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湘華鎮にて……壱
立ち上がると、光の天井はそれにあわせて踊り、新鮮で冷たい流れが体の隅々をくすぐる。軽やかに水流にのって岸辺にたどり着いた。
「あれ、先生。何処からいらっしゃったんで? 」
岸辺に男がいて、何となく話しかけてくる。ずぶぬれで体裁の悪い事この上ない。
「ここには龍が出ますによってあまりおかしな事はなさらぬがよかろう。ほれ、この泡が龍の息と呼ばれておりまするよ。水浴びするにはふさわしくありません 」
外の世界は予想通り長閑であり、この男もなんとも長閑だった。人心乱れず、田園にあくびを聞く。空を見て憩うや、滝を見て心驚く。いかにも小さい滝つぼであり、優しい滝であったか!? 今の今まで自分の世界だったこの水は清明であり水も多かったが思ったよりも小さく穏やかであった。
それから、はて、龍とやらは私のことではないか?とおかしく思い、ここがなんと言う土地であるか訪ねると湘華鎮と答えがあった。そこで川辺から、男に案内されて村の中を歩いてみると、どこからか多くの人が現れて、みな私の衣の裾を引き、何くれと無く話をせがむのだった。