十八話 『自己』
終盤。まさに二章クライマックス
ドキをムネムネさせながら、見ていってください
「ダレン、あ、あれは?」
「俺の....故郷のものだ。俺が償うべき相手の一人....だ」
俺はその場に現れたキールを見据えていたが、再び指の震えは止まらないが、俺はそれを手で押さえ必死に隠そうとした。
「キール殿。あの半端者は私が」
「いいや、僕がやるよ。アガット君は女の子の相手してなよ」
二人の会話は仲間のそれだった。やはり二人は『ペンタグラム』に取り込まれ、その一因となった様子が見られた。
「さあ、ダレン君。裁きの時間と行こうか」
俺は爆発を警戒し、あえてクラリスから距離を取りキールを引き付ける。しかし、キールも横から回り込み、クラリスを巻き込もうとする。
「そんなに大事かい!」
「っち!」
俺は仕方なく、クラリスを離すように足で押しやった。そして迫る二本の剣ではじき飛ばされる。
「がっ!」
体は床を転げまわり、受け身を取るが体中が痛む。口から血が吐かれ、骨の軋みも感じた。
しかし、俺は踏ん張りすぐに立ち上がる。闘気凝縮ですぐにキールへと迫る。
「君がそこまで、するのは、自分だけのためだろう」
「あああっが!」
キールも自身の爆発で、傷をかなり負っている。爆発の追撃はないが、単純な剣戟でも決定打に持ち込むことはできない。俺は痛む体に鞭を打ち、剣を振るい続ける。
「君は人を助けて認められたいだけだろ!今までの罪悪感をそうやって拭ってきただけだろ!」
キールの二本の剣は、まるで俺をつるし上げるかのようにその猛攻は続く。剣で防ぐだけで手一杯。そしてついに右肩にキールの剣が突き刺さる。針を刺すような痛みが走り、剣を握る力が弱まる。
さらに左肩にも突きが刺さり、そのまま押し込まれ壁へ背からぶつかる。
「がっああああ!」
「そうやって現実から目をそらしてたんだろう。もう楽にしてあげるよ。それが君の贖罪だ」
キールの言葉には何も言い返せなかった。痛む体よりも、胸の内からこみ上げる何かが俺の心臓を締め上げる。
『楽になる』その一言に俺の瞳は揺れた。キールの憎しみに満ちた濁った眼に俺が映し出される。
「それじゃ.....死ね。ダレン・クローヴァン」
キールは肩から剣を抜き、構えを取る。その十字はまるで罪人を裁くかのように。
「ダレン!」
その叫びを聞いた瞬間、俺の視界が開けたような気がした。クラリスは構えを取ったキールを横合いから、切り込んだ。
キールは防御を取ったが、弾き飛ばされ地を転がる。
俺の目の前には、金色に輝く髪色に、慈愛の意志のこもった碧眼で見つめた。
俺は自分の弱さを、その眼でとらえてほしくはなかった。
目を反らし、下を向いた。
「『約束』したじゃん!一緒に見つけるって!まずは今に向き合うことからだよ!ダレンは今どうしたいの!」
「お、俺は....助けたい、皆を、自分を」
「なら、今は戦ってそれが今のあなたにできることだから」
俺はその眼からもう反らすことはなかった。碧眼を見つめ、その眼に映る自分を強く刻んだ。
「いつまで話してんだああ!」
「クラリス!」
横合いからくるアガットに攻め込まれ、クラリスは追いやられる。
「私はいいから!ダレン!あなたしかいない!」
「くっ!ああ!」
俺は地から立ち上がったキールへと強襲する。先ほどとは異なり、振るう剣の先は少し晴れていた。
俺を裁くような剣が迫る。だが俺は正面から受け止める。今までのようには流さず、憧れた剣のようにただ真っ直ぐに。
「また逃げるのか!」
「確かに今までの俺は逃げてきた....!自分から!だがこれからは違う!」
「罪から逃げるな!罰を受けろ!ダレン君!」
「いつか報いは受けるさ.....だがそれは今ではない!」
俺は足腰を固め、全てを振り払うがごとく剣を振り下ろす。過去の自分を切るかのように。
キールは二本の剣で防ぐが、無理矢理に押し込む。
「ああああああ!」
キールの剣を押しのけ、袈裟斬りにした。キールは致命傷を受け、顔を歪める。
しかし、その顔は笑ったままこちらへ向き直る。
「この場は....引こう....けど自分の罪を.....忘れるなよ。ダレン、くん」
そしてキールは剣を壁に振り下ろし、爆発を起こす。
それが晴れた先には、穴の開いた壁のみが残され、彼の姿は再び消えた。
「次は....ちゃんと向き合うぞ」
俺はすでにキールのいない虚空めがけて、そうつぶやいた。
そして、すぐさま後ろへ向き直り、クラリスの元へと駆ける。
クラリスはアガットに防戦一方。攻め込まれ、壁際へと追いやられる。
「クラリス!」
「来たな!半端者ー!」
満身創痍のクラリスに目も暮れず、迫るアガット。力のため込まれた短剣が振るわれる。
そこからは火が放たれ、一直線に俺を襲う。
火。その因果は再び。しかし、俺は迷いを振り払い、闘気を凝縮させ続ける。
「風刃!」
アガットの風の刃も放たれ、火を纏いより強力なものとして襲ってくる。
俺は闘気を全力で込めた剣を思いっきり振るった。
俺の剣戟は火を纏った斬撃を丸ごと消し飛ばし、相殺した。
そして、前に立つアガットを見据える。
「なんだその眼は?やっと自分を見つけたってか。だがお前は結局他人との狭間に揺れた半端者だ」
「そうかもな.....だが見つける決心はついた」
「今更遅いんだ。お前のような弱い奴が騎士への提案を受けるこの国はもういらない。俺は強くなって、この世界で認められるんだ!」
今の俺だからこそわかった。アガットはかつての俺に似ていたんだ。力ばかりがついても、周りから認められたいと願っている。
だからこそ、アガットは俺を嫌う。そんな自分を否定したくて。
「アガット....お前は俺と同じだ。自分と他人の狭間で揺れ、朧げな自分を必死につかもうとしている」
「は?なめたこと言ってんじゃねぇぞ。誰と誰が同じだって」
アガットは額に血管を浮かべ、憤怒の表情を浮かべた。しかし、俺には確信があった。
俺は会話の中で、闘気凝縮を極限まで行っていく。細かく練って練って練る。
「そう、だね。似ているわけない、よね」
するとクラリスの細いながらも、強さを感じさせる声が響く。
「ダレンは自分と戦ってた。苦しんでた。あなたと同じわけがない」
「あ?こんな弱いやつが、騎士にも英雄にもなれるわけがないだろ」
「ダレンは、弱さを知っているからこそ、誰かを守れる。強くなれる」
クラリスの言葉は、俺の胸に熱く染み込む。それが一部となったかのように、じんわりと体へ広がっていく。俺の高めた闘気凝縮で、全てが見えた。
アガットの焦燥に満ちた苛立ち。クラリスの芯の通ったぶれない心。俺の中の、『自己』の形。
広がる根は、クラリスへとつながり、力が流れてくる。
温かく、俺の体に勇気を与える。向けられる信頼は、すでに怖いものではなかった。
「決別の時だ.....アガット」
「やってやるよ。半端者」
それぞれ正面に向き合い、合図もなく同時に駆ける。しかし、俺の全身に流れる力がより加速させる。体は紅く力を纏い、瞳には意志が宿る。
振りぬいた剣をアガットは、剣と短剣でなんとか受け止める。
しかし、俺は止まらない。そのまま押しのけ壁ごと貫通し、空中へと投げ出させる。
「ああああああああ!」
アガットの声が空に、都に響く。
「ああああ!」
俺の声と共に、剣は振りぬかれアガットの両断した。
ーーー別れの時だ
都の空に、赤く輝く閃光が飛び散った。
終盤戦。なんとか書き終えました。
ダレンの自分自身との闘い。やっと掴めた『自己』の形。
これからも続きます




