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救いを貴方へ ~痛みの先に~  作者: 湘南乃炎
五章 回帰

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十四話 舞戻る

「見えた──」


それから俺たちは帝国領内を南下し、帝都を目指して進み続けていた。

探索者協会を通じて、最後に連絡を取った際、父様の居所は帝都だと聞いていた。


以前、師匠と別れ、たった一人で帝都へ向かった日のことを思い出す。

あの時と同じく、巨大な城壁は空を支えるように高く、威圧するように広く立ちはだかっていた。

初めて訪れたあの日、俺はその迫力に僅かな不安を覚え、しばらく足が止まった。


だが、今となっては──。


「久しぶりだね、ダレン」

「ああ、そうだな」


隣で懐かしさを噛みしめるように言うクラリスに、俺は小さくうなづいた。


「あれが帝都……」

「ダレンさんとクラリスさんが初めて会った場所でもあるんですよね?」


城壁を前にして圧倒されているフィデルと、そんな城壁を見上げながら問いかけてくるルシア。


「そうだよ。あの時の私は騎士だったからね。今となっては、すっかり立場も変わったけど」

「剣聖にも認められた剣士だからな。今なら五剣にだってすぐなれるぞ?」

「今の私には必要ないよ。それより──」


そう言ってクラリスは、ルシアに向けて俺との初めての出会いを語り出した。

ルシアは真剣に頷きながら聞き込み、そんな二人を見て俺は苦笑する。


鍛錬に明け暮れた騎士駐屯所。

多くの出会いがあった探索者協会。

クラリスとよく通った喫茶店。

そして、俺の紅が煌めき輝いた城。


そのすべての記憶が、一気に胸の中を駆け巡る。


「──次はダレンの番だぜ? 英雄さんよ」


感慨深く城壁を見つめる俺に、師匠がいたずらっぽい笑みを向けながら言った。


――――


列を成す検問へ並び、ついに俺たちの番が来る。

見慣れない馬車に、兵士は首を傾げ、少しばかり警戒しながらも手続きを始めた。


懐かしさすら感じる探索者証の提示。

その証を確認した兵士は、目を見開いて叫んだ。


「ダレン・クローヴァン……え!? ダ、ダレン・クローヴァンさん本人ですか!?」

「そこにそう書いてあるだろう」

「た、たしかに……それに特級……ま、間違いありません。どうぞ、お通りください!」


なぜか荷台の確認すらされず、他のメンバーの審査も省かれたまま通される。

そのまま俺たちは馬車を進め、帝都の中へと入っていった。


「まずはどこへ向かうんだ?」

「騎士駐屯所、だな。父様がいるとすれば、まずはそこだろう」

「グライスさんやエドさんに会うのも久しぶりだなぁ」


師匠の問いに返答すると、クラリスが懐かしい名を口にした。

どちらも帝国の『五剣』であり、騎士団長と副騎士団長でもある。

彼らとの日々を思い出し、自然と表情が緩む。


フィデルは帝都の街並みに完全に呑まれ、まるで田舎から出てきた青年のようにキョロキョロしている。

その横でクラリスが丁寧に補足説明をしていた。


「ダレンさんは帝都出身じゃないんですよね?」

「ん? ああ。帝都の近くの街だがな」

「そこにも行ってみたいです」

「もちろん。一度寄るつもりだ」


そんな会話を交わしながら街を進むと、帝城の巨大な塔が徐々に視界へ迫ってくる。

近づくほど、その威容はかつてと同じ、いや、それ以上に偉大に感じられた。


そのまま道を進み、右へ曲がる。


そして──ついに見えた。


懐かしい、騎士駐屯所の姿が。


駐屯所前で止まった馬車を怪訝に思ったのか、門番の騎士が二人、こちらへ歩み寄ってくる。


「お前たち、ここへ何用だ? それにこの奇怪な乗り物はなんだ?」


強い口調で問い詰める騎士に対し、俺が馬車から降りようとすると、クラリスも同時に身を乗り出した。

二人で地面に降り立ち、門番の前に立つ。


どこか見覚えのある展開に、俺は頭の片隅をくすぐられる感覚を覚えた。


「騎士団長と副団長につないでほしいんだが……」

「お前のようなものが──」

「おい……この人って。それに──クラリス一級騎士殿!?」

「あ、な、何のこと──」


俺の言葉に、ひとりがさらに詰め寄ろうとした瞬間、もう一人の騎士が俺とクラリスを見た途端に血相を変え、相方の口を押さえた。


「し、失礼しました! ダレン殿とクラリス殿ですね! すぐに呼んでまいります!」


そう叫ぶと、なぜか門を開けっぱなしのまま騎士を抑え込みつつ駐屯所の中へ駆け戻っていった。


「どうしたんだ?」

「さ、さあ?」


馬車の中から顔をのぞかせた師匠に、俺は首を傾げながら返した。


「ここも久しぶりだね」

「そうだな。あの時はクラリスに支えられてばっかりだった」

「そうでもないよ。私はただ少し背中を押しただけだから」

「それでもだ」


俺とクラリスは駐屯所の建物を見つめながら、ぽつりぽつりと回想を語り合う。

しばらくすると、門番の騎士に先導され、さらに二人の人物が姿を現した。


その顔立ちは――見間違えるはずもない。胸の奥から懐かしさが込み上げる。


二人は俺たちの前に立つと、まっすぐな眼差しでこちらを見据えた。


「お帰り。ダレン君、クラリス君」

「ご苦労だったな。ダレン、クラリス」


エドとグライス。

あの日と変わらぬ姿で、そこに立っていた。

実際にはそれほど長く離れていたわけでもないのに、なぜか胸が熱くなるほど懐かしかった。


俺とクラリスは、僅かな間を置いて同時に口を開く。


「ただいま。エド、グライス」

「ただいま戻りました。エドさん、グライスさん」


久方ぶりの再会に、四人の表情がやわらかく緩んだ。


――――


「──それじゃあ改めて。二人とも、お疲れ様」


中へ通され、席に着くなりエドが開口一番にそう労った。


「ありがとうございます、エドさん」

「ああ。──けど、まだ終わりじゃない」


俺の返しに、一瞬だけエドとグライスの表情が強張った。

しかし、それもすぐに緩み、穏やかな顔に戻る。


「それは確かにそうだがな。けど、本当にご苦労だった。話には聞いているぞ」


グライスは、俺たちの功績に少し脚色を加えた話を、まるで自分の武勇伝のように語り出した。

クラリスが要所で冷静に訂正を挟み、場には笑いが生まれる。


その最中──


「──そういや兄貴。アレス・クローヴァンはいるか?」


今まで黙っていた師匠が、不意に口を開いた。


エドが驚いたように目を見開き、師匠を見つめる。


「あなたは……」

「アルケ──父様の弟で、俺の師匠でもある。

師匠が言った通り、父様がここにいると思ったんだが……いるのか?」


エドは俺と師匠の顔を交互に見て、状況をようやく把握したようだった。

答えようと口を開きかけた、その時――


ゆっくりと部屋の扉が開き、懐かしい影が姿を現した。

皆さん、無事大会終わり、落ち着くことができました。

まず結果としては、ボディビル優勝、フィジーク二位で終えることができました!

食事制限もなくなり、やっと脳みそが回った状態で執筆できてます。


この状態で完結まで書き抜きますので、応援お願いします!

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