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救いを貴方へ ~痛みの先に~  作者: 湘南乃炎
三章 心頼

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十三話 「信頼」

俺はノクスへ痛みを感じながらも突貫する。

風に紛れ消えるノクスの攻撃。無数に襲い掛かる根。

そのすべてを感じ取り、避けながら剣で対抗した。


「ほんと反則ぅ」


根が溢れる中で、風に消えるノクスの声が響く。

六感すべてを総動員し、俺はその剣先を捉えた。

振り返りざまに剣を振るい、迎え撃つ。

愉快そうに笑っていたノクスの顔は、次第に険しさを帯びていく。


「ゼラニウムぅ!」


叫びと同時に、襲い掛かる根から無数の花が咲き乱れる。

花弁が開き、鋭い刃のように俺を襲った。

花と根の猛攻は止まらない。だが、俺はノクスの動きを見失ってはいなかった。

花に紛れ迫るその姿を捉え、袈裟斬りにする。

直前でかわされたが、確かに斬撃は届いていた。

視界の端で、腕を負傷し後退するノクスの姿を確認する。


「二年前と同じで、逃げるのか?」

「うるさいぃ!やっぱキミはここで殺しておくべきだねぇ!」


攻撃はさらに激しさを増した。根と花が入り交じり、襲い掛かるすべてを俺は薙ぎ払う。


「一人じゃ何もできないって教えてあげる....」

「俺は――一人じゃないさ」


攻撃を交わしながら、俺から伸びた『根』はクラリスとフィデルへとつながる。

二人からの思いと力が流れ込む。負傷しながらも俺を見据えるその瞳には、確かな信頼があった。

俺が寄せる信頼もまた重なり、やがて形となり、力となる。


俺を纏う紅い光はさらに輝きを増し、体は羽のように軽くなった。

怯えたように目を見開くノクスの姿が映る。

今まで恐れていたものは、これほどまでに小さな存在だったのかと実感する。


「キミがどれだけ足掻こうと、木鉢と国王を止めなきゃこのままだよ!」

「果たして……そうか?」


ノクスの声と同時に、扉の奥から王子が現れた。

国王に引導を渡すのは俺たちではない。

王子は状況を瞬時に理解し、剣を強く握り締めて王座へと駆ける。

それを阻もうと根が王子に迫るが、俺が射線に入り斬り伏せた。

しかし数本は打ち漏らし、王子へ襲いかかる。

王子が剣を構えたその瞬間――


――光剣と蒼穹が煌めく。


「やらせないよ!」

「いっけええ!ルイ!」


クラリスとフィデルの援護が加わり、王子を襲う脅威は断たれた。


「あああ!」


王子は叫びと共に、木鉢ごと国王を剣で貫いた。


「父上っ! あとは私に……お任せください……」


王子は最後の言葉を国王へと告げ、その最期を見届ける。

国王は一瞬だけ瞳に光を宿し、静かに眠るように目を閉じた。


剣に貫かれた木鉢は音を立てて砕け、破片が床に散らばる。

その瞬間、無数に伸びていた根の動きは止まり、やがて枯れるように崩れ落ちた。


この場に残る脅威は、ノクスただ一人。

姿を消し、再び逃走を試みようとする。


――遅い。


俺は即座に反応し、何もない宙へ剣を振るった。

ノクスも危機を察し、姿を現して剣で受け止める。

力づくで弾き飛ばすと、体を逸らしたノクスの胴は大きく開いた。

その隙を逃さず剣を引き、胸へ突き立てる。


石が砕ける音が響き、場を覆っていた異様な力も消えていく。


「ごほっ……!」


ノクスは血を吐き、悟ったような目で俺を見た。

黒い剣を通じてノクスの感情が鮮明に伝わる。

溢れる憎悪、非情、そして偽りの世界への破壊衝動。


「キミの……道はぁ、まだ茨だらけぇ、だよぉ? それでも……抗うぅ?」

「それでも、進んでみせるさ……」

「ははっ……そうかいぃ。ヴォイド様にぃ、よろしくぅ、ねぇ……」


ノクスは最後にそう呟き、剣は自然と抜け落ちる。

そのまま崩れ落ち、動かなくなった。

謁見の間は静寂に包まれ、すべての戦いの終わりを告げていた。


「勝った……のか? 俺たちは?」

「そうだ。私たちの勝利だ」


フィデルと王子は互いの肩を叩き、成し遂げたことを分かち合う。

俺の傍には、体を抑えながらもクラリスが歩み寄る。

同時に王子がフィデルを支えながらこちらへと来ていた。


「勝てたね……」

「ああ。皆のおかげでな」


俺の言葉にクラリスは微笑み、首を横に振る。


「ダレンが私たちを信じてくれたからだよ。私はそれが、ただただ嬉しい……!」


溢れんばかりの笑顔は、差し込む光のように静寂を照らした。

その後ろで、フィデルも王子も俺を見つめていた。


「ありがとな。皆」


俺はそう告げた。

俺を縛っていた鎖は徐々に外れていく。


――だが、まだ残されたものがある。


最後に残った枷を思う。未だそれは重く、俺の足を縛り付ける。

だが今は、支えてくれる仲間がいる。その支えを受け入れることができる。


俺は顔を上げ、虚空を見上げた。


ーーーー


それから一週間が経ち、暫定の王として王子は休むことなく動き続けていた。

混乱に包まれていた王都を収め、二分しかけていた貴族たちを、この短期間で形だけでも従わせてみせたのだ。

リレイズ伯爵も補佐として尽力し、その間、別邸に王子の姿が現れることはなかった。


俺たちは怪我を癒すため、伯爵の計らいで別邸に逗留し、しばしの休息を与えられていた。


そして今日。正式に王子が王として即位することが認められる戴冠式が執り行われていた。

あれほど混乱に塗れていた王都は、わずかに落ち着きを取り戻し、不安と期待を抱えた人々でにぎわっている。


「本当に最前列で参加するのか……?」

「何をおっしゃいます、ダレン殿。あなた方はあの戦いで大きな貢献をされた。そのうえ、新国王のご友人でもあるではないですか」


式の前にリレイズ伯爵にそう言われ、帝都同様の堅苦しい場に出ることに俺は思わず顔をしかめた。


「我慢しなよ、ダレン」

「クラリス、そうは言ってもな……」

「いいじゃねぇか。ルイの晴れ舞台なんだ。一番近くで見てやろうぜ」


フィデルはむしろ楽しみにしている様子で、その肝の据わり方に俺は素直に感心した。


多くの民衆が集まり、城門の正面には大きな舞台が設けられていた。

王国の政治体制の歪み、そして『ペンタグラム』の暗躍を経て、この場を見守る人々の目には自然と強い力が宿っていた。

緊張感の漂う中、舞台に上がる一人の足音が響く。


赤いマントを羽織り、王冠を戴いたルイ王子――いや、すでに国王となった青年の姿がそこにあった。

彼は深く息を吸い、胸を張って声を放つ。


「この度、王座を継ぐこととなった! ルイ・ヴィ・エイドリアだ!」


その声に、人々は耳を傾け、会場全体が静まり返る。

横を見ると、フィデルも真剣な面持ちでその姿を見つめていた。


「王国は今、大きな転換期を迎えている。他国への執拗な攻撃意識、民衆を顧みぬ政治体制……。これまで君たち国民には多くの苦労を強いてきた」


その言葉を否定する者はなく、むしろ静かな沈黙が肯定の証として広がっていく。


「これまでの私は弱く、その状況をただ見ていることしかできなかった。

――だが、今は違う!」


ルイは力強く続けた。


「私は国を、そして国民を想い、この冠を背負っている! だが私は完璧ではない! だからこそ、一人で背負うのではなく、皆と手を取り合い、新たなエイドリアを築いていこうではないか!」


若き国王の宣言に、民衆からは割れんばかりの歓声が沸き起こった。

一部の貴族までもが立ち上がり、惜しみない拍手を送っている。


「皆で築く国」――その言葉は、民衆の心を確かに震わせた。


その瞬間、新たな時代の幕が上がる。

――新エイドリアが誕生する瞬間であった。


主人公の成長を描くのって想像以上に難しいですね


ー感想を初めて頂いて、目ん玉飛び出るくらい喜びました!

ありがとうございます


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