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オムライスは半熟派?固め派?

 ーー気づいた時には、もう目の前1メートルの距離に見上げるほどの大型トラックが迫っていた......

 今までの人生が、まるで壊れたスライドショーのように物凄い速さで頭の中を駆け巡る。


 これが走馬灯というやつか。


 ああ......特に目立つこともない平凡な17年間だったな。

 結局、一度も彼女はできなかったし......まさか童貞のまま死ぬとは......ん〜悲惨だ。


 そういえば、俺が死んで悲しんでくれる人はいるのだろうか? ざっと思いつくのは友達や愛犬。母親は絶対に泣くだろうな。なにせ、シングルマザーで身を削りながら仕事をして、俺を育ててくれたのだから。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


 そうだ。


 一つだけ悔いが残るとすれば、締め切りに追われ、必死に小説を仕上げている母の夕食が、未完成で終わってしまったことぐらいだろうか。ああ、おふくろはちゃんと夕飯作って食えるだろうか。心配だ......



 ーーオムライスを作っていた。フライパンで熱した卵を、半熟のままケチャップライスにかけ、切れ込みを入れてトロッとするやつだ。しかし、作っている途中にケチャップを全て使い果たしてしまった。


 これではケチャップで名前が書けないではないか!


 小さい頃から『オムライスには自分の名前とハートマークを書くものだ』と教えられてきた俺にとっては死活問題だった。ケチャップで名前を書いていないオムライスなんてオムライスじゃない!


 この時の俺は気が気でなかった。エプロンをつけたまま急いで家を飛び出し、ケチャップを買うために最寄りのコンビニに向かっていたのだ。



 夕方の街は買い物帰りの主婦や早めに仕事を終えたサラリーマンなどで、かなり賑わっていた。ワーワーはしゃぐ、幼稚園帰りの子供達の声も聞こえる。


 ーーそれは、道路を渡るために信号待ちをしていた時に起こった。ふいに赤信号の道路上にサッカーボールが転がっていったのだ。そのサッカーボールに、信号待ちをしていた人々の視線が集まる。


 次の瞬間。


「待てー!」


 と言って5歳ぐらいの男の子が飛び出してしまった。男の子はサッとボールを手に取り、道路の真ん中でニコニコしている。


 あまりにも一瞬の出来事に、その光景を見ていた人々が口を出す暇も無かった。男の子の飛び出した道路には、今にも大きなトラックが通過するところだったのだ。


「危ない!」


 気づけば、男の子をこちらに連れ戻すために飛び出していた。あまりのケチャップ欲しさに、その場で駆け足をしていた俺は、他の大人よりも早く行動を起こすことができたのだ。


 しかしだ。


 俺が飛び出した直後、ヒョイっと男の子が歩道の方に戻ってくるのが見えた。


「え?」


 男の子と入れ替わりで道路の真ん中に置き去りにされた俺は、エプロンにサンダルと言った男子高校生らしからぬ姿で、大型トラックを見つめることしかできなかった......

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