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救いを貴方へ ~痛みの先に~  作者: 湘南乃炎
一章 仮初

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十話 罪と罰

そして父と共に馬に乗り、街へと向かった。

道中は父に言われるままに怪我の手当を行った。

痛みはあったが、ただ今はそれを噛み締めていたかった。


「怪我は大丈夫か」

「大丈夫....です」

怪我などどうでもよかった。

それよりも激しく動き続ける心臓が痛かった。

この胸の奥からくる何かが。

全力疾走する馬に揺られながらついに街へと到着した。

その先に広がっていた街の姿は、いつもの賑やかさとはほど遠く、業火に燃えていた。


「これは……」


父の声も耳に入らず、俺の目には揺れる炎しか映らなかった。前世のトラウマが蘇り、吐き気を必死に抑えようとするが叶わない。


「ぐうぅ……おええええ……」


――こんなことばかりだ。

これまでも、これからも、俺を縛り続ける。

あと何度自分自身を苦しめれば、本当の俺にたどり着けるのだろうか。

罪を背負いすぎてしまった。


「ダレン! 今は気を強く持て。奴らが先だ!」


父の言う通り、業火の中には俺たちを襲った黒いローブの集団がいた。

俺は胃の中のものをすべて吐き出し、ただ剣を握るしかなかった。

今は無心に剣を振るい、戦うしか俺にはできなかった。

「あああああああああ!」

俺は火の海へと駆け出し、自分を見つめる暇もなく戦い続けた。

________________________________________

敵を倒していく中で、俺は光景に絶句していた。

燃える家、殺され倒れた村人。その中には見知った者の姿もあった。


「今は目を逸らしていい。向き合うのはその後だ」


父の言葉に従うしかなかった。

そして俺たちは師匠と合流すべく、道場のある場所へと向かった。


「あ……お、お前ら……」


道場近くの家で倒れていたのはカイルとミルだった。そしてその傍らには、彼らを庇うように親たちが命を落としていた。

これを見て、キールの生存にも希望はほとんど残されていないと悟った。

あいつらの夢は、炎の中で燃えて散っていってしまった。

その時、剣戟の音が響いてきた。


「行くぞ、ダレン」

「は、はい、父様」


――すまない。守ってやれなくて。夢を追うことすらさせてやれずに。

そのままの姿で残してしまって。

俺にできたのは、心の中で謝ることだけだった。

________________________________________

「なんなんだこいつら!」


そこには師匠の姿があり、黒いローブの男五人を相手に同時に戦っていた。


「加勢するぞ!」

「おお、兄貴にダレン! いいところに来た!」


師匠は敵と距離を取りながら、こちらへと合流してきた。


「ちっ、ノクスとモルスはしくじったか……」


リーダー格と思われるローブの男が吐き捨てるように言う。


「あの使用人を使っても失敗するとはな....」

「使用人とはテドスのことだな....?」


その男の発言に父が問いかけた。父にはあの状況についてはある程度は話してあった。

男は嘲笑うかのような笑みを浮かべた。


「ダムナの犠牲者であったことは同情するがな....あれを作り出したのは我々ペンタグラムだというのも知らずに。哀れなものだ」

「お前ら.....!貴様らが国を滅ぼしたというのか.....?」

「使用人には別の組織による仕業だと言ったがな。まんまと信じたようだ」


父は紛争地の惨状を知っているのもあって、声を荒げ言及した。

しかし男の回答はかなり淡白なものだった。

テドスは俺たちを裏切った。しかし、彼も最初から裏切られていたのか。

全てはこいつらが元凶だったのだ。


「五剣の息子の処理に使えると思ったんだがな」


男は俺の眼を見てそう言った。

その眼は、暗く淀んでいるように見えた。

まるで俺を映しているかのようだった。


「だが兄貴。紛争地になったのは30年以上前の話だぞ....?そんな前から組織が動くのか?」

「陛下から聞いていたんだ.....ペンタグラムは首領は変わっていないが、幹部は代替わりしていると」


師匠の問いに父が答えた。

俺が八歳ごろから、状況がきな臭いとは言っていたが、そんな前から動きがあったことは予想していなかった。


「さすがにこれでは分が悪いか.....退散するぞ」

「させるか、てめぇら!」

「もう遅い。転送石、起動」


そう言った瞬間、ローブの男たちは光に包まれた。


「また会おう。次は殺す」


そう言い残しその場から消えていった。


「なんじゃありゃ……瞬間移動できる遺物か。相当な代物だぜ、あれは」

「それよりアルケ、状況はどうなっている」

「兄貴たちも見ただろう。あの有様だ。夜襲を仕掛けられ、村はほぼ全滅だ」


父は敵を追うことはこの場では諦め、現状の把握に努めようとした。

しかし、師匠の回答は決して良い知らせではなかった。

俺自身もここに来るまで見てきた。だがそれを現実として受け止めることはできなかった。


「俺は騎士団へ救援要請を出した。遺物を使ってな。来るまでに生存者を確認する」

「おうよ。それよりダレン、大丈夫か? 顔色が悪いどころじゃねぇ。死人みてぇだぞ」

「はは……そうかもしれないな」


その後、俺たちは街を回り、生存者を探した。だが見つかったのはわずか七名。

街のほとんどの者は、すでに息絶えていた。


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