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「私は回りくどいことは嫌いだから単刀直入に聞くけどね、私らはここにいるお偉い様方に『勇者様のお情けで旅に同行させていただいてた』とか『勇者様も迷惑されている』とかいろいろ言われて追い出されたんだが、あんたはそのことを知ってたのかい」

 静かに話し始めたイースの言葉にアレクは力なく首を左右に振った。

「そうかい。じゃあもう一つ質問だけど、あんたは私らがいなくなったことを少しでも気にかけてくれたかい? 」

「勿論だ!! ……だけど皆は冒険者としてまだやらないといけないことがあるって、もう村に帰ったって伝えられてたんだ」

 項垂れ言うアレクに三人は聞きたいことの話し合いはしていたのか、それだけ聞くとイースは口を閉じ一方後ろに下がる。そして交代するようにルゲンが話し始めた。

「仲間が何も言わないで全員いなくなるの可笑しい。そう思わなかった?」

「勿論思ったさ。けど、その時にはもう皆いなくて……」

「なら、何で街くらいは見に来ない? 追い出されてからずっといた。でも一度も城から出てこなかった。何で? 心配じゃなかった?」

「……城下に降りれば無用な混乱を招くからと止められてたんだ」

 淡々と問いかけるルゲンにアレクの答える声が小さくなっていく。その姿にルゲンはため息を一つつくと口を噤んだ。その後キオンが問いかけた。

「勇者様にとって僕らは仲間と思ってもらえていましたか?」

「当たり前だよ!!」 

「……そうですか。それだけ聞けて良かったです」

 キオンはそういうと一度アレクに頭を下げて後ろに引いた。

「マーオ、時間を取って悪かったね。とりあえず聞きたいことは全部聞けたから後はあんたに任せるよ」

 キオンが下がったことを確認したイースは、今まで静かに成り行きを見ていたマーオに場を譲るために言葉を発した。

「もう悔いはないですか?」

 マーオが三人に最後の確認をする。その言葉に頷きを返されたことでアレクに向き直る。

 精霊の力の恩恵で周りの人間は未だに話すことも動くことも封じられている。そんな異様な雰囲気も一切気にすることなくマーオはアレクの顔をしっかり見るとここに来て初めて笑顔を見せた。

「アレク、村からの言伝です。『これから先何があっても村に戻ることを禁止する』とのことです。……この先少し騒がしいことが沢山あると思いますが、どうか愛した人を大切に守ってあげてください。それが私達が出来る精一杯です。もしもそれさえ破るなら今度こそ精霊の裁きを抑えることはできないと思うのでどうか村のことは忘れて下さい」

 マーオはそれだけ言うとアレクにニコリと笑い一つ頭を下げると、もの言いたげにマーオの事を見ていたマルクに向き直る。

「お騒がせしてすみませんマルク君」

「いえ、それよりもマーオさんが言ってた婚約者って勇者殿なんですか……?」

「はい。……まあもう『だった』なんですけどね」

 寂しそうに笑い微笑むマーオを痛ましそうに見つめるマルク。

「本当にそれで……、いやそれは関係ない人間が聞くことじゃないですね。それよりも私の縁者が失礼を働いたみたいで申し訳ありません……。お詫びと言ってはアレですが、此処の収拾は私にさせて下さい。あと城を出るのなら部下に案内させます」

「案内は無くても大丈夫です。それに今回のことはマルク君は全く気に知なくていいと思いますよ? ……それより、もしここに居づらくなったら精霊に祈ってください。一度だけ私の村まで案内してくれるようお願いしておきますから」

 最後の言葉はマルクだけに聞こえるよう精霊に頼んだマーオはそれだけ言うと待っていた三人に向き直る。

「お待たせしました。用事も終わりましたし帰りましょうか」

 マーオの言葉に三人が返事をするのを確認するかしないかのうちに、四人の姿は城の中から消えていた。




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