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嘘?



 誰も口を挿まないなか、否、誰も口を開くことも動くことも精霊の力で封じられているなか、マーオは何も言わない国王に質問の答えを要求する。

「どうぞお答えを」

「……そんなものは聞いたこともない。其方が何を考えそのような世迷言ばかり言うのかは分からぬが其方のこれまでの言動や行動が罪に問われることは分かっておるのだろうな」

 異様な雰囲気に呑まれそうになりながらも一切恐れを見せないその姿勢は立派だが、マーオにはその姿が愚かなものにしか映らなかった。遠い祖先たちが交わした約束とはいえ国を統べるものが国の未来を左右されるようなことを簡単に忘れてしまうことに、その瞳に呆れと軽蔑を一瞬のせる。だがすぐに国王に興味を無くしたマーオはアレクに向き直った。

「ねえアレク。貴方が連れて行った精霊は今どこにいるんですか?」

「……え?」

「精霊は『約定』を、約束を破ることをとても嫌うことは知ってますよね? 精霊は今どこにいるんですか?」

「あ、それは……」

 マーオはアレクについて行った精霊の所在を尋ねたがアレクは答えることが出来ずにいた。

『こっこだよ~』

「あれ……? いつの間にそんな所に来たんですか?」

 己についてきてくれた精霊とはまた違う姿をした精霊が右肩に乗っていて、マーオは驚いて話しかけた。精霊は己が認め『約定』を交わした者の近くにいるはずで、マーオの肩に乗っていること自体、本来はありえないことだと知るアレクもその事実に顔を青ざめさせた。

 己が国の姫に心を傾けたことに何も言われなかったからこそ、認められたのだと思っていたアレクにはその光景が自分の思い違いだと気づかされるには十分な光景だった。

『やっほ~。あんたアレクについて行ったのに何してんの?』

『ん? マーオが好きだって言ってた恋物語もどきの鑑賞?』

『なにそれ』

『何だろ? 冒険から戻ってきてからずっと様子見てたら、旅を助けてくれた仲間が追い出されたのにも気づかないし、権力が大好きなそこの人に嘘つかれて利用されそうになってるのも気づかないで恋だって勘違いしてるし笑えたよ?』

 マーオの肩で話し出してしまった精霊たちの言葉にアレクはみるみる顔が蒼くなっていく。

「そ、れはどういうことですか……?」

『え? 何が?』

「仲間が、追い出されたって。嘘って……」

 精霊の言葉にまったく身に覚えのなかったアレクは蒼い顔のまま精霊に問いかける。だが精霊はそんなアレクにも興味がないのか少し考えるそぶりをして話し出した。

『ねえ、イース、ルゲン、キオン。君たちは何でこのお城にいなかったのか自分たちの口から説明してくれる?』

「ああ、勿論。だけど私達の問題に移っていいのかい? ……マーオの方は話が付いたと思ってもいいんだね?」

「はい。私はもう聞かないといけないことは聞きましたので。お待たせしてすみません……」

「そんなこと気にしなくていいよ。話を聞く機会が出来たのもマーオのお蔭なんだから。きっちりけじめが付けれたってんなら良かったよ」

 イースはそう言いマーオに笑いかけると、マーオの反応を窺うことなくアレクに向き直った。

「さて、アレク……。いや、勇者様だったかね? お久しぶりだね」

「……イース」




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