突入
部屋の扉の前に音もなく近づくマーオたち。お互いに準備ができたかとアイコンタクトで確認し合うとマーオが魔法を使う。部屋の中を除いた目に見える部分にマーオが眠りの魔法をかけると、部屋の前に立ち警護をしていた騎士が膝から崩れ落ちる。気配を精霊が消しているとはいえ扉の開閉をしてしまえば気づかれてしまうための処置だ。
「ん? 何か中で揉めてないかい?」
先行していたイースが扉に手をかけるが、中から聞こえてくる話し声に一度止まる。そして中の様子を他の三人に声を潜めて知らせた。
「……今は取り込み中みたいですし、今日はもう帰りませんか?」
「何か聞いたことあるような……?」
扉の部分はそんなに厚みがないためか、扉に近づくと比較的大きな声で交わされる声は聞こえてくる。予想外の展開にこの後どうするか、四人は小さな声で話し合いをする。これと閃くものはなく、話が停滞してしまう。
「……悩んでも仕方ない。ここは突撃あるのみ」
そのまま進むことが出来ないかと思われたが、その停滞もルゲンの行動で破られた。各々好きに話をする中、ルゲンが目の前の扉に手をかけたのだ。
隣にいたキオンが気が付いて驚愕で止めようと手を伸ばすが、意に介すことなくルゲンは扉をあけ放った。
突然の出来事についていけなかった三人だったが、咄嗟の判断は早く冷静に室内を見回していた。
中の部屋は食事のためだけの部屋にしては広かった。王族が賓客を招待するために使う場所だけあり内装は豪華で、テーブルは何人も共に食事ができるようにと細長い。
そこにいたのはマーオたちの考えていたように王と王妃、勇者の婚約者だと噂される第一姫と勇者、使用人と思われる者と貴族と思われる者たちが何人もいた。そしてそれ以外に何故かマーオが王都に来るときに会った少年マルクとその騎士たちがいた。
マルクは声を荒げ王族一家と何事かを言い争っているためマーオたちの存在に気が付いていない。マーオが驚いていると四人以外で一番気配に聡い勇者アレクが乱入者に気が付き、驚きで目を大きく見開いている。
「……マーオ? 何で君がここに? それに皆も」
アレクの呆然としたような弱弱しい声に、今まで背を向けていたマルクも入り口の方へ視線を向ける。そしてマルクはマーオの姿をその目に映し驚きに目を瞬いていた。
「あれ? マルク君何でここにいるの?」
「……それはこっちの言葉ですよ、マーオさん。何でここに城の中にいるんですか」
お互いに驚きで尋ねるが、それは周りの騒ぎで途切れてしまう。
不法侵入をしたマーオたちを捕まえようと室内に待機していた騎士たちが動き出す。突然の知り合いの登場に驚いていたアレクだったが、騎士たちがマーオに剣を突き付けようとする姿に慌ててかばおうと動き出す。
だがそれは遅く、あと少し何もしなければマーオが切り付けられる距離に剣が近づいたとき、マーオについてきていた精霊が魔法を発動した。魔法が発動すると騎士たちは体が浮くと同時に勢いをつけ壁に叩き付けられた。
「お前たちは何者だ!! ここが王の御前であることを知っての振るまいか?!」
一瞬の出来事に王の傍近くに控えていた白髪の老人が声を荒げてマーオたちに問いただした。その言葉に侵入者である四人はそれぞれ違う反応をみせるが、イースが肩を竦めたのを見てマーオが代表で口を開いた。
「そちらにいる勇者の婚約者とその仲間たちです……?」
何と言っていいか迷ったマーオは関係性だけを口にした。その横で精霊が胸を張り威張るように右腕を王たちに突き付けている。その姿をみてマルクは自分の心配が当たってしまったことを知り、天を仰ぐように見上げると思いため息を吐きだした。




