話し合い
「へえ、あんた彼奴と同じ村の出身なの」
「はい。イースさんとルゲンさん、それにキオンさんはアレク……じゃなくて、勇者様と一緒に旅をしたんですか?」
「ああ。てか彼奴のことは別にアレクでいいだろ。誰かが聞いてるわけでもないし」
自己紹介が終わり、お互いの紹介と勇者アレクとの関係を軽く話しをした。アレクのここ一年の様子を聞き、マーオは精霊のことだけを伏せアレクの婚約者だということ、真実を確認するために村から出てきたことを掻い摘んで話した。それを聞き、イースたちはマーオの話に難しい顔をする。
「マーオ。あんたそれでよく笑ってられるね」
「ふふ。まだ実感がないのか、今は結構落ち着いてるんです」
「いや、あんたはきっと強いんだろうね。もしそれが私なら今頃怒り狂って呪詛を吐きまくってる自信があるよ」
迷いなくそう言うマーオにイースは感心したように声をかけた。
「それよりも皆さんは魔王を一緒に倒しに行ったんですよね? 私にはよく分かんないですけど普通なら報酬の話なんかもあるだろうからアレクと一緒にお城にいるものじゃないんですか?」
話をするごとに特にキオンの痛ましいと言わんばかりに顰められていく表情に、話を続けるべきではないと思ったマーオは話を変えるために三人に話をふる。
だがそう聞いた瞬間に三人の表情が硬いものに変わり、マーオは話題を間違えたかと後悔した。
「確かにその通りなんだけどね、お城の偉い人たちってのは私達みたいな庶民が手柄をあげるのは気に入らないみたいでね、難癖つけて追い出されたのさ」
「え? でもそれならアレクだって庶民ですよね?」
「勇者は神の遣わした使者。だから人の世界の地位には縛られない。らしい」
「は? 何ですかそれ?」
「この国の偉いえっら~い王様が言った言葉だよ」
食事中だったマーオは思いがけない話に持っていたフォークを落としそうになり慌てて握りしめなおす。
「それで僕たち王様の謁見の後すぐ城から放り出されたんです。二度とここに顔を出すなと言われまして……」
「ええ?! どれだけ無茶苦茶なんですか?! この国を、いえ、この世界を救った英雄の皆さんを追いだしたんですか?! ……あれ? でもアレクは? アレクは何も言わなかったんですか?」
三人の言葉に訳が分からないとマーオは話を咀嚼しようとするが頭が付いて行かない。どんな理由をつけても英雄と崇められるはずの人間が虐げられることが理解できないのだ。
「私らが国王様に謁見してる時、彼奴はいなかったよ」
「え?」
「第一姫が勇者に熱を上げてるのは皆知ってる」
「まあ、あれは勇者の肩書にすり寄ってるようにしか見えませんでしたけどね」
「ようするに“勇者殿”には上手いこと言って納得させたんだろうよ」
「そんな、皆さんはそれでいいんですか?! それにアレクが知ったら何とかするはずです!!」
「よくはないけどね……。追い出されてもう七日は経ってる。だがアレクからの連絡も何もないんだ。なら今の状態は“勇者殿”も承知のことだと思うのが普通だろ?」
そうイースが言うと三人とも諦めたようにため息をついた。それぞれに思うところはあるのか、三人とも言葉がすらすら出てくる。だが、出会った最初のように怒りに染まることはなく静かに食事を再開するだけだった。
だけどマーオにはその言葉の中に諦めや虚しさが含まれてるように感じてしまい、いてもたってもいられなかった。
「なら皆さんもアレクにあって今回のこと全部確かめに行きましょう!!」
気が付けば勢いよくそう声を張り上げていた。




