ。あんたも男の一人や二人でも連れてきなさい」


そういって母は去っていった。



「さあいくわよ」

「わかったわ」


「あれは海軍少将ゲルン=ディツベルクとその息子の大尉シュリンツァね。息子のほうは見つかると特に厄介だから目を合わせないように」


きっと息子は親の七光りと言われぬように頑張っている最中なのだろう。


「あっちは以前勝手に婚約を決めてきたディルノー親子だわ」


母は首領ディルノーとは合わないようだ。


「ん?」


母が立ち止まったので何かと視線の先を見てみると、今日森で会った男がいた。


「どうかしたの?」

「あれは貴族のフランジム=フランポーネ。顔がとってもいいこと以外は特にないわねえ」


母は私をおいて踊りにいってしまった。


「紅絹、オレと踊ろう!」


タリアス=ディルノーはキナ臭い組織の息子とは信じられないくらいの屈託のない笑顔だ。


「やあお嬢さん、昼はどうも」


森の変質者もといフランジムはタリアスを押し退けてこちらに手をさしのべる。


「アンタ彼女のなに?」

「昼にダンスの約束をした仲」

「……!!」


なんか大騒ぎになってきた。


「紅絹=スカーレッディオンだな」


耳元で名を囁かれる。普通の名であれば隠す必要はないが私はマフィーアの娘だ。


「貴方はシュリンツ=ディツベルク大尉?」


今日顔と名を知ったばかりだが、長くしなやかな銀髪と鋭い眼差しが印象に残る。


◆誰と行動すべきだろう?

〔フランジム〕

〔タリアス〕

〔シュリンツ〕

〔逃げる〕

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