私は「キープ」なんですから、いなくなっても困りませんよね?
「暇をもらう?」
「はい」
「暇をもらうってなんだ? いや、意味は知ってる。自らクビになるってことだろ?」
俺は言い、少しばかり考え込んだ。
が、正直よくわからない。
俺はこの国の公爵家の長男で、伯爵位を持った人間だ。
名前はジュリアン・アシュベリー。
大鴉みたいな黒髪にエメラルドの緑眼、背はそんなに高くないが均整の取れた体つき、剣術も勉学も困ったことはなく――つまり、完璧な御曹司だと思ってくれたら、それでいい。事実なので。
僕は貴族学校の学生会長室で、ノエルと向かい合っていた。
ノエルは俺と同い年、十七歳の女だ。
すとんとした長い髪はつまらない茶色、目の色も同じ。
顔はちょっと可愛いけど、それだけ。
身分は隣の国の商人の娘だとかなんだとか、とにかく大したことがない。
高貴さも個性も全然ないし、何を言われてもなんとなく薄ら笑っている。
そんな彼女が、お暇する?
「それって、退学するってことか?」
「退学というか、転校を……」
「は! 転校!! 一体誰に断って?」
「先生方と、親族に」
「俺は? 俺は、おまえの、元婚約者だぞ!? 最初に相談すべきだろう!」
僕は呆れ果てていた。
ノエル、このばか!
ここはこの国一番の貴族学校だ。
隣国の平民のおまえが入学できたのは、うちの口利きと、寄付が生み出した奇跡なんだ。
なのにどうして転校なんかするはめになったんだ?
おまえが自分から望むわけがない。
ということは……成績か。
成績が悪すぎて放校か、そうなんだな?
ばかノエル!!
「わかった……理解した。ノエル、確かにおまえの成績は突出したものじゃなかった、いつも平均点のちょっと上くらいだろ? それくらいじゃあこの学校にいるのはキツい、わかるよ。だけどどうしてもっと早めに言わない!? 言えば、俺の金でどうとでもしてやったのに!」
「えっ。で、でも、そんなことでお金を使うのは、無駄なのでは……」
「無駄だよ! もちろんだ、おまえに使う金のすべてが無駄だ! おまえは俺に無駄金ばっかり使わせる! 昔っからそうだ、うちに越してきたときから、ずっと!」
俺は思わず声を荒らげた。
だってそうだろう、ノエルはずっとこうなんだ。
彼女は遠い親戚筋の女で、十二歳でうちにきた。
親がこっちの国に引っ越してくるまでの間、うちに面倒を押しつけられたんだ。
俺と両親は親戚の無茶な願いに呆れつつ、それでもノエルをうちの旧館に住まわせてやった。
ノエルはとにかく変な女だった。
何せ、自分で働くのが好きなのだ!
住み始めた直後に旧館をのぞいてみたら、埃と蜘蛛の巣でどろどろになって掃除をしていた。
『おまえ、何考えてんだ!?』
『ジュリアンさま。いらっしゃいませ』
『いらっしゃいませじゃない! 貴族は自分で掃除なんかしないんだ!!』
『でも、父さまと母さまは自分で掃除をなさいます』
『この、野蛮人! うわっ、虫!! 虫だ、虫が出た!!』
『虫、怖いんですか?』
『怖いに決まってるだろ!! く、来るなっ、来るなーーーっ!!』
室内に虫とか、信じられない! と俺が悲鳴を上げると、もっと信じられないことが起こった。
ノエルが、箒で虫を掃き出したのだ。
『ありえない……なんでそんなことができるんだ……!?』
『ジュリアンさま、虫が怖かったんでしょう? もう、これで怖くないですよ』
『………………』
なんだ、こいつ。俺のために虫を追い出したのか。
俺はなんともいえない気分になった。
微笑むノエルは、ちょっとだけ可愛いな、とも思った。
でも、やっぱり変なやつだな、とも思った。
俺はそれから、段々とノエルのところへ出入りするようになった。
ノエルはずっと変な女で、些細なことでにこにこ笑う。
使用人と同じ食卓でメシを食わせてもにこにこだし、昨日の硬くなった菓子を出しても目をきらきらさせるし、俺の代わりに本を読ませてもお礼を言ってくる。
変だ。
変すぎる。
でも――俺は徐々にノエルを理解した。
ノエルは多分、俺のことが好きなんだ。
だってそうだろう?
貴族の客人なら、ふつうは使用人と一緒にメシなんか食わせたら、屈辱だと言って家を出て行く。
ノエルがそうしないのは、俺とひとつ屋根の下にいたいからだ。
硬くなった菓子だって、ふつうは食わない。
俺がやったから、ノエルは喜んだんだ。
本だってそう。
あんなめんどくさい本を読んであらすじを伝えるなんて、俺のことが好きじゃなきゃできるわけがない。
そんなに好きなら、まあ、構ってやらないこともない。
俺は完璧な御曹司だからな。
取り巻きへの対処も必要だ。
俺は父に進言し、十五歳になったノエルを自分と同じ学校に編入させてやった。
それまでは図書室で自習だったけど、こいつは俺が好きなんだ。
学校でも、俺の傍にいたいと思うはずだった。
『学校!? 嬉しいです、ジュリアンさま』
『だろうな。ただし、編入には金がたっぷりかかった』
『そうなんですか? ならば……』
『これはおまえの借金だ。借用書にサインをしろ』
『は、はい』
『おまえみたいな変な女に、さらっとこれだけの金を貸す人間なんか滅多にいない。恩に着ろよ』
『そうですね。ありがとうございます、本当に』
『ちなみに、だが』
『はい?』
『俺のことが好きなら、一応婚約者ってことにしてやってもいいぞ』
『え……?』
ノエルが驚きに目を瞠った。
俺は鼻をこすって視線を逸らす。
……誤解しないでほしい。
別に、俺が本気でノエルが好きだとか、そういうわけじゃない。
これはただの親切心だ。
何せ俺の通うのは貴族学校。
校内でも家のランクが大切になる。たまーに成績優秀な平民が入ってくることもあるけど……親の庇護もないばか女は、どうしたって虐められがちだ。
だから俺が、婚約者ってことにして庇護してやろうと思っただけだ。
他にまともな婚約者候補が出てきたら、すぐに関係は解消する気だった。
『婚約者……』
つぶやくノエルの瞳に、夕方の光が反射している。
このときだけは、地味な茶色の目が、蜂蜜色みたいに見えた。
――ちょっとだけ、きれいだった。
『ありがとうございます、ジュリアンさま』
ノエルはやがて目を伏せ、優しく囁いた。
その声は俺の胸に、ちょっとだけ染みた。
恋じゃない。別に、全然本気なんかじゃない。
ただ、ノエルの恋心が伝染したんだ。
パンに蜂蜜が沁みるみたいに、ノエルの甘さが、俺にも沁みた。
ただ、それだけの話。
それから二年ほど、俺たちはうまくやっていた。
俺の婚約者のノエルには、あっという間に人間が群がった。
どうせノエルを通して俺とお近づきになりたい奴らだろう。適当に追い払えばいいのに、ノエルにはそれがうまく出来ない。いちいち相手にして、愛想笑いばかりしている。
だから仕方なく、俺が追い払う役になった。
『おい、ノエル! 誰と喋ってるんだ、こっちに来い!』
『はい、ジュリアンさま』
『おい、ノエル! 次の授業の宿題、ないぞ?』
『すみません、私が持ったままでした。こちらをどうぞ』
『ノエルは放課後は忙しい。そうだよな?』
『はい、魔法樹のお世話もありますし』
たまには食いついてくるやつもいた。
『でも、今日はみんなで勉強会をしようっていう話だったの。試験も近いし、ノエルさんは魔法学には詳しいから、是非一緒に、って』
『勉強会? そんなもん言い訳で、どうせ遊ぶ会なんだろ? ノエルは俺の婚約者だ。他のやつと遊ぶなんてふしだらだよ。そうだろ、ノエル?』
『はい、もちろんです、ジュリアンさま』
ノエルはあいかわらずにこにこし、周囲は変な顔をする。
俺の悪友の男友達は、下世話な仕草と共に聞いてきた。
『勉強会はふしだら、かあ。なるほどな。おまえらってひょっとして、もう深い仲なわけ? 婚約者同士だと、やりたい放題?』
はあ? ばかばかしい。
俺がこんな、笑うとちょっと可愛いだけの女にがっつくかよ。
長い髪がさらさらっとしてるのは好きだし、俺が気に入ったっていう香りを必ずつけてくるとことかは、かわいげがあると思っちゃいるけど。
俺は相手を心底ばかにしながら、せいぜい調子をあわせてやった。
『まあ、そういうこともあるかもな。こんな顔して着痩せするぜ、ノエルは』
『ははっ、ひで~~! そんなんみんなの目の前で言ってやるなよ!』
『こらっ、もう! 男子たち、下品だよ。ごめんね、ノエル。私たち、もう行くね』
悪友はゲラゲラ笑い、他のメンツは薄笑って、俺たちの前から立ち去った。
変な奴らだ、と振り向くとノエルは真っ赤な顔をしていて、熟れたての林檎みたいだった。
『行くぞノエル。まだ魔法樹の世話が残ってる』
『……はい。………………あの』
ノエルがちょっと真面目な声を出す。
俺はさっきの話を引きずりたくなかったから、彼女に学生会室の鍵を放り投げた。
『あ、用事思い出したわ。魔法樹の世話、任せた。終わったらとっとと帰って来いよ。読まなきゃならない魔法書が溜まってる』
『………………』
『おい、返事は』
『…………はい』
ノエルは小さな声で答え、俺の言うことに従った。
ノエルは、そういう女だ。
呼べばいつでも来たし、俺のためになんでもやった。
俺に本命が出来たときは、婚約破棄も素直に受け入れた。
そりゃそうだろう、ちゃんと住まわせてるし、食わせてるし。
虫を追い払うのも、続けてやってるんだし。
彼女に不満はないはずだった。
なのに、俺になんの相談もなく転校?
本当に信じられない。
おかしい。
なんなんだよ、なあ?
俺は改めて、学生会長室でノエルと向き合う。
深呼吸して、心を広くして言う。
「本当にしょうのないやつだな……帰ったら父上と話す。退学の件はどうにかしてやるから、先に家に帰っていろ。今日も読む魔法書がたくさん――」
「ですが、もう、迎えが来ているのです」
「迎え? どこの」
「王立魔法学校です」
ノエルは静かに言い切った。
俺はぽかんとする。
こいつ、ついにおかしくなったのか。
「王立魔法学校? ばかなのか?」
「いえ、王立魔法学校は、魔法学の成績がトップの者しか入れない学校で、将来的には魔法省への着任が約束される場所なので、ばかは入れなくて」
「そのくらい知ってる!! どうしておまえがそんなところに?」
怒鳴る俺を前に、ノエルは少し考えこんだ。
そして、穏やかに笑って言う。
「この家では、魔法書が読み放題でしたから」
「うちのおかげか」
「はい。それと、学生会長室の魔法樹も、世話をしていましたし」
「この学校のおかげか」
「はい。あと、ジュリアンさまの宿題を全部代わりにやっていましたし」
「なら、それは俺のおかげだな」
「はい、そうだと思います。全部、ジュリアンさまのおかげかと」
深くうなずくノエルの目に嘘はない。
きらきら、ぴかぴか、いつでもなんとなく楽しそうで、いつでもなんとなく優しく俺を見上げている。なぜって、この女は俺が好きだからだ。
何をしたって、ゆるぎなく、俺のことが大好きなんだ。
「なのに、どうして、俺のもとを離れる」
「それは……」
ノエルは少し口ごもったのち、俺を見上げて言った。
「ジュリアンさまには、新しいお世話係ができたようなので」
「お世話係ってなんだ」
呆然と聞くと、ノエルは穏やかに続ける。
「婚約者って、こちらの国では、お世話係という意味ですよね?」
「はあああああ!?」
何を言ってるんだ、このばかは!!
俺は唖然とした。開いた口が塞がらない。
呆然としてるうちに、ノエルはささっと身の回りの荷物をまとめた。
「とにかく、私の役目はおしまいです。ジュリアンさまは、次のお世話係さんと仲良くなさってください。王家の五女でいらっしゃいましたっけ、立派な方でよかったです」
「いや、待て」
「今までありがとうございました。それでは」
ノエルは一礼し、部屋を出て行く。
俺はあまりの怒りに棒立ちになり、次に彼女を追いかけた。
「ノエル!! 戻ってこい!! おまえは、俺なしじゃ生きていけないっ…………、うわっ!! なんだ!?」
三歩進んだところで、俺は前につんのめった。
なんだ、と振り返ると、そこには巨大な魔法樹がある。
部屋の中央の円形水盤の中央から、天井に向かって生える魔法植物。
蔓の固まりのようなそれがほどけて、俺の足にからんでいた。
こいつは正しく世話をしていれば、学園中に魔法の力を満たしてくれる。
世話が行き届かず、魔力が足りなくなると――人間を蔦で巻いて、直接魔力を吸収する。
そう、今みたいに。
「う、うわああああ!! きしょっ、きもちわるい、おい、ノエル! ノエル、どうにかしてくれ、ノエル!!」
俺は叫んだ。
あの時の虫みたいに、この蔦もノエルにどうにかしてほしかった。
いつでも笑って、泥だらけになっても可愛くて。
なあ、助けてくれ、ノエル、ノエル、ノエル、ノエル――!!
ところが今日だけは、呼べど叫べど、ノエルは戻ってこなかった。
◆
「――……ジュリアンさまが、困っているような気がする」
魔法学園へ向かう馬車の中、私はなぜかピンときた。
隣では、若い執事のアレンが派手に鼻を鳴らす。
「そりゃ困るでしょうねえ、お嬢さまがいなくなったら」
「お屋敷で三年、婚約者としては二年、お世話係を務めましたものね」
懐かしいわ、と思っていると、アレンは横で真顔になった。
「聞いてもいいですか」
「なんでもどうぞ、アレン」
「なんだって大陸一の大商人の娘、ノエルお嬢さまが、あのばかのお世話係をやってたんです?」
「多分ジュリアンさま、うちを格下の家だと思っていたのでは?」
「はあ!? うちが隣国で大商人になってるのを、知らなかった?」
「ええ。この国は貴族が一番という価値観ですし」
「にしたって、世界情勢を学べば一発でしょう! どうしたらそこまで無知になれるんだ……」
アレンは理解不能、という顔だ。
私は少し考える。
「思うに、彼は臆病すぎるのだと思います。学ぶのが怖いんじゃないですか?」
「そんな御曹司がいますか!?」
「いますよ。使用人のことも怖かったみたいだし」
「貴族なのに!?」
「使用人部屋で話を聞きましたが、指示を出すのが壊滅的に下手みたいで。何度か聞き返すと、真っ赤になってどこかへ行っちゃうらしいです」
「うわあ」
「教師に質問するのも、採点されるのも怖すぎたみたいで、私に宿題やらせてましたし」
「いいとこないじゃないですか……」
「かわいいところはありました。虫も怖くて、きゃーっ! って女の子みたいな悲鳴を上げて縮こまるんです。……かわいかったなあ」
出会ったころのジュリアンを思い出し、私はほんのりと笑う。
一生懸命ふんぞり返っていた、ひょろひょろの子ども。
いつも周りにわめき散らして、そのせいでいつもひとりだった。
つんつん棘を出しているハリネズミ。
そのくせ、こんな小さな虫が嫌いだなんて!
「虫を追い払うと、すぐに懐いてくれました。しまいには婚約者だなんて! お世話係になってくれって言うのも怖かったんでしょうね。かわいいなあ、婚約者。ふふ。次の婚約者さん、ちゃんとお世話係やってあげるかなあ。多分しないでしょうねえ」
「それなんですけど……」
「なんですか?」
「婚約者っていうのだけは、本気だった可能性はないですか? ジュリアンさまは、お嬢さまに惚れてたんじゃ?」
アレンに言われ、私はころころと笑ってしまった。
「ないです、ないです。あんなに子どもなのに、恋なんかできるわけがないです。政略結婚だって、もちろん無理です」
ジュリアンは子どもだ、あまりにも子ども!
婚約なんて言いつつ、私の手を握ることすらできなかった。
周囲に揶揄われると、必死に色事の話をしようとしていたけれど――決まって顔が真っ赤になっていて、周りにもあざ笑われていた。
かわいいジュリアン、かわいそうなジュリアン。
私はあなたを、籠の中の小鳥だと思って見ていた。
私とは関係のないところで、ぴいぴいと鳴く小鳥。
ひょっとしたら――あなたも、私を同じように見ていたのかもしれない。
私たちの距離は案外同じだったのかもしれない。
どっちにしろ、私たちの間には鳥籠があったのだ。
「あの子はただ、便利だから私を傍に置いておきたかったんだと思います」
「はあ……。それを受け入れるなんて、お嬢さまはお人好しだな」
「そうでもないですよ。彼が次のお世話係と上手く行くかを、見届ける前に出て行くんですから」
「そんなの、お嬢さまが気にすることじゃありません」
「そうですか?」
「はい。お嬢さまにはお嬢さまの人生があります」
アレンに言い切られ、私はにこりと笑う。
「もちろんです。私の人生はこれから。――ちなみに、お父さま、お母さまは?」
「やっとこちらの国へお引っ越しが済んだところです。学校に挨拶が終わったら、学校長の館で夕食を、とおっしゃっておられます」
「よかった。ちなみに、ジュリアンの住む館は?」
私が問うと、アレンは少し意地悪く笑った。
「お嬢さまがおっしゃるから、あのままアシュベリー家に貸しておくそうですよ。相変わらず、家賃滞納すごいですけど」
そうなのだ。アシュベリー家はうちの遠縁だが、領地経営に失敗し、家計はすっかり傾いている。そのことを皆に知られたくないといって、うちから随分借金をしているそうなのだ。屋敷もうちが買い取って貸してあげている状態なのだが、それも内緒だ。
私は目を伏せて微笑む。
「まあまあ。それも、いずれジュリアンさまが真実を知って、立て直したらいいですよ」
「できるかなぁ、そんなこと」
「希望を持ちましょう、希望を!」
明るく言い、私は馬車の窓をのぞいた。
そこにはまったガラスには、うっすらと私の姿が映っている。
生まれたままの豊かなくせっ毛を肩に垂らし、はつらつとしている私。
この私も、私の好きな私。
けれど、ジュリアンが好きな私は違った。
魔法で髪をまっすぐにして、大人しそうで、大人っぽくて。ジュリアンのあとについて回る、穏やかな私。
ジュリアンがうっとりと見ていた、私。
そんな私のことも、私は結構好きだった。
いつか私が大魔道士になったなら。
そのとき、すべてを知ったジュリアンが私にすがって「助けてくれ!」と言ったなら。
あの、虫におびえた少年のような顔で、にもう一度私を求めたら。
「……案外そのときは、一緒になるかも」
「なに? なんですって?」
「なんでもないです」
私は言い、窓の外を指さす。
「魔法学校が見えてきましたよ! 私の、新しい人生の始まりです」
【END】
元サヤにはなりそうで、きっとなりません。
多分。きっと。
……ならないよね……?




