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城の中で



 城門を抜けマーオたちは人通りのない廊下で立ち止まる。マーオとイース、ルゲンが王たちが食事をしている部屋に集まったかの確認を精霊に聞いている中、キオンは一人怖々と周りを見回している。

「……やはり精霊殿の魔法は強力ですね。隣を通り抜けるのに本当に気づかれないなんて不思議というか、凄い心臓に悪いです」

 城門を潜り、廊下を突き進む間にも何人もの人間とすれ違ったというのに誰一人として四人のことを気に掛ける者がいなかった。そのことにキオンは精霊の力に感心するとともに、あまりにも強い力に恐怖を感じてしまうことを止められず、思わずといったように呟いてしまう。

「何言ってんだいキオン。今更臆病風にでも吹かれたのかい? 本当にあんたは臆病もんだね」

「そんなこと言ったって仕方ないじゃないですか……」

 一人話に加わらず周りを気にして顔を青ざめさせているキオンを見て、イースは呆れたように口を開くがその言葉にもキオンは困ったように返事をする。

「キオンさん誰かに会っても声さえ出さなければ基本は見つからないから大丈夫ですよ。偶に感覚で気が付く人もいますけど稀ですし、ばれた時は眠りの魔法を使えば一発ですし」

「いやそんな簡単に言ってますけど、マーオさん本来眠りの魔法も上級魔法に分類されるくらい難しい物ですからね?」

「え? でも村では子供でも使えるような簡単な魔法ですよ?」

 胃のあたりを抑えながら訴えるキオンにマーオは何がそんなに難しいのかと首を傾げる。

「……本当にマーオさんのいた村はどうなってるんですか、上級魔法を子供が使えるって。そんな危険な魔法を皆が使えるなんて犯罪とか悪戯が横行するものじゃないんですか? 普通」 

 何でもないことのようにマーオの口から語られる村の生活に、どれだけ怖い場所なのかとさらに顔を青ざめさせるキオン。

「犯罪は村の中ではまずなかったですよ? 基本的に魔法を使うときに悪戯しないように教えられますし、もし魔法で悪戯したら暫く魔法を使いたくないって思うくらいには怒られるので平和な村ですよ?」 

 昔を思い出すように話すマーオ。話す言葉は重く、何かを思い出して顔を青ざめさせている。

「……勇者たちが集まったみたい」

 そして一体何があるのか聞こうかどうか悩むキオンに、その話は終わりだと言わんばかりにニッコリとマーオが笑顔を向け、その一瞬の静寂にルゲンの声が割って入った。

「さて、遊びもこの辺にして御話し合いに行こうかね」

「きっと勇者、驚く」

「勇者どころかその場にいる全員が驚きますよ……」

「もし何かあった時の脱出は任せてください!」

『けちらすね!!』

 マーオたち女性陣が生き生きとした表情の中、キオンだけ哀愁を漂わせている。

「じゃあ無事にここを出たら皆で酒盛りでもしようかね」 

 気負うことなくそうイースが口にすると、四人はもう一度顔を見合わせ頷き合う。そして勇者たちが集まっているであろう部屋へと再び走り出した。



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