旅立ち
村の話し合いが終わってすぐマーオは口を挿む暇も与えられず旅装束を整えられ初めての旅へ出された。それから三日。マーオは急速以外の時間をひたすら馬を駆けさせ王都へと急いでいた。
精霊だけを連れ、子供の頃から世話をしている栗毛の馬で王都まで続く道をただ前を向いて走っていた。
精霊はマーオの手のひらに乗るくらいの大きさまで小さくなっているのを利用し、肩から掛けられている鞄の中から顔をだしている。小さい体は突風に飛ばされることなく向かい風に身を任せて楽しんで旅に出る前から自問自答しているマーオの話を聞いていた。
「……本当にこれで良かったのかしら」
初めての旅という不安、これからアレクに会う事の不安。いろいろな思いが綯い交ぜになり考えることを止めることが出来ないマーオは、旅に出てからっも何度目になるか分からない問いを精霊へ投げかけていた。尽きることのない疑問を不安な心のまま。
『いいんじゃない? だってマーオはアレクに死んで欲しくないんでしょ?』
「それはそうなんですけど〜……」
人とは感情も、時の流れもまったく違う中で過ごす精霊。そのためマーオの言葉に含まれる心の機敏に頓着することなく笑顔を浮かべている。
『なら、結婚しなくてもアレクが死なないんだし良いことだね!!』
「う゛ぅ……。確かにアレクが死ぬのは嫌だから助かるんなら嬉しいんだけど、もしお姫様と結婚しちゃったら私立ち直れないの〜」
『ん~? よく分かんないや。マーオはアレクが死ななければ嬉しいんでしょ?』
「……そうなんですけど~。何というか複雑? なのですよ~。だって私にとってまったく嬉しくない結末しか想像できないんだもん~」
話しているうちにお姫様とアレクが並んでいる姿を想像したマーオはきゅっと眉を寄せ悲しそうに寄せた。
『マーオはいっつも難しいことを言うね。約束を守らないのはいけないことだよ? 約束守らない人には怒って終わりでしょ? ダメなものはダメでよくないの?』
「本気で怒れたらすっきりするのかもしれないですね……。でもきっとまだちゃんとこの目で見てないから実感がないのかもしれません。だから怒るまでいかないんですよ、きっと」
『んんん? やっぱりマーオのいうことは難しいや』
腕を組み首を横に傾ける精霊にマーオは苦笑してこれ以上は暗くなるだけだと思い話を切り上げた。
『あ!! マーオマーオ! このまま行った先で何か襲われてるよ気をつけて!!』
「分かりましたこの先ですね。教えてくれてありがとうございます。では少し先を急ぎます! 何がいるか分からないから出来たら警戒だけでもお願いします」
精霊の突然の警告に慌てることなくマーオは次の行動を決め瞬時に願いを口にする。
『りょうか~い』
そして風の抵抗など感じさせない口調の精霊を一切気にすることなくマーオはどんどん速度を上げた。
この先で襲われているという場所へと急ぐために。