グリンティアラプローズ 共通①
草木枯れた森の奥深く、棟の上に、お姫様がおりました――――
今日は私の誕生日パーティー。
「…みんな大嫌い」
損得勘定で私に偽りの笑顔を見せる貴族は嫌い。
「喋るのも動くのも嫌」
誰も彼も私でさえ、物言わぬ人形であってさえすれば、何者も私を評価しない。
ずっと目を閉じて、口を閉じて、私を見ず語ることなく、ただ黙ってそこにいればいい。
パーティーを抜けた私は、大好きな黒馬に乗る。
そのまま隣の国へ向かった。
「今日もいい天気だなー」
空を見て言うならまだわかるのに、井戸水を汲み上げながらそれを言う。
間抜けそうな金髪の少年がいた。
三つ程度下くらいの彼が着ている服はボロボロなのにニコニコと無邪気に笑い、とても幸せそうだ。
ああ、羨ましい。虚しさとは遠い心が私はなによりほしい。
「やあプリンセス」
「おまえは……」
■
私はグリーンティア王国の王女リフィーラ。
気がつくと棟の最上階に閉じ込められていた。
「やぁやぁ、ご機嫌いかがかな、プリンセス」
彼は魔法使いガルソル、私を閉じ込めた張本人である。
フィエール皇帝の弟にして、グリーンティアに移住していた。
「最悪」
花瓶に飾られた薔薇の花をつかんで床に放り捨てた。
私は薔薇の花が嫌い。見るたびに、あの日を思い出すからだ。
好きだった人に告白をし断られ、その人が薔薇の花を常に持っていたから。
「植物国の姫が機械や火よりも薔薇を嫌いなんて、笑い話にもならないねぇ」
「そうね」
皇帝の弟が魔法使いになって敵国の王女と気安く会話しているなんて、笑い話だ。
『どうして私を閉じ込めるの!?』
『パーティーに呼ばれなくてムカついたから?』
ガルソルは王国のパーティーに招待されなかった腹いせに、私を城から連れ去った自己中心的な男。
それなのに、お城にいたときより自由で、楽しくてしかたないのはどうしてだろう。