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ブラックサンダーがたまに食べたくなるのは俺だけ?

「来たか。我が友であり、永遠の恋敵ライバルよ。今日こそお前と決着ケリをつける時が来たのだ。手加減はしない。覚悟してかかってこい!」


 放課後になり、渋々屋上へ到着した俺にマサハルはそう言った。がらにもなく腕を組み、屋上のど真ん中に立っている。


「はいはい。いろいろとツッコミどころがありすぎて、何からツッコメばいいのかわからなくなるよ」


 するとマサハルは、着ていた制服のブレザーをばっと脱ぎ捨て、シャツとネクタイになったその姿で、下を向き肩を震わせた。


「ククク、お前にはずっと黙っていたが、実は俺は地獄の闇世界ダークサイド・オブ・ヘルワールドより召喚されし黒い雷の騎士ブラックサンダー・ナイトだったのだ! タカヒロよ、お前もそろそろ正体を明かしても良いのではないか?」


 さっきも聞いたよ! 何度言うんだよ!

 それにしても、まさかっ! マサハルは俺が勇者のサポートをしないと存在が消えてしまうという事を知ってるのか!?


「そ、それは、その......」


 困った!どうしよう!

 もしかしてマサハルも実は勇者のサポートを?

 その時だった。向かい合う俺たちの後方から声が聞こえた。



「あら、契約者の命令ナシに、召喚獣は本来の力を発揮できなくてよ」



 ???


 いや、わかってる。急にこんなセリフを言う中二病の女は一人しか知らない。


「ま、魔城木! なんでここにっ!?」


 いや、俺が誘ったんだった!

 なんか、俺もこの二人のノリに影響されてないか!?


「月が泣いているわ」


 え? 何言ってんの!? この人っ!

 魔城木は、風に青い髪をなびかせながら、上を向いて切ない表情を浮かべる。


「月の姫である私を取りあって、血の香りのする争いが繰り広げられようとしてるからよ。止めに来たの。あなた達は間違っている」


 魔城木さん絶好調だなおい!


「月の姫よ! それならば我がきさきとして、地獄の闇世界ダークサイド・オブ・ヘルワールドへ一緒に来るのだ! それ以外に、この決闘デュエルを止める手段などないっ!」


 お前もノリノリかっ!


「あんたと地獄に落ちるしかないですって? フンっ! 笑わせないで。どうしてもって言うのなら、力尽くで連れて行くことね。でも、その貧相ひんそうな装備でできるかしら?」


「ハハハ! 見た目にだまされるとは、吸血鬼姫らしくないではないか。そちらこそ、その弱そうな召喚獣で何ができると言うのだ!」


「あんたはまだこの召喚獣の隠された力を知らないようね。いいわ、教えてあげる。さあ、行くのよ! 私の従順じゅうじゅんしもべよ!」


 そう言って魔城木はマサハルの方を指差した。

 なんか、二人とも楽しそうだな。


「あの、俺は負けでいいからさ。あとは二人でゆっくりと楽しんでよ」



「「ちょっと待ちなさいよ!(待てよ)」」



 全力で止められた。


「あんたがいなくなってどうすんのよ! これからがいいところなのに!」


「そうだぞ! タカヒロ! まだ剣もまじえてないじゃないか!」


 いいところ!? 魔城木さん遊んでるよ!

 剣はどこにあるんだ! マサハル!


決闘デュエルって言ったって、一体なにをすればいいんだよ」


「何って......そうだ! お前らが召喚獣でくるならば、俺も召喚獣を召喚するとしよう! 人類を滅亡めつぼうさせるために悪の狂科学者マッドサイエンティストが作り出した伝説の召喚獣よ! 我に力を貸すのだー! フハハハ!」


 そう言ってマサハルは、スマホを取り出してどこかへ電話をかけ始めた。


「あ、今ヒマ? じゃあちょっと屋上までいいかな? うん、大丈夫大丈夫! お前しか好きじゃないって! 本当だから! え? 今? 女の子いるけど。 え? なんで? ちょっと! 待てって! もう一回俺の話を......」


 マサハルはスマホを手から滑り落とし、ひざから崩れ落ちた。


「ミキちゃんだよね! 今呼ぼうとしたのはミキちゃんだよね! マサハルが召喚獣ミキちゃんに滅亡させられちゃったよ!」


 マサハルはバッと顔を上げ、キッと俺をにらむ。


「おのれ! これが勇者と契約を交わした召喚獣の強さか!」


 俺ら何もしてねーよっ! お前の自滅だよっ!


「クク、クククククク、フハハハハハハ! やっと思い知ったようね。どうかしら? これが凍える月の吸血鬼姫ヴァンパイアクイーン・ジ・コールドムーンの召喚獣、『混沌の堕天使カオス・ルシファード』の能力。『絶対零度アブソリュート・ゼロ』よ!」


 俺はいつから堕天使ルシファーになったんだ!?

 それに絶対零度って、全然意味がわからんわ!


「や、やはりそうだったのかっ! クソっ! これでは万に一つも勝ち目がないではないか!」


「そうよ。だからもうこんな無駄な争いはやめて! じゃないと、私の中に眠る封印されたドラゴンが起きてしまう!」


 そう言って魔城木は、胸を押さえて苦しそうにしゃがみ込んだ。


 おい! その設定は今付け足しただろっ!

 なんでもありだよこの吸血鬼姫は!


「ど、ドラゴンを封印していたなんて......そうか! だからこの吸血鬼姫ヴァンパイアクイーンかられ出す魔力の数値が強大だったのか!しかし、今がチャンスでもある。この瞬間を待っていたぞ姫よ!」


「な、なんてこと! 黒い雷の騎士ブラックサンダー・ナイトは私がこうなることを読んでいたと言うの!? これではドラゴンの封印が解かれるばかりか、私があいつのしもべになってしまう......」


「それだけではない! そこにいる召喚獣もこの手でひねり潰してやるわ! ハハハ!」


「マズイわ! 混沌の堕天使カオス・ルシファードは私の力がないとその能力を発揮できない! お願い! 逃げて! 私のことは心配いらない!」


 どちらかといえば、この状況がカオスだよ!


「はいはい! わかった! わかったから今日はもう終わりな! 俺、夕飯の買い出ししないといけないから帰るぞ!」


 そう言って、屋上の出口に向かおうとした。


「待って」


 しゃがんだままの魔城木が俺の制服のすそを掴んだ。


「帰らないで......よ」


 ん? 急にどうしたんだ?


「あれ? タカヒロ? なんだよあいつ。帰るのはえーな。それにしても、かぐやちゃん誰と喋ってんの?」


 え? 存在が消えてる!? マジかよ!

 魔城木が寂しがってるってことか?


「でもな......今からスーパー行くし。そうだ! 明日またやろうぜ? それならいいだろ?」


 魔城木を見ると、ひどくおびえた表情になっていた。

 あきらかにおかしい。これは寂しがってるワケじゃないのか?


「ど、どうしたんだよ魔城木! マサハルが遊んでくれるから大丈夫だって!」


「違う。今日は家に帰りたくない」



 ??????



「えええええええええ? 何それ? どういう意味? 使い方間違ってない?」


 すると魔城木は首を横に振る。


「今日だけでいいから、あんたの家に泊めてほしいの」


 ーーまるで石化の呪文をかけられたように固まった俺は、それから数分間動くことができなかった。

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